伸太朗と幼馴染ちゃん
「姉貴、帰ってきてたのか」
伸太朗が低い音を響かせて声をかけてきたので、私は2人から手を放して彼らに振り向いた。
「ちょうど帰るところだったの、タイミングよかったね」
「…相変わらずのメスゴリラめ」
にこりと笑って見せると、いつもの無表情で毒を吐いてくる。
うん、伸太朗はこういう子だ。今回は久々だから見逃そう。
女の子の方を見ると、ぺこりと頭を下げてきた。
「助けていただいて、ありがとうございました」
「いえいえ、彼らは知り合い?」
「はい…たまに絡まれることがあって…」
可愛らしい声で女の子は言う。
伸太朗を見て言葉をつづけた。
「でも、いつも伸太朗くんが助けてくれるんです」
「…別に、幼馴染だからな」
「もしかして…優希ちゃん?」
「はい!お久しぶりです、菜子さん」
わ、すごく久しぶりだ。
最後に会ったのは私が高校生の頃だから、10年前?
すごく可愛らしい大人になっている!
「随分可愛くなったから、気づかなかったよ」
「そ、そんな…ありがとうございます」
優希ちゃんは隣の家に住んでいる伸太朗の幼馴染だ。
同じ制服だから同じ学校に通っているんだろう、今も2人が仲良しでよかった。
「…腹減った」
「ああ、もうこんな時間だったんだ」
「今日は優希も夜ご飯食べていくから、早く行こう」
先にすたすたと歩いていく伸太朗。
それを追いながら、私と優希ちゃんは思い出話に盛り上がった。
――――――――――――
「おかえりー!菜子!
あら、伸太朗と優希ちゃんと一緒だったのね!」
「ただいま、お母さん」
一軒家平屋建ての実家は何も変わっていなかった。
しいて言うなら、入口の雑草が随分生い茂っているくらいかな。
お母さんに促されるまま、私たちは家に入っていった。
「菜子、おかえり」
「菜子ちゃん、おかえりなさい~」
居間に入るとお父さんとお祖母ちゃんがくつろいでいた。
家に帰ってきたことを実感して、私は上機嫌になる。
優希ちゃんとあいさつしているのを尻目に、私は台所を覗いた。
「お、今日はカレーなんだ」
「そうよ~吉川家特製カレーよ!あなた好きでしょ」
「うん、好き。早く食べよう」
「その前にバッグを置いて手洗いうがいよ~」
わかった、と言って優希ちゃんを呼び洗面所に行く。
先に手洗いしていた伸太朗にくっついて妨害し、一緒に洗う。
「来んな、姉貴!」
「いいでしょ」
「よくない」
邪魔そうな伸太朗の顔に優希ちゃんが笑い、結局3人でわちゃわちゃしながら食事の準備を済ませた。
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