第6話 「雷鳴」邂逅
『縁視』仲間の知らせ
「新しい『
ある日の朝。
今関係長に呼ばれた私は、係長室にいた。
思わぬ言葉に、私はオウム返ししてしまった。
「そうらしいわ」
席を立って私の目の前に来ると、今関さんは手を後ろに回してにこにことこちらを見た。
「仮名係長が菜子ちゃんを呼んでいるの。詳しくは直接聞いてみてくれるかしら?」
「はい、わかりましたが…わざわざ同じ力の私を呼ぶんですね」
縁視は視える度合いに大きな差はあるものの、日本に数人しかいないような希少な能力ではない。
新しい能力者を見つけたところで、なんで私が呼ばれるんだろう。
「うーん、ちょっと頼みたいことがあるみたいよ。
今日はそのまま1日そっちの任務に入っていいから、よろしくね」
「はっ」
短く返事をして、私はそのまま執務室を出た。
―――――――――――――
特殊情報管理室。
特殊治安局の1組織で、符術や特殊能力の研究、治療を主にする研究機関。
私も特殊能力者の1人なので、具合が悪い時やけがの際はここにくる。
支援一課の課長、仮名さんはもともと特殊情報管理室の研究員だったこともあり、彼の執務室はここにあった。
扉をこんこん、と叩くと、「どうぞ~」と明るい声がする。
さっさと扉を開けて私は中に入った。
ビーカーの中に色とりどりの液体がひしめいている。
この研究室らしい研究室が、仮名係長の執務室だった。
一番奥から手のひらがひらひらと振っているのが長細いビーカーの間から見える。
近づくと、こっちよ~と仮名さんが手招きしていた。
「今関ちゃんに聞いたのね、いらっしゃ~い」
「失礼いたします」
軍服の上着を脱ぎ、白い白衣を身にまとう仮名さんに、そのまま着席を促される。
私たちは紙や本がたくさん重ねられたデスクを挟んで対峙する形になった。
「にしても、珍しい客人よね~あんまり来ないでしょ、特殊情報管理室は」
「そうですね、あまりケガや病気になることもありませんから」
「…ま、そうよね。菜子ちゃんは小柄な割に頑丈だし」
雑談をしながら、仮名さんはタブレットを使ってモニターにデータを映す準備をしている。
やがて映し出されたのは、そばかすが印象的な少年だった。
「今日はね、新しい『縁視』の状況調査と報告をお願いしたいの」
「この子が『縁視』の…」
写真は何かの集合写真の一部みたいだ。
楽しそうに満面の笑みを浮かべる、ごくごく普通の少年。
仮名さんがタブレットを触ると、詳細な情報が表示された。
「『
探すの大変だったわ~」
「へえ、見つかってよかったですね」
「まあね~でも困ったところで見つかっちゃったのよ」
大げさに首を振って、私の目をじっと見てくる。
わたしよりずっと体の大きい仮名さんと見つめあうと座っているのに若干首が疲れる。
「『
その言葉は、私に声がかかった理由をありありと示すものだった。
『雷鳴』—――なるほど、私に悪名高い不良グループへ単騎で行けと、そういうことね。
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