ミニ事件管理簿

「まずは、周知事項からよお~」



見た目に反する甲高い大声で場の空気を締めると、タブレットを操作しモニターに資料を映した。

変わらずポップな可愛い装飾だなあ。

ハートの絵文字が動いている、どうやったらできるんだろう。




「…さて、じゃあ次は各係から近況の報告をお願いできるかしら?

 鴨ちゃんから、よろしくね★」

「……はい」



おお、すごく嫌そうだ。

顔には出てないけど、間でそう訴えた鴨川さんはメガネの位置を整えて口を開いた。


1係は王族が住む特区を中心に担当する精鋭部隊。

符術に関わる王族や高い地位にある家の身辺警護から、住居の警備、王族への教育や指導まで幅広い仕事をする。



「1係は先日終了したゆう様の地方公務の準備、警備が主なトピックとなります。公務は問題なく終了し、次の訪問先の選定、準備が進められています。


その他のトピックとしては、王族特区の敷地内で『河童』が大量発生しており、1係の半数は対応に追われている状況です」


「河童あ?」



?を飛ばして仮名課長は口を開いた。

途中まですごくまじめだったのに、あの鴨川係長から『河童』発言はなかなかシュールな感じだな。

…今関係長の背中がちょっと震えた気がした。



「はい、誰かが大量にきゅうりを与えているようです」



きゅうり!



「…なんだか、しょっぱなからかわいい話題ね…。

 はやくきゅうり犯捕まえなさいよ~

 ハトにエサあげて大量発生させて、フン被害が増加しちゃいましたみたいなレベルよ」



エリート集団の1係でも、大変なんだなあ…うん。

さっそく灯ちゃんたちに話すネタができて、個人的にはすでに十分な収穫を感じた。




――――――――――



2係は23区を担当し、女性の高ヶ埼係長が率いている部隊。

ちなみに今関さんと歳が一緒なのもあって、時々話すことがあるらしい。



「2係は杉並区で浮浪集団同士の抗争が発生し、沈静化に向け対応中です」



浮浪集団というと、特殊治安局の管理を拒んだ符術者や特殊能力者の集団のことだ。

区内ではよく彼らの小競り合いが起きる印象がある。



「おおむね鎮圧しましたがまだ燻っております」

「また起きたのね、大変だわ…で、今回の原因は?」

「痴情のもつれです」

「な!?」



更に甲高い声をあげて驚く仮名係長。

少しだけ切れ長の目を開いた高ヶ埼係長は、すぐに表情を切り替えた。



「もしかして、またあの『白鷺女』が男をかどわかしたんじゃないでしょうね!?」

「課長のお言葉通りです」

「ムキーーーッ!あの女!!ふざっけんじゃないわよ!」



次遭った時は容赦しないんだから!と鼻息がとても荒い。

前に課長と何かあったのかな…『白鷺女』は人を魅了する特殊能力者だったはずだけど。

どのみち面倒くさい匂いしかしないな、7係に依頼が来ないことを祈りたい。



「というより!?あんな女に引っかかる男も男よ!ほんっとバカね」

「………ごもっともです」



高ヶ埼係長はものすごく小さい声で言った。



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