第5話 定期報告MTG

ミーティングの朝

「はあ」



毎月の指定されたとある日の朝。

今関係長は短くため息をついた。


大体理由はわかる。

ちらっと顔を向けてみると、やっぱりやる気のない表情をしていた。



「資料の準備は整っています。あと10分ほどで始まりますから、そろそろ向かいましょうか」

「うーん、そうね」



髪を一房耳にかけると、重い腰を上げる今関係長。

行こうか、と声をかけられたので私は返事をして立ち上がった。


今日は全ての係が参加する定期報告ミーティングがある。

大体係長と部下の2名で参加するのだけれど、今回のお供は私になった。


昨日の「あそこに線引いといてよかったわー」という灯ちゃんの発言を聞くに、あみだくじで決まったみたい。

前は青髭危機一髪だったっけ。

一巡目から当てたカケルくんに一種の才能を感じたのを思い出しながら、私は今関さんと廊下を歩いた。



―――――――――――――



別棟の大会議室に入ると、円形の机は既に半分が埋まっていた。

係長は机に沿って座り、同席者は後ろの机付き椅子に座るのが通例。

7係は上座なので、すぐに座席に到着した。



「お疲れ様です」



今関さんの言葉に返事は返ってこない。

何人かが少しだけ会釈しただけだった。

いつものことなので、私たちはスルーする。


席に座ると、私は黙々と資料の最終準備を進めた。

ええと、資料を映せるようにここのネットワークに接続しといてっと…。



「今関係長、準備完了しました」



タブレットを渡すと、にこっと笑って今関さんが受け取り、資料を眺め始めた。

再度背後の席に座ると、ふと視線を感じて周りを見渡す。

丁度対角線上にいる男性と目が会った。


軽い外はねの髪と同じ色の青メガネの奥から、鋭い視線を寄越している。

係長職の最年少かつ優秀と噂される1係 係長、鴨川さんだ。

何事もクールにこなす彼は、女性に好かれそうな整った顔をしていて、仕事ぶりから部下の信頼も厚いらしい。

もともと役目上優秀な人材を揃えている1係は一課のエース部隊、7係との絡みは少ないから噂程度でしか知らない。


にしてもなんで私を見てたんだろうか、あー……、参加するの久々だからかな。

とりあえず目線を外そう。


ああいう目立つ人とはあんまり関わりたくないし、関わっていいこともない。



少しして全員が揃うと、2人の上長が部屋に入ってきた。

ガタイの良く派手な金髪とムチムチな軍服を纏う男――仮名 慎吾 課長。

そして、対照的に小学生並みの小さな体にちょっと大きめな軍服を纏う女性

――――花王院かおういん はる 局長だ。


花王院局長、久々に見たけど変わらず小さいなあ。私より小さい。

この小ささは符術の力が強すぎる人間によくあることで、成長が早期に止まってしまった結果らしい。

花王院という大きな家の当主ともなれば、規格外の力があるんだろう。

あの身なりだけれど、もう40年近くは局長をやっている。


そして、我らが支援一課の課長 仮名さん。

火の符術において右に出る者はいないといわれるパワー系符術者。

医師免許をもっており幅広い知識と経験を持つ頼りがいのある方だ。



「さあああて、はっじめるわよー!」



初回のインパクトが重々強い方でもある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る