カエル事件勃発

『恒例! 特殊治安局主催 夏祭り!!』


毎年開催している夏祭りのチラシだ。

ゆうちゃんに見せると、少しだけ興味を持ったようで、ちらちらと見ている。



「今年も夏祭りをやるんです。人が多いので苦手かもしれませんが…精霊を連れてきても問題ないのでお勧めです」

「なつ…まつり…」

「ほお、人間が集まって騒ぐイベントなるものですか」



倉之助と乃乃介もゆうちゃんの両脇まで来て同じ紙を見ている。



「普通の夏祭りは一般の人間がほとんどですから、特殊な力を持つ人間たちが参加するのは難しいです。なので、特殊治安局ではどんな人たちでも参加できるよう、季節の行事を開催しているんです」



もし不安でしたら私も同行しますので、いかがですか?と聞いてみる。

ゆうちゃんはじっとチラシを見つめ――――ふいっと顔を逸らしてしまった。



「ゆう様には、人が大勢集まるような場所など、心身ともにお疲れになるに決まっております」



首を振って全否定する倉之助。

そうだな、と当たり前のように乃乃介も肯定した。

ま、そうだよね…。

人と関わる暮らしすらしたことがない子供だし。

今こうして私という人間と話すことすら新鮮、かつ緊張するんだろう。



「ええ、無理にとは言いませんので問題ありませんよ。

 秋は餅つき、冬は雪合戦大会がありますので、またチラシを持ってきますね」



ゆうちゃんは再度小さく頷いてくれた。



それから少し雑談をし…といってもゆうちゃんとは直接話してはいないけど、こちらで持ってきた話題ネタが尽きてしまった。

今日はここまでかな…。


またいろいろネタを持って来よう。

そうして私に慣れ、人間に慣れていければそれでいい。

私はおいとましようとバッグの口を閉じようとした




―――その瞬間、緑色の何かが顔面に飛んできた。


べちっ



「…」

「…」

「…」

「…」



誰もが沈黙し気まずすぎる空気が流れる…。

なんだろうこれ…害はないみたいだけど…なんかもふもふしているような…さっきも感じたような…。

手で顔面を触って引き離してみると、それは阿木あきさんにいただいたカエルのぬいぐるみだった。


ぺっちんぺっちん


ぬいぐるみとは思えない剛力で私の手を逃れたカエルは、机に立ち長い手足で謎のダンスを踊りだす。

初めて見るその光景に、ゆうちゃんどころか乃乃介、倉之助たちもぽかんとしていた。

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