同僚と係長

7係の執務室は、わかりやすいことに7階の端っこにある。

各メンバーの席がまとまって置かれ、ソファがあるくつろぎエリアがある大部屋と、奥に係長の部屋があるシンプルな構成になっている。


サビが効いてきた扉をあけると、中には人はいなかった。



「始業5分前なのに誰もいない?」



壁の行動管理表を眺めたら納得がいった。

みんな今日は現場直行みたいだ。

扉横の大きなスクリーンを触り、全員の今日のスケジュールが大きく映るように変える。



「いやー、人はいるみてーだわ」



先に奥へ移動した灯さんが一転を見つめて呆れた声を出す。


何かと思って近づいてみると…。



「今関さん…」



簡易の係長席でぐったりしている人が1名。

7係のトップ、今関こんせきさんその人だった。



「またオールワークしてんじゃん、ウケる!

 この前肌年齢が実年齢より+20だったってテンサゲだったヤツとは思えねー」

「ほんとだ、髪ぼっさぼさ…」



せっかくの明るくて綺麗な髪がもったいない。

私たちの会話の声が聞こえたようで、係長はもぞもぞを動いた。



「ん…?朝…?」

「そうですよ、朝です。」

「…朝…」



机に突っ伏していたからだろう、顔のいたるところを赤く跡が残っている。

今関さんはゆったりとした動作で近くに置いてあった黒縁メガネをかけた。



ぎゅるるるる…



「…」

「…」

「………そういえば、昨日から食べてないわ」



はああ…と盛大なため息が隣から聞こえた。

居心地悪そうな係長。

先週も全く同じ景色を見た気がする。



「菜子っちはメールチェックおねがーい、あたしは今関こせっちのエサ作っちゃうんでー」

「え、エサ…」

「はーい。今関さんは顔洗ってきてください」

「はい…」



のろのろとふらつきながら係長の部屋へ入っていくのを見送って、私は自席に座った。

三つ折りのキーボードを広げて、プロジェクターをオンにする。

空中に現れた画面を動かしてメールチェックを始めた。



これもいつもの日常の1つ

7係独特のなんともしまらない週初めだった。

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