出勤の朝

『特殊治安局』は国防省の防衛庁に属する、「符術」関連の事件や治安維持活動を中心とした組織。

全国それぞれの地域ごとに課が分かれていて、私は東京・横浜エリアの「支援一課」に所属している。



寮から徒歩10分の執務室へ向かいながら、私は道中で買ったコーヒーを啜った。

月曜日ってなんでこんなに体が重いのか…。

なんて思っていたら、同じことが頭をよぎっているだろう同僚の顔を見つけた。



「灯さん、おはようございます。」

「あ?」



ショッキングピンクの長髪を高い位置でひとまとめしている彼女は、なかなかにドスの聞いた返答をして私を視界に入れる。

その途端、ああ、なんだ、と小さくつぶやいて眉間の皺を緩めた。



「菜子っちじゃん、はよ。」



彼女は灯(あかり)ちゃん。

年下だが勤務歴は長いので先輩にあたる。

お堅い政府の一組織にしては派手な格好のため、どこにいてもわかる長身の女性だ。

今日もピンクのチェーンがじゃらじゃらと存在を主張している。



「今週もはじまっちゃいましたね」

「それなー、まじかったるいわ。あ、アイスコーヒー?ちょうだい」



私はコーヒーを左手に持ち帰ると、灯さんは遠慮なくそのまま飲んだ。

隣を歩いていた中年の局員がしかめっ面しているのは見なかったことにする。



「さんきゅー、生き返ったたわあ」

「いえいえ」



そうやって他愛もない話をしていると、7係の執務室に着いた。



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