鏡面-episode-

それは、段ボール箱に入っていました。

暗く湿った小屋の中で、保管されておりました。


どこかの愚者が言いました。

「あの小屋を物色しよう」と

誰も賛同なんてしませんでした、それでも愚者は行くのです。

愚者が物色していると、一つの段ボール箱がありました。

愚者はそれを投げ捨てました。

段ボール箱の中からガシャンと音が鳴りました。


保管された鏡は割れてしまいました。

数多の命を溶かした水銀の封が解かれてしまいました。


愚者は突然怒り狂いました。

愚者は小屋の中にあるバットのようなもので、段ボール箱を何度も殴りました。

段ボール箱は原形とどめぬ姿で壊れてしまいました。

愚者は突然溶けてしまいました。

愚者はそこにはもういない、どこに溶けてしまったのでしょう。


怒り狂った愚者は、水銀によって溶かされてしまったのです。

水銀は封をされることなく流れていくのです。

数多の命を奪いながら。

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