城~魔王を倒すまで

 オーランド城の展開

 まずカーライルたちを出迎えるのは別世界より召喚されてきたデーモンたち。

 レッサーデーモン、グレーターデーモンやその他亜竜や、名のある騎士の死体から作られたと思われるデスナイトなどと言った強力な魔物。

 そして城の二階へ赴くには鍵が必要だが、鍵は昔の知識が正しければ地下一階にいた城の管理人が持っていたはず。

 そのために城の地下へ赴くが、そこもまた様相が変わっていた。

 おもに地下は食糧庫や宝物庫のはずであったが、牢獄に代わっており、すでに死体が山積みになっている。

 城の管理人はもう死体になっているかもしれない、そんな諦めの中にいると、壁の向こう側から声が聞こえる。

 壁は仕掛け扉になっており、押すとぐるりと回って向こう側に行ける仕組みになっていた。カーライル達は管理人が生き延びていた事に安堵し、鍵をもらって二階へ行こうとする。しかしこの時、隠し扉の仕組みに気づいた魔物たちが押し寄せ、戦いの最中に管理人が命を落とす。

 鍵を抱き、二階に向かうパーティ。


 二階。

 かつての王国近衛兵部隊が変わり果てた姿となって襲い掛かる。

 中でも皇帝の直属部隊であるエンペラーガードはカーライルたちとひけをとらない力でもって戦いを挑んでくる。いくらカーライルたちが伝説の勇者PTとはいえ、苦戦を強いられた。

 王国兵たちの攻撃を潜り抜け、ついに玉座までたどりつくが、そこに居たのはニグルヴェイグではなくシオンだった。シオンはすでに傀儡となっていた王を自ら倒していたが、同時にニグルヴェイグに操られていた。神の加護と勇者の武具を持たないばかりに。

 シオンは元々魔力が強かったが、ニグルヴェイグによってさらにその力を引き出され、光の魔法であるフラッシュボムやライトニードル、ライトニングボルト、雷の槍やさらには究極魔法とまで言われる「イアレマズダ(元ネタ:アラマズド、アルメニアの光と太陽と豊穣の神)」まで使いこなしている。

 シオンの眼を覚まさせる方法はないのか、と探る。

 カーライルがいつも持っていた、首に提げているペンダント。

 ここには宝石が入っており、緋色の名もなき宝玉があった。これには自分の魔力のほかに、シオンと妻のルディアの魔力も込めていた。

 ある程度シオンを弱らせた後、ペンダントを握りこんでその拳でもってシオンを思い切り殴りつける(ジョジョの格ゲーのジョセフの超必殺みたいなイメージ)と、宝玉が壊れて魔力が放出され、シオンの体を貫いた。

 その瞬間、操っていた何者かの魔力が吹き飛び、シオンは正気を取り戻す。(なおこの宝玉の力のみならず、瞬間正気にもどったシオンの魔力やカーライルの魔力も併せたことによって精神支配から解き放たれた)

 シオンはようやく、カーライルの事を父と認める。

 その後玉座が焼け、背後にどこかに通じるクリスタルが現れた。


 カーライルはクリスタルに触れ、その者が待つ次元世界へと赴く。

 ニグルヴェイグは果たして、女性のような姿をして背中に翼をはやしていた。

 カーライルは今までの事を思い出していた。

 村を滅ぼされた恨み。そして祖国を存亡の危機に陥らせている元凶。息子までも操られ、危うく命を落とす所だった。

 ニグルヴェイグは微笑みを崩さずに仲間にならないかとカーライルを誘う。

 もちろん断るカーライル。

 

 ニグルヴェイグは言葉を聞いて、「やはりそうだろうな。だからお前を力で従わせることにしよう」と言って姿を変化。それは竜と人間の狭間のような、いわば竜人みたいな姿に変貌した。白く光り輝く、闇の竜。

 カーライルとニグルヴェイグの死闘。

 それは激しく続いたが、神の加護を得てもなおニグルヴェイグは神に等しい力を持っていた。やはり肉体を持たない体では、本来の力は出ていなかった。

 追いつめられ、一度は倒されるカーライル。

 意識が再び闇に沈もうとしている。

 その時、再び救いの手を差し伸べたのは堕天した神、悪魔のアズラゼル。

 もう一度復讐の機会を与えようじゃないかという悪魔の囁き。

 身をゆだねようとするカーライルだが、しかしシオンの声が聞こえ、意識を闇から元の世界に引き上げる。

 目を覚ますとシオンがニグルヴェイグの次元世界に来てしまった。

 シオンがニグルヴェイグに斬りかかり、顔に斬撃を加える。

 激昂したニグルヴェイグがシオンを右手で振り払い、吹き飛ぶシオン。

 その瞬間を見たカーライル。怒りが頂点に達し、無我夢中で剣をニグルヴェイグの胴体に投げつけた。

 剣は真っすぐに飛び、ニグルヴェイグはシオンに意識を集中していたために剣の存在に気づかずに胴体を貫かれる。

 聖剣サジタリアスの毒はただの毒ではない。一般的には毒と称されるが神殺しの呪いともいわれ、特に悪魔や神族に対して力を発揮する。人間や普通の魔物に対しては毒を消す魔法やら毒消しでも消えるとも言われるが。

 サジタリアスは蠍の化身とも言われ、神の側近であったとも言われている。

 しかしてその実態は諍いを起こした神を殺すための暗殺者だった。

 鍛冶の神が作ったそれは、神代の時代に振るわれすぎた為に天から落とされた。

 そして人々はその歴史を知らぬまま、神秘的な文様が刻まれた聖剣として勇者にゆだねられ、幾度となく使われたのである。

 だがそれでもニグルヴェイグはまだ生きていた。

 先ほどの投擲で力を使い果たしたカーライルは、後をシオンに託す。

 シオンは吹き飛ばされはしたもののかろうじて生きており、カーライルから受け継いだ魔力を剣に込め、斬撃を繰り出した。

 ニグルヴェイグは首を落とされ、その切り口からは光の粒子のようなものが噴き出し、悪魔は消え去った。同時にニグルヴェイグの次元空間から王城二階の王の間に戻る。

 同時に、クリスタルのあった場所に魔法陣が出現する。

 ニグルヴェイグが消えた際のエネルギーの放出は凄まじく、なおかつ今までニグルヴェイグが王都で起こした惨殺によって生まれた負のエネルギーの蓄積、憎悪、怨念が渦巻き、ついにアズラゼルが現世にその思念体を出現させることに成功した。

 

 

 アズラゼル復活。

 対してこの場に居るのは満身創痍の二人。

 しかもカーライルは魔力をほぼ失い、もはや抜け殻に過ぎない。

 それでもカーライルはサジタリアスを手に持って立ち上がる。

 その時、過去のPTを組んでいた仲間たち(魔導士以外)がやってきた。

 引退した身とはいえ、かつての力はまだ衰えていない。

 カーライルとシオンの損傷した体を治癒の魔法で治し、妖精樹の果実によっていくらかは魔力も回復した。しかし譲り渡した光の魔力だけは復活しなかった。それに呼応してか、サジタリアスの輝きは失われていた。

 カーライルはサジタリアスをシオンに渡す。

 シオンの魔力に呼応してサジタリアスは輝きを取り戻す。

「お前が魔王を倒すんだ」

 シオンは無言でうなずく。

 アズラゼルとかつての勇者PTとの壮絶な戦いが始まった。

 とはいえ、攻撃はフィールドに阻まれて殆ど通じていない。フィールドを通すための何かが必要だ。フィールドは胸にあるコアから生じているらしい。

 戦士が特攻して攻撃をしのぎ、僧侶がアズラゼルの懐に入る。

 僧侶は自爆魔法を唱え、一瞬フィールドに歪みが生じる。そのスキにアサシンがコアにダガーを突き刺す。(勿論これもただの武具ではなく、失われた神の遺跡から得たものである。見た目は何の変哲もないただの短剣に過ぎないが、狂気に近い執念を持った鍛冶屋が神の遺物の金槌と金床を得て打った代物だと言われている)

 コアに突き刺し、さらに戦士が鈍器でそれを押し込む。

 ヒビが入ったコアは完全に割れ、フィールドは消えた。アサシンと戦士の捨て身の特攻により成されたフィールドの消失。

 アズラゼルは戦士とアサシンとを吹き飛ばし、なおも立ちふさがる。

 カーライルが渾身の力を込めてアズラゼルの両腕を切り飛ばす。

 最後に、シオンに向けて叫ぶ。

「倒せ!」

 シオンは光の魔力をありったけ剣に込め、一撃、二撃と虚空を斬る。

 斬撃は空間をゆがませ、光の刃がアズラゼルの胴に食い込む。

 一瞬耐えたかに見えるアズラゼルだったが、光の刃は背中にまで達し、アズラゼルは苦悶の表情を浮かべながら光の柱を立てて消え去った。

 すべての元凶を倒した。魔王もひとまずは退けた。

 シオン達は安堵し、喜びを表す。

 しかしこの場にカーライルは既にいなかった。

 カーライルは村の跡地に戻り、かつて家のあった場所に倒れていた。

 復讐を果たし、魔王まで倒し、息子も生きていた。もはや思い残す事など何もない。

 カーライルの体は土に還り、魂は天に帰る。


 カーライルのその時の表情は、さっぱりとして明るいものだった。

 だがそれを知る者は地上には誰もいない。

 

 のちにカーライルの墓が作られた。

 そこには多くの花が手向けられ、一振りの剣が突き刺さっている。

 かつて聖剣と言われたサジタリアスは、今は輝きを失っている。

 だがもしまた魔王の気配が生じる時、それは輝きを取り戻すだろう。

 今はただ、眠りについている……。


 骨の勇者は復讐す、終わり。


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