暑い日のこと。

@asuno87378

第1話

「ねぇ、上見て見て」

涼し気な髪を風になびかせてる君が、

僕にいった。

「今更みたってなんにも変わらないよ。いつもどうりの青空だろ。それに僕は今、ゲームで忙しいので。」

この蒸し暑い夏に何を言い出すかと思ったら空を見てみろとか、ついに頭まで、暑さに侵されたのか。

「本当に見なくてもいいの?ねぇ、見なきゃ損だよ。」

「見ないでも損はしないさ。」

「へぇ、見ないんだ。どうなっても知らないよ〜。」

彼女にしては珍しいしつこさだった。

「わぁかったよ。見ればいいんだろ。」

そう言って見上げた空には、いつもどうりの青空がひろがっていた。

「何をそん何見せたかったの。」

彼女の方を向いて言った。

「わかんない。ふふふ。」

「はぁ?」

やっぱり暑さで、頭を煮やしたようだ。

「でもさ、でもさ、君と過ごすのもあと少しなんだなぁって、思って」

何を急に言ってるんだ。

「べつに、高校卒業したあと死別する訳でもないのに何言ってんの。」

一瞬の沈黙が、僕らの間をながれた。

「でもさ分かんないよ。私があと2年で死ぬかもしれない。明日君が死ぬかもしれない」

そう言って静かに笑う彼女は、今にもこの暑い空気に溶けてなくなりそうなほど、僕の脳裏に焼き付けるには容易い程に綺麗で見惚れるものだった。

「?。どうしたの?」

「あ、ご、ごめん無意識だった。」

自分でもびっくりした。彼女が消えてなくなりそうな気がして、おもわずてをにぎってしまっていたのだ。ついに、僕までが暑さに頭をやられてしまったみたいだ。

「もうそろそろ、教室に戻ろうよ。暑すぎてアイスも溶けちゃったし。」

「う、うん。そうだね。やっぱり屋上は暑つすぎるか。」

彼女が、屋上のドアを開けてその後に僕が建物に入る。彼女は気が利くほうだと改めておもう。

「ありがとう」

「いいえいいえ。」

僕らの足音が静かな階段に響き渡っていた。

「ねぇ、君はいなくなるの?」

思わず聞いてしまう。

「何言ってるの急に。」

「いいから答えて。」

彼女は小さく笑った。

「私さ、この前久しぶりにあいつにあったの。そしたらさ、なんて言ったと思う?」

あいつとは、彼女の母親のことだ。

「久しぶりとかかな?」

「うーん。それも言ったんだけどさ。

あいつ私を見た瞬間にいったの。昔の私に似てるって。声も顔も態度も全部。」

彼女は、酷く哀しそうな声で言う。

「私はさ、親に愛されなかったしさ、愛されようともしなかった。あいつは他人でなんにも関係ない人だって。そう思ってた。だからさ、あいつが人を傷つけて刑務所に入ってもなんにも思わなかったんだよ。でもさ...」

震えた握り拳を隠すように手を後ろへやり

僕の目を見たまま笑って続けた。

「私はあいつの血が流れてるんだ。それが初めてわかったよ。あいつのことばで。」

「っ...。それでも、君は君だよ。」

必死に言葉を探して言う。僕はこんな時に優しい言葉をかけれるほど人間はできていない。

「多分私も将来的にはあいつみたいになるんだなぁって思って。そうなったら、今の私は死ぬのかな。」

「死なないし、ならない。僕が保証する。」

その言葉に嘘はなかった。彼女とは昔から色々と世話をやいたり、やかれたりを繰り返す仲の所謂幼なじみの僕が自信を持っていった。

「なーに。保証って。」

そう言って彼女は笑う。

「君のことを一番近くで見てきて、君を誰よりも想っている、僕の長年の信頼と実績が」

言ってから気づいた僕の遠回しの告白に、気づくほど彼女は鋭くない...はずなのに。

なのに彼女は、目を丸くして顔を夕日のように赤らめ僕を見ていた。

え、まさか、気づいたの?え、え、えっ。

「私さ馬鹿だから。今のは気付かないふりを、しておくよ。」

いつの間にか彼女は鋭くなったようだ。

「た、助かるよ。」

彼女はにやにやしながら、僕の所まで2弾飛ばしで階段を上がってくる。

そして僕の横に来て静かに言った。

「私は、愛を知らない。でも君が教えてくれるんでしょ。」

「当たり前だよ。君がいらないって言うほど僕の愛をあげるよ。」

われながら、寒いセリフに恥ずかしくなる。

「うん。楽しみにしてる。それなら、私の

一生を君にプレゼントとしてあげるよ。」

僕の心臓を人差し指で指しながら彼女は言った。

酷くこえがふるえていて。彼女の目からは、大粒の涙が流れ出した。

「ありがとう」

そういうと、彼女は声を上げて泣きだした。




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