第130話【平穏?】
「間宮くん、おはよ!」
「あ、あぁ、おはよ。」
「な、なにかな? わ、私の顔に何かついてるかな?」
「い、いや、そんなことは。」
よ、良かった。
いつもの山本。
どこからどう見ても皆と同じ普通の制服姿の山本だ......。
本当に昨日の俺は何であんな夢を.......。
本当に......
「間宮くん、おはよ!」
「あ、あぁ、おはよ。」
そして田中くんか.......。
君は君でまぁ、ある意味では通常運転だな。
最近なにか心境の変化があったのか、彼はずっと髪をベタベタにワックスで立ちに立たせている。
もはやスーパーサイヤ人の如く髪を.......。
ちょっと、というか普通にやりすぎな気が.....。
「ん、なんだい? 僕の顔に何かついてたりする?」
「いや、そんなことは........。」
周りもそのことについては逆に触れてはいけないと思っているのか、誰も何も言わない。
如何にも陰口を言ってきそうな榊たちも完全にだんまりだ。
まぁ、それは頼本がいつも田中くんの傍にいるのもでかいのかもしれないけど.......。
うん。いまだによくわからないけど、本当にずっと彼らは一緒にいる......
とりあえず、人に迷惑をかけているわけでもないしな。俺もだんまりだ。
「........。」
いや.......確かこの前に、混んでいる電車の中で隣でつり革をもっている女の子の手にあのトゲトゲの髪が当たって「痛っ」ってなってたな........。
そんでめっちゃ睨まれてた記憶がある.....。うん。ある。
ある種の人間凶器......。
やっぱり黙まりは駄目なのか。これ。
「ところで間宮くん。僕はね。今度youtuberとしての活動を再開しようとしているんだ。ぜひ君にも出て欲しいんだけど。どうだい?」
youtube.......。また君は唐突に.....。
しかも再開って、過去に活動していたのか........。
「まぁ、今は色々と頼本と動いている途中なんだ。また具体的に出てもらうことが決まったら改めてお願いすることにするよ。その時は頼むね。」
「........。」
そして何だその笑顔。
まだ俺は何も言ってないぞ。おい......。
てか正直嫌だぞ.....。
でも、じゃあその髪型はその為に.......?
いや違うか。見た感じ違うな.....。
じゃあ何で......。
「山本さんとアリスちゃんも。もしよろしければお願いします。ちょっと。ほんのちょっとだけでいいので。謝礼もちゃんとします。」
って、彼女達にまで。
すごいな田中君。
「え? ゆ、youtube? ちょ、ちょっと恥ずかしいかな.....。」
「ゆーちゅぶですか? たしか、おともだちのリンリンちゃんもさいきんハジめたんでス。え!たなかくんもはじめるんですか?」
え? リンリンがyoutuber?
知らないぞ。え? 本当に?
俺は急いでスマホを取り出して検索。
う、うお.....マジだ。
この顔は間違いなくリンリン......。
し、しかも何だこのch登録者数。多すぎるだろ。
え、すげぇ.......。動画の再生回数も完全にもう人気youtuberのそれ。
うん。ちょっとこれは家に帰ってからじっくり見よう。
いくら美人とはいえ、素人が一体どんなことをしたらこんなに。
これは本当にすごいぞ......。
「ちょっと!間宮健人!」
って......こ、この声は。
「.........。」
「昨日のアレは何よ!なんであの娘にだけ!」
やっぱり.......。
「今日こそ特訓よ!もう邪魔は入らせないわ!」
そう。今教室に入ってきた大きな声の女性は渋谷アリサ。
そして俺は彼女の顔が目に入るやいなや、あいつの顔が一瞬でまた頭の中に.......。
「........。」
うん。嫌。絶対に嫌。死んでも嫌。
彼女との特訓=あいつの存在。
もう本当にドラマに出ないといけなくて特訓が必要だとしても、あいつとだけは絶対に嫌。
どうにかして断らないと。
絶対に......。
「ねぇ!間宮健人? ちょっと!何とかいいなさいよ!絶対に逃がさないわよ!」
くっ.......。
どうする。どうする。どうする。
「昨日のアレ?」
「なにかあったんですカ?」
あぁ、何かあったどころではないぞ山本とアリス.......。
俺はこの世の終わりを見た。
本当にどうする......。
「いや、ちょっと用事が......。」
「用事って何よ!何!」
くっ......何だ。俺の用事。
何でもいいから捻りだせ。嘘でもいいからそれっぽい用事を。
とにかくもうあいつだけは嫌なんだ。あいつだけは.....。
今日はないけど、文化祭の打ち合わせ?
いや、もしここで山本たちや田中君が合わせてくれなかったらその嘘はすぐにバレてもっとややこしいことに......。
ならどうする。何がある。
クソッ、何でもいいから、何でもいいから。
「.........。」
あっ
「ちょっと間宮健人!何があるの!というか嘘でしょ。絶対そう。ほら今日は特訓よ!わかった?」
「いや......ある。」
うん.....。
「じゃあ何よ!早く教えなさい!」
「そこにいる田中くんとyoutubeの打ち合わせ.......。」
「え!いいのかい!ということは間宮くんも『オッす田中ちゃんねる』のメンバーの一員だ!よっしゃぁぁぁぁぁい!」
「........。」
いや、その件についてはこの場を乗り切ったら改めてゆっくり......。
うん。ゆっくり話し合おう。田中くん.......。
「な、何よyout「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!ふぉおおおおおお」
「........。」
だからそんなにはしゃがないでくれ......。
田中君には悪いが、う、嘘だから。だからそんなに本当に.......。
あと、あの渋谷さんが言葉の途中で黙って.......。
すごいな。田中君.......。
そしてこの光景を周りがもう何とも思わず無反応なのが
一番すごいな......。
田中くん......君はやっぱり色々と
すごいな。
_____________________________________
この田中一郎が、超有名人になるのもそう先の未来ではないのかもしれない......。色んな意味で.......。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます