第118話【メガネ君】
でも本当に良かった.......。
これでまた普通の日常に戻れる。もうSNSも閉じよう。
ますます何かすごいことになっているしな.......。
これ以上、変なことには巻き込まれたくない。
とにかくありがとう渋谷様。
「あ、いらっしゃいませー.......って」
な、何か来た.......。
「はーい。今日はものすごく可愛い外国人二人組が働いていると噂されるドクマナルド122号店に来ておりまーす。その可愛さはもはやアイドル越えだとか!」
何だ!?
バイト中の俺の目には、名前はわからないが何か見たことのある美人アナウンサーと大きなカメラなどを運ぶロケ班らしき数人が唐突に飛び込んでくる。
え?テレビ?
って、今度は店長が満面の笑みを浮かべながらアナウンサーさん達の方へと向かって行くし.......。
「ようこそいらっしゃいました!ドクマナルド122号店へ。」
「どうもー。って、ふふっ。店長さん。もう私一瞬でわかっちゃいましたよ。そのすごく可愛い二人組。やばいやばい本当に可愛いですー。え、何でこんな娘たちが?」
テ、テレビとか聞いてないぞ。
ん?しかもあのマイクのとろこについているロゴは.......。
あ、主婦とかがよく見る夕方のニュース番組の。
「うわー。ほんまに可愛い。やばいやばい。こんなんおっちゃんファンになってまうでー!カメラさん。まだやで。まだ映したらあかんでー。視聴者の皆さん、心の準備はええですか? ほんまびっくりしますよ!これ。今日のこの放送で、明日から彼女たち芸能界からスカウトがバンバンちゃいますかー。そんぐらい可愛いわ。もしかしてもうどっか所属してる?」
しかもこの関西弁バリバリの芸人さんが出ているということはあの人気の街ブラコーナー。
ってことは、な、生放送!
うわ、本当に聞いてないぞ。
店長がいつもより化粧が濃いと思っていたらそう言うことかよ。
先に言っておいてくれよ。まぁ言われたところで俺的には何も変わりはしないんだけれども......。
って、そうかリンリン達も知っていたんだな。
何かぎこちないと思っていたらそういうことか。
すごく可愛い外国人二人組.......。間違いなく彼女たちだ。
今もあんな大きなカメラが来たからだろう。リンリンもアリスも二人ともすごく顔が赤くなってモジモジとしている様。
二人も知っていたのなら教えてくれたらよかったのに......。
まぁいいけど。
「よっしゃ。カメラさん。3,2,1で映してや。視聴者の皆さん。ほな行くでー。3、2、1、はい!どーん!」
そして、その合図とともに一瞬でカメラの向きが彼女たちの方に。
「「い、いらっしゃいませ!」」
「うわー!声まで可愛いー。お名前はお名前は?そして出身は? お姉さんに教えて!」
「リンリンです。中国です。」「アリスでス。ドイツでス。」
「か、可愛いー!」
「ほ、ほんまに可愛いで。おっちゃんと後で連絡先交換しよ。な、頼むで!って痛っ!」
「させません!いい歳したおっさんが一体何をしてるんですか!」
「はぁ? うっさいわ。行き遅れアナウンサーが!何がお姉さんや。って、痛っ、痛っ、なんぼほどどつくねん。コラババアーって、痛っ」
気がつけばそんな光景に店内からは笑い声も聞こえてくる。
さすがはプロだな。これがロケ慣れというやつか。
とりあえず楽しそうなあっちとは裏腹に、お客様はこっちに全て流れてくる様子。
あちらのレジが使えないから......。
まぁいいけど。
とりあえずすごいな。
アイドルよりも可愛いか......。
「って、いらっしゃいませー。」
危ない危ない。ついついあっちに意識が。
「自分らそんなに可愛いんやったら彼氏とかおるんちゃうんか? なぁ絶対おるやろ。おらんほうがおかしい。」
「いやいやいないネ。募集中デス。」
「いないデス!」
「え、嘘やん。ってどこ向いてんねん。二人とも。」
「.......。」
って、何でカメラがいきなりこっちに.......。
「ん? あのメガネ君がどうしたんや? 何かあるんか?」
メガネくん.....確実に俺のことを言っているな。
「へぇー。」
しかも何かアナウンサーの女の人がこっちを見てニヤニヤとしているし......。
な、何だよ。
って、こんな感じ前にも確かあったよな。
そういえばあの時も確か生放送.......。
「よし!せっかくや。あのメガネ君にも話を聞いてみよう。」
いや、何で。今バイト中。
って、いつの間にか店長が俺からレジ打ちを奪って.....。
「どうぞ。」
いや、どうぞじゃねぇよ。店長。
「メガネくん。ほんま自分は幸せもんやなー。こんなかわいい子らと一緒にバイトできてー。おっちゃんと今すぐ変われや! ちなみに店長さん。ここは今もバイト募集中でっか?」
「残念ながら今は募集してないんですー。足りてます。」
「うわっ。これ明日から大変なことなるで。メガネくん消されてまうんちゃうかー?」
「もう、何を物騒なことを。この人の言うことは気にしなくていいからね。バカだから。」
そう言ってアナウンサーの女の人はまた俺に笑顔を向けてくる。
「誰がバカや。ババア!ってそもそもリンリンちゃんとアリスちゃんは何でこのバイトに?」
そしてまたリンリン達の方向へと向きを変えるカメラマン。
「........。」
とりあえず一言も喋れなかったけど、今またテレビに映っていたんだよな......。
何か、テレビ番組のロケに遭遇する率が高すぎないか?俺。
「わ、私は幼馴染がここで働いていたからですネ。」
「お、幼馴染? 誰やその羨ましい立ち位置の奴は!」
って、ま、またカメラがこっちに。
「え!? メガネくん? おいコラ、メガネェェ!」
「う、うお。」
全然苦しくはないけど気が付けば芸人さんが俺の首を絞めるフリをして、そう怒鳴ってくる。
な、何だ。このテレビ的なノリ。
ってテレビか。
しかもまたアナウンサーさんはニヤニヤしてるし......。
ま、まぁ幼馴染と言ったら幼馴染だけど。
てか俺がいたからって......。
「あ、アリスちゃんは?」
「わ、ワタシもまみやくんがいたからデス!」
「お、おのれコラメガネェェェェェ」
って、ま、まじかこのおっさん。
ちょ、ちょっとマジえ首絞めに来てないか? おい。
ちょっ
「こら。やめなさい。男の嫉妬は醜いわよ。」
「痛っ、ババアの嫉妬の方が醜いでほんま。」
「な、何をこの腐れ芸人がー」
いつの間にか今度は芸人のおっさんがアナウンサーさんに首を絞められている光景。
「.........。」
嫉妬......。
「とりあえずメガネ。お前は許さん!」
何でだよ。
「そう言えば、この122号店にはものすごいイケメンさんもいたって言う噂もあるんだけど。何かしらない?」
「あぁ? ものすごいイケメン? 誰やそれ。メガネくんよりそっちをぶっ潰さんと。どこやどこや?」
「ねぇ。知らない? 君。」
何だこのアナウンサー。またニヤニヤと。
お、俺の眼をそんなにまじまじと覗き込んで......。
「し、知りません.......。」
「ふふ、残念。」
「........。」
自意識過剰かも知れないけどおそらくそれは俺だ。
多分。
「おい、イケメンどこや!でて来ーい。」
それに、このおっさんはおっさんで......。
「........。」
とりあえず、何だこれ......。
あと、ほんとに生放送?
とりあえず店長の仕業だな。
それだけは間違いない.......。
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