第19話【転校生】


 「今日は転校生を紹介する」


 へぇー、高校でも転校ってあるんだな.......。

 転校生という言葉を聞いて、周りの奴らは絵にかいたように浮足立っている様。


 まぁ.....ぼっちの俺には関係ないことだけど。


 「せんせーい。男と女どっち?」

 本当にお前はうるさいな榊.......。

 とりあえず奴の質問に教室が一瞬だけ静まり返る。


 「女性だ。」


 「「「おっしゃー」」」

 「「「やっほーい」」」


 そして、その先生の言葉にわかりやすく色めき立つ男ども。

 女子達はそんな男達に冷ややかな目線を向けているようだ。

 まぁ、そうなるだろう。

 でも、まぁ......なんだかんだで女子達も楽しそうな顔。


 「シ、シツレイしまス」

 ようやくか......。

 って、ん?

 何だ今の違和感


 ガラガラガラガラッ

 

 ____そしてドアが開かれた数秒後


 俺達の目の前には、いつのまにか金髪蒼眼の小さな少女が立っていた......。


 が、外国人.......?


 「アリス・クリスティーナでス。ヨロしくオネガいしまス。」


 教壇の上にちょこんと立つ女の子が、ところどころ発音が乱れた自己紹介をしてお辞儀をしている。


 「可愛いすぎるぜぇ。フォー!!!!」

 「ま、まじでかわいい。」

 「ア、アリスたん最高」

 「こ、こっち向いてくれー」


 いつの間にか、その自己紹介にテンションが最高潮にあがっている榊もといクラスの男たち。


 うるさい.......。


 「でもほんとに可愛いよね。」

 「うん。お人形さんみたい。」


 すると今度は女子達の声も聞こえてくる。

よかったな......。

 さすがにいじめは起こらなさそうだ。


 そしてそんな榊たちを無視して淡々と説明を再開する教壇の先生。


 「アリスは親の仕事の都合上、ベルリンから日本に来たドイツ人だ。正直、日本語はそこまで上手じゃないし、まだまだわからないこともいっぱいあると思う。皆、優しくしてやってくれ」 


 「「「はーい、はーい、はーい!!!!!!!!!!!!!!」」」


 その説明にまたもやテンションMAXの榊たち。

 ほんといい加減、こいつらうるさいな.......。


 ん?

 「うーん、アリスの席はどうするかなぁ」

 そんなことを考えていると、目の前で先生は首をかしげている。


 「はーい、はーい、はーい、先生こっち、こっち、こっちしかねぇ!!!!!」

 騒がしい声の方向には必死の形相の榊。


 まじで黙らないかな.......


 「わかった。では、アリスの席は......」

 

 って、いつのまにか先生の言葉に男たちは息も忘れて沈黙している様子


 そして数秒後


 「間宮の隣だ!!!」

 

 ま、まじか.......。

 そう。先生の口からでた名前は、間違いなく俺の名前だった。


 「まじかよ、何であんな陰キャの横なんだよ」

 「アリスちゃんが可愛そうだろうが」


 予想通り......男たちからの無数の鋭い視線と言葉の矢が俺にとんでくる。


また俺にヘイト集まるじゃないか.......。

 先生、勘弁してくれよ......


 「ヨロしくデス」


 って、うわっ

 いつのまにか隣の席にはちょこんと座って俺にお辞儀をしてくるアリス。

 き、気づかなかった。


 「宜しくお願いします......。」

 とりあえず俺も礼儀として彼女に丁寧なあいさつ。


_______そして朝のホームルームが終わり休み時間。


 案の定、クラスの生徒たちはアリスの席に群がり、他のクラスからもアリスのことを覗きにくる者たちがかなりいるみたいだ。


それぞれが自分のことをアリスにアピールしていく。


「アリスちゃん、俺は榊タカ。何か困ったことがあったらすべて俺に言ってくれ。アリスちゃんの為なら俺は命も捨てられるからな」


 またシャドーボクシングか榊.......。

 それ好きだな。本当に。


 他の男たちも似たりよったりな自己紹介を必死に彼女に向かって売り込んでいく。

 そんな彼らに必死に笑顔を返している隣の彼女。


 でもなんか、あわあわしてる?


 まぁとりあえず、今日も賑やかだな.......


 そんなこと思いながら俺はいつもと変わらず、机に頭を沈めるのであった。

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