第14話【独り飯】
ようやく昼食の時間か。
いつものように俺は一人虚しく弁当をむさぼる。
さすがに今日はもう来ないよな......。
渋谷さん。
来ないでくれよ......。
これは振りじゃないからな。ほんとに来ないでくれよ......。
「まじで昨日は大丈夫だったかよサヤ。まじで災難だったな。トモキの野郎、もし次に会う機会があったら絶対に俺がぶっ飛ばす。」
「うん。大丈夫だよ......。」
またシャドーボクシングか.....。もはや榊の十八番だな。
「よし。今日は景気づけにパーッとどっか遊びに行くか。俺達はもちろん、他の高校の目立った奴も誘ってさ。」
「ハハッ、イケメンパラダイスと行くか。」
「そうだね。ねっ、サヤせっかくだし行こ行こ。」
また、教室では榊や高砂、山本の友達などが騒いでいる。
ほんとよくやるよ。
「ごめん。やめとく。気を使わせてごめんね。ありがとう。」
「え? サヤどうしたんだよ。辛気臭いじゃねぇか。」
「うん、どうしたのよサヤ。元気ないよ。」
「昨日のことで落ち込むのはわかるけど、俺達がついてるんだから大丈夫だって。」
「そうそう。今日は俺達がついてる。ほら、元気出していこうぜ。よし、さっそく人数集めちゃおうぜ。」
「よし、今日もサヤの魅力で男の子たちメロメロにしちゃお。ねっサヤ」
「いや、ほんとに大丈夫だから........。もうそういうのは辞めたんだ。」
「「「えっ?」」」
サヤからでた言葉に教室が一瞬沈黙に包まれる。
「ほ、ほんとにどうしたんだよサヤ。」
榊も豆鉄砲を喰らったような顔。
「いや、別にどうもしてないよ。でも、もう本当にそういうのは辞めるの。ごめんね。」
な、なんで俺の方を見る。
しかもそんなに、しおらしい表情をして.......。
「ほんとにどうしたのよサヤ。私たち友達でしょ。今日のサヤおかしいよ。ねぇどうしたの。」
「ほんとに心配してくれてありがとう。でも.....おかしいのは今日の私じゃない。.今までの私だから.......。」
そしてまたも教室は沈黙。
ま、まぁ彼女も昨日の出来事で相当にこたえたんだろう。
まぁそれが正解だろう。
何様だよって話になるけど......。ちょっとは良い勉強になったんじゃないかな。
って、な、何でこっちに来る山本?
おいおい視線をこっちに集めてくるな。
昨日も俺にはむやみに近づくなって言ったはずだ。
お前は視線を集めるし。
そもそも陽キャと陰キャは相いれないんだ。
そして気がつけば彼女は俺の目の前。
さっきからずっとしおらしい顔をしている彼女。
らしくない.......。
で、何だ?
「ごめん。私のこと嫌いかもしれないけど......昨日はほんとにありがと。私......変わるから。もう嫌いなんて間宮くんに言われないように頑張るから......」
「え?」
そう言って静かに自分の席へと戻っていく彼女。
教室の奴らは当然何のことかわからないのだろう。
ほとんどの奴が唖然としている。
もちろん当事者の俺ですらもそのうちの一人だ。
するとその沈黙を破るように教室の入口からは女性の凛とした声が聞こえてくる。
「間宮健人いる? 来てあげたわよ。」
あぁ.......来ちゃった。
「お、おす、渋谷さん。ちょ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「......」
「なんで最近、lineに既読すらつけてくれないんだろう?もしかしてアカウント変変えた?」
「......」
また榊が無視をされてる.......。
そしてそのまま俺を睨んでくる。
「チッ、陰キャが調子のんなよ」
一回ものってない.......。
多分、この学校で一番のってない。
そして渋谷さん。あいさつぐらい返してあげてくれよ。
あなたが無視をする度に榊たちの俺に対するヘイトがたまるんだ.......。
俺が 陰口を言われないようにするには、もう極端に空気になるしかないんだ。
どうか察してださい.......。
あぁ、もういやだ......。しかもなんで彼女はお弁当を手に持ってるんだ。
「あ、ま、待って、待ちなさい。ほんとに待って、だから何で逃げるのよ~」
前にも榊が言っていたように、俺と渋谷さんじゃ住んでいる世界が違うんだ。
俺みたいなぼっち、ほっといてくれ。
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