第15話【日直】


 ピピピピピピピ......カチャ

 いつもより目覚まし時計の針が30分ほど早い位置にある。


 そうだ.......。今日は日直か。

 はぁ.......身体が重い。

 今日も学校......嫌だな。嫌すぎる。


 日直は普段より早く学校に行き教室を開けて簡単な掃除等をしなくてはならない。

 俺は朝ごはんを食べて顔を洗い、しぶしぶ自宅を出る。


 はぁ、今日もどうせひとりだろうな。

 まぁそっちの方が気が楽で良いけど.....。


 日直は男女一人ずつ出席番号順でペアが決まるが、先月も俺の相方は早く来なかったし、授業後の黒板消しや放課後の仕事もすべて俺がひとりでやったっけ......。

 まぁ彼女、日直なんて真面目にするタイプじゃないしな。


 はぁ........もう学校に着いてしまった。

 帰りたい。


 俺は職員室に鍵を取りに向かう。

 「失礼します。」


 あれ鍵がない。

 「あー、さっきそこの鍵なら女の子がとっていったよ。」


 まじか.......。


 「わかりました.......。ありがとうございます。失礼しました。」

 

 ほ、本当だ。教室が開いてる。

 「あ、ま、間宮くん、おはよ。」

 「おはようございます.......。」

 

 今、目の前でほうきを持ちながら俺にあいさつをしてきた女性は山本サヤ。

 意外だ.......。彼女がちゃんと掃除をしている。


 「あの.......日誌はどこに?」

 「え、日誌?あ、ご、ごめんなさい。すぐに取ってくる。」


 「いや大丈夫.......。教室も開けてもらったし、掃除もしてもらってます。俺がとってきます。」

 「ご、ごめん。」


 まぁ、日誌ぐらい。

 俺はもういちど職員室へと足を進める。


 それにしても最近の山本は何かおかしいな。

 本当に妙にしおらしい。

 こんな娘だったけか.......。


 「はい。これが日誌です。」

 「あ、ありがとう。」


 「一応、放課後に色々書きこむとことかあるんで......。あ、でもこれは別に僕が今回も書くんで大丈夫です。」

 まぁ一応説明したけど二人で書くようなものでもないしな。


 「い、いや私が今回は書くよ。ぜ、前回はごめんね。全部まかせっきりで......」

 「いえいえ全然.....あ、ただここだけは忘れないようにしてください。俺、前回忘れていて先生に注意されたんで。」


 そういって俺は日誌を開けて該当箇所に指を指す。

 静かに俺の横にきて日誌を覗き込む彼女。


 「ここです。」

 「う、うん。」


ん?

 なんでそんなにモジモジしている.......。

 お手洗いか?

 それになんでそんなに顔が赤い。

 熱? 体調不良?

 

 「大丈夫ですか......?」

 「へ? な、何が?」

 

ん?

 「い、いや体調悪そうなんで......」

 「い、いや、そんなことないよ。ぜ、全然......うん。」

 何かひっかかるけど、本人もこう言ってるし

 まぁいいか......。


 「あ、あと間宮くん......私なんかに敬語なんて使わないでいいよ。」

 「え?」


 「あの、そのど、同級生だし.....ふ、普通にタメ口で話してくれた方が違和感ないっていうか.....」

まぁそうか.......。


 「あ、その、やっぱり何でもない。ごめん余計なお世話だよね。ま、間宮くんの話したいように話してくれたらいいよ。ご、ごめん。」


 どっちなんだ......。

 やっぱり今日の山本というか最近の山本は何かおかしい......。

 まぁ別に関係ないけど、違和感がすごい.....。


 「とりあえず注意点はそれだけだから。掃除の続き......しようか」

あとちょっとで他の奴らもくるしな。


 「う、うん!」

 

 って、何でそんなに嬉しそうなんだ.......。

 意外に掃除とか好きなのだろうか......? 

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