第13話【暴走お嬢様】


 山本、無事に学校にくればいいけど.....

 昨日は少し感情的になってしまった。

 反省だ。


 まぁ.....別に俺なんかに色々と言われたところでそれが?って話だろうし、あの性格なら普通に大丈夫か。

 そんなことを考えながら俺は机の上にまた頭を沈める.....はずだった。


 「普通にいるじゃん。姉さん。」


 ん?

 声の方向に視線を向けるとそこには渋谷さん弟......。


 「嘘よ。どこよ。」

 騒がしい足音と共に、間髪あけずに俺の視界へと今度は渋谷さん本人が姿を現す。


 「ほ、ほんとだ。い、いるじゃない !」


 あぁ、ずっとここにいる.......。

 ほんとに一日中机にへばりついているけども。


 「あ、あなた、名前は?」


 そして気がつけば彼女が俺の目の前に。

 圧がすごい.......。


 「間宮健人ですけど.......。」


 「おい、渋谷さん。そのぼっちに何の用?そいつは渋谷さんと住む世界の違う底辺だぜ。変わりに俺が聞いてあげるからこっちに来なよ」


 はぁ、出ました今日も俺の精神HPが削られていく。

 榊......なんでそんなに口が悪い。

 

 「そういうことみたいですけど.....」

 そういって俺は小さく、手のひらで彼女を榊の方へと誘導する。


 「は?あ、あ、あんたがあの間宮健人?」

 

 ん?俺を知っているのか?

 いやどう見てもあの時の反応は知らなかっただろ。


 「定期テスト常に1位の.......間宮健人」


 何で知っている.......。

 この学校は定期テスト上位10名の合計点数は毎回公表されるが、名前は伏せられているはずだぞ。


 「へ.......?」

 「担任に聞いたのよ。万年二位の私の上にいる一位は誰ってね。屈辱だったわ。中学では私がいつもぶっちぎりの一位だったのに。高校に入ってからは一度も......そ、そう、あなただったのね。」


 おい、渋谷さんの担任.......。

 個人情報だろ。何をしているんだ......。


 「そう、あなたが間宮健人。あなたが.....ほ、褒美を遣わすわ。何でも願いを言いいなさい。」


 また出たよ。神龍。


 「いや、別に何にもいらないですけど。」

 強いていうなら悪目立ちしたくないんで、早く自分の教室へと帰って欲しい。


 「はぁ.....?こ、この私が褒美をあげるって言ってるのよ。わ、わかったline交換してあげる。ど、どう? 私のlineよ。ほんとに仲の良い友人しかしらないんだから。」


 榊もそういえば交換してたな。

 ってことは....あいつは渋谷さんのほんとに仲の良い友人か。

 そのわりにはさっきから無視の連発だな。


  まぁ、どっちにしろ彼女とlineすることなんてないだろうしな。

 「いや別に大丈夫です......。」


 「な、う、嘘でしょ。間宮健人、わ、私が連絡先を交換してあげるって言ってんのよ。数々の男子たちにIDをせがまれても絶対に教えない私が.....」


 いや、榊は普通に知ってたみたいだけど。

 何でそんなに驚いた顔をしているんだ。

 やっぱりこの子も苦手だ......。

 超絶美人だとは思っていたが.....こんな人だったのか。

 話せば話すほどちょっと......想像以上。


 「し、渋谷さん。間宮くん困ってるようだし、もうやめてあげた方が......」

 あ......山本。

 思わぬところから助け船。

 無事に学校に来たみたいだな。

 なぜかいつもよりしおらしいけど.....


「え?......って山本さんじゃない!あなたなんでこの前、間宮健人を隠したのよ! 一体どういうことかしら?」


 「い、いやそれは......。」


 「お、サヤ。昨日は大丈夫だったのかよ。すまねぇ。昨日ちょっと忙しくて夜まで携帯見れてなかったんだ。まじですまんな。」


 へぇ.......山本、榊に助けを求めてたんだ。

 ってことはやっぱりそれなりに榊も強いのか?

 嘘つきではあるけれども強いのか?。


 っていうか、もう周りがそれぞれに喋りだして何がなんだかわからない。


 よし.....よくわからないけど、もうすぐ授業もHRも始まるし、とりあえずトイレに行っとくか。


 俺は席から離れて廊下へと向かう。


 「ねぇ聞いてるの山本さん? ってちょ、え、間宮健人、どこに行くの。ま、待ちなさい。待って、お願いだから待って~。」


 はぁ.....朝から賑やかだな。

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