第12話【悪魔の後悔】
私、山本サヤは今、間宮健人くんの背中に背負われながら帰路についている。
「行こう」と言って静かに手をさしのべてくれた彼に、腰が抜けて立てなくなってしまっていた私。
情けなさすぎる.......。
あそこでの出来事は最低最悪だった。
本当に思い出したくもない。
あの後に間宮くんが警察を呼んでくれて色々と事情聴取もされたけど、無事に私たちは解放された。
トモキたちには余罪もいっぱいあるだろうから、おそらく彼らが一斉に逮捕されることになると警察の人たちは教えてくれた。
その頃にはもう涙も私の目からはひいていた。
間宮くんの背中......あったかい。
それに何か.......ドキドキする。
私らしくない.....。
間宮くんの顔がまともに見れない。
「間宮くん.......。今日はありがとう」
そう言って私はギュっと間宮くんの背中にしがみつく。
「でも、本当に男って最低だよね......。ちょっと優しくしたら、すぐデレデレして
彼女がいる子だって平気で私に告白してくる。でも、どうせ最終的には私とヤリたいだけでしょ。私の身体目当てでしょ。ほんと......最低だよ。」
精神的に弱っている私は、今思っていることをすべて間宮くんに愚痴としてぶちまけてしまう。
「間宮くんには感謝してるけどね。」
そして愚痴を聞いてもらったお礼に私は彼の耳もとで小さくささやく。
「でも、私はまだ処女だからね」
ふふ、間宮くん......照れてくれてるかな?
私を背負いながら尚も黙っている彼。
私に緊張しているのかな。
あんない強い癖に......可愛い。
そんなことを思っていると唐突に彼の口が開かれる。
「反省とかは......してないんですか?」
「え? 反省?」
「はい。反省です。あんなに危険な目にあったのに......何が処女ですか。確かに男は最低かも知れませんが......あなたも十分最低ですよ。」
「え、そ、それは......」
「今日の出来後は正直いって自業自得だと思いますよ。色んな男をその気にさせて、さぞ楽しそうですが.......今の山本さんを見ている限りまた同じことを繰り返すんでしょうね。」
「.......」
私の口からは言葉がでてこない。
その通りだから......。
「とりあえず、もう歩けるでしょ。駅はすぐそこですし、人も多くなって来ました......。降りてください。」
そう言われて私は優しく彼の背中から降ろされる。
「とりあえず、あなたも今日のことは多分誰にも知られたくないと思いますし、学校ではむやみにもう俺には話しかけないでくださいね。これ以上変なことに巻き込まれるのも嫌ですし......。正直俺なんかがこんなこと言うのもなんですが、あなたみたにな人は苦手というか.....嫌いです。」
「え?」
そういって静かに駅の方へと消えていく彼。
「ま、待って.......」
結局、彼は私の言葉には振り返りもせず、その場からいなくなってしまったのだった。
目頭が熱い。
なんでだろう。
今、私の目からは大粒の涙がこぼれ落ちている。
なんで、なんでこんなに悲しいの。
胸が痛い。
そう......。すべて、間宮くんのいう通りだ。
男が最低?
違う。好きでもない男の子をたぶらかして、その気にさせて、男の子で遊んでいた私が、間宮くんの言うとおり一番の最低人間だ。
今回の出来事も、被害者面してしまったけど彼の言う通り完全に私の自業自得だった。
本当に危なかったんだ。
恋愛ごっこをして、良い女を気取ってた私は本当にしょうもない女.......。
でも何で本当にこんなに悲しいの?
今日の出来事よりも、 間宮くんからの『嫌い』って言葉が私の心臓を締め付ける。
涙が止まらない。
なんで.....
嫌いなんて、嫌いなんて言わないで、間宮くん。
___________駅前で一人残された山本サヤは、気がつけばその日一番の量の涙をその場で流していたのであった。
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