第12話 追跡
国立博物館へ向かう消防や警察のサイレンの音が
ボクらを乗せたトラックは宅急便が使っている運転席と荷台が一体化したタイプだった。ボクとリトルはイクミちゃんが助手席へ乗せられたことを知ると、黒背広が注意を払いながら運転席へ回るスキを
まだジンジン痛む足をさすりながら、そっと立ち上がったボクは後ろの窓から外の景色をのぞき見た。トラックは早くもショッピングセンターの前を通り過ぎて長いトンネルに入りはじめたところだ。だとするとボクらは来た
「リトル、次の作戦なんだけど」
返事がない。
「リトル!」
「リトル! リトル!」
『………』
「リトル! リトル!」
『んっ、なに?……』
ほっとしたが、不安で涙が出そうになった。
「さて、
黒背広の片手ににぎられた拳銃が鈍い光を放ちながらイクミちゃんに向けられる。リトルとの交信を
「まったく、どんなマジックを使ったのか知らないが、よくも私の計画を
ボクは
「計画は変わったが、君たちには最後までつき合ってもらうよ。それだけのことをしたんだからね」
「………」
「怖くはないのかね」室内のバックミラー
気持ちの悪い猫なで声にボクはなおも
「君のように悪に立ち向かう勇気ある少年……ふん、バカバカしい! もう一つは死んだ子供たちだよ! その2種類しかいないのだよ!」
不安そうにシートベルトをつかんでいるイクミちゃんと目が合った。
しばらくしてイクミちゃんは、体を二つ
黒背広は満足したように銃を
「ねぇ、おじさん」
何事もなかったかのように黒背広は運転を続ける。どうやら今度はボクが無視される番らしい。
「おじさんも、おびえた子供だったんだよね」
ボクの言葉に、はっとこちらを見た黒背広はすぐに
「生き残って大人になれたんだから、そうでしょ。ボク、おじさんの国のことは全然知らないけど、ほかの種類の子供たちも、きっといるはずだよ」
「なんだと、小僧」
走る車の中で運転席に近づいたボクと黒背広の視線が一瞬、ぶつかり合った。
「ねぇ。それは、どんな子供かわかる?」
「………」
「わからないんだね。じゃぁ、教えたげるよ。それは友だちがいる子供たちさ。彼らは助け合って不安を押しのけられる。きっと、そんな子供たちが、おじさんの国にも……」
「黙れ! お前のように恵まれた国に育ったガキになにが……な、なんだ、これは?!」
場所と時間は申し分がない。
リトルの合図とともにボクとイクミちゃんは危険を
ボクに注意を向けていた黒背広は、泣いているお
仕上げにボクはリトルから教えられた黒背広の国の言葉で窓の外を指差して、大声でこう叫んだ。
「警察だ! 警察が来たよ!」
*
完全にボクたちのペースだった。ボクは素早くハンドルに飛びついて、えいや、とばかりに大きくそれを左へ回した。
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