■エピローグ//1943/11/XX(6):日記帳より抜粋の記録:A-60およびA-37

 そんな感じのことがあって、それから。

 学校で、タルシャが私に嫌がらせをすることはなくなって……っていうと、回りくどい書き方になっちゃうなぁ。

 タルシャとは、友達になれた。

 みーちゃんに対しては優しいのに相変わらず私に対してはぶっきらぼうだけど、それでもとにかく今はすっかり仲良しになっている。

 お昼ごはんだってたまに一緒に食べるし、学校が終わってから、タルシャの習い事がない日とかは一緒に遊ぶこともある。

 タルシャの家は武官で、タルシャもちゃんと武術の稽古とかを受けなきゃいけないらしいから、あんまり時間はないんだけどね。

 でも――とにかくそんな感じで、私たちは一段落。

 ……ああそうだ、でもいっこだけ問題があったっけ。タルシャから聞いたんだけど……タルシャの取り巻きの男子たちのこと。

 あの子たちも私に嫌がらせをしていたから、タルシャと同じような理由があるのかなって思って、タルシャに直接訊いてみたんだよね。

 そうしたらなんて返ってきたと思う?

 なんと……あの男子たち、私のことが「好き」なんだって。

 「好きな子をいじめたくなるタイプよ。下らないわ」って、タルシャは呆れながら言ってたっけ。

 好きっていうのはよく分からないけど、ともかくタルシャと仲良くなってからは男子たちも私には何もしてこなくなったから、ひとまずはそれでいいや。

 ……そういえばこのことはみーちゃんには言ってなかったなぁ。タルシャにも、「あの子には言わない方がいいわ」って言われたし、言わないでおこうかなぁ。


(欄外の添え書き:「好きって、どういうこと!? 六花ちゃん、あとでちゃんとお話ししてね!?」)


 ともあれ、そんなこんなで今日も私たちは元気に学校に通えています。

 他の皆も、何事もなく……ああいや、そういえば最近、やっちゃんがなんか帝政圏の人と深刻そうな顔して話してたっけ。

 確か、カイさんとシャルロッテさん。【スケアクロウ】っていう人の仲間だっていう人たち。

 やっちゃんは頭がいいし、一番のお姉さんだから色々抱え込んじゃうんだよね。

 もう少し、相談してくれるといいんだけどなぁ。

私なんかじゃやっちゃんの役には立てないかもだけど……それでも今回のことでひとつ、分かったから。

 ちゃんと思いを誰かに打ち明けることは、とっても大事なことだって。


 だから――


     ■


「……つくづく気苦労が絶えないな、君」


 そう言って電話越しに苦笑する男……カイに、八刀は「仕方ないでしょ」と嘆息混じりにぼやく。


「妹たちがどいつもこいつも、色々背負い込むタイプばっかりなんだから。まったく、皆もっと四月姉さんくらいぼんやりしてた方が気が楽なのに」


「……はは、そうかもな」


 少し間を置いてそう笑った後、カイは「まあいいや」と続ける。


「それでお前さん、俺らを顎で使って一体全体何しようってんだ? 連邦に忍び込んで機密でも持って来いってんなら、さすがにちょいと荷が重いが」


「そんなどうでもいいことじゃないわよ」


 呆れたようにそう告げて、それから八刀はしごく真剣な表情でこう返した。


「九重の誕生日に、最高の贈り物をしたいの。貴方たちに協力してほしいのは……それよ」


「……マジかよ、シブいねぇ」


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