ReView://■2――識別コードA-008

九重「八刀さん回です、八刀さん回」


八刀「回って何よ。……別に私は自分の記載になんか興味ないし、飛ばしましょうよ」


九重「そうはいきませんよ。あの頃のとんがった八刀さんの姿、ぜひとももう一度確認しておきたいですからね」


六花「この前読んだ本に書いてあったんだけどさ、やっちゃんみたいなタイプのこと、『つんでれ』って言うんだって」


八刀「うっさいわ」


九重「……もしや八刀さん、そのツンデレムーヴで先生を籠絡しようなどと。一夫多妻制度は個人的には容認派ですが、それでも本妻の座に関してはいくら八刀さんといえどお渡しできませんよ?」


八刀「そんなつもりは毛頭ない」


九重「それにしても改めて記録を見返すと、八刀さんも随分と変わったなぁと思います」


八刀「……まあ、それは、そうかもね。あの頃はたしかに、余裕がなかったから」


九重「先生ってば、困って私のところに相談しに来たんですから」


八刀「……悪いとは、思ってるわよ。多少」


六花「でもでも、やっちゃんはなんだかんだでずっと、やっちゃんだよ。確かに前の方がおっかなかったけど、それでも何だかんだで下の子たちも皆、やっちゃんには懐いてるもん」


三七守「先生もですけど、八刀先輩もすっごく皆のことを見ててくれてるって、知ってます。この前だって陸九ちゃんが街で迷子になった時、真っ先に見つけたのは八刀先輩でしたし」


八刀「別に、そんな大層なことじゃないわよ……。お子様たちの思いつくことなんて、少し考えればすぐにわかるもの」


六花「んもー、素直じゃないんだからやっちゃんは」


八刀「前々から思ってたけど、貴方私に対して馴れ馴れしすぎよ。一応私は貴方より年上なんだし、先輩でもあるんだからもうちょっとね――」


六花「ひぃ、またやっちゃんのお説教攻撃だ! 助けてみーちゃん!」


三七守「……そういえばあの時の訓練で、九重先輩がいなくなっちゃった時は本当にびっくりしました」


八刀「プロトコル501なんて、久々に聞いたからびっくりしたわ」


三七守「久々……前にもあったんですか?」


九重「貴方たちが来るほんの少し前でしたかね。不詳の姉が、粗相をしまして」


八刀「守衛官たちの目を盗んで街まで行こうとしたのよ。弥六みろく姉さんと七奈那なななだっけ――二人とも大目玉食らってたわね」


三七守「ちなみに、お二人は何でそんなことを……?」


八刀「『アイドルになります。探さないで下さい』って言ってたっけ」


九重「それは七奈那なななさんの方でしたね。弥六みろくさんは『自分より強いやつを探しにいく』でした」


三七守「…………凄い方たちですね…………」


九重「一桁台でもあのお二人は特に破天荒でしたから。……ともあれ、私も私で不覚でしたね。悪天候とはいえ遭難しかかるなんて、まだまだ修行が足りていませんでした」


八刀「……まあ、そういうことにしておきましょうか」


九重「おや、何か?」


八刀「いえ、なんでもないわ。……貴方にはこの先もずっと、敵う気がしないなって思っただけ」


六花「でもでも、あの時はやっちゃんの秘蹟も凄かったよね。なんかすごいのが、ぶわーって」


三七守「八刀先輩、あの後体は大丈夫だったんですか……?」


八刀「ええ。私の場合は聖痕症候群が軽いのだけが取り柄みたいなものだから。三七守や九重と違って、あのくらいの無茶なら少し休めばへっちゃらよ」


九重「眼鏡の度が少し上がったと、先生には聞きましたが」


八刀「ぐ」


九重「……全くもう、本当に、貴方って人は――他人だけでなく、自分のこともちゃんと『視て』あげてくださいな」


八刀「……肝に銘じておくわ」

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