聖夜と彼女

「あっ、あのっ…!お店、っ、しまっ、ちゃ、っ、ましたかっ、!?」

赤いタータンチェックのマフラー、うちの店の中でも一二を争うくらい女の子らしいそれを巻いた彼女が、膝に手をついて、切らした息を整えていた。

「今閉めたとこです…けど、何でしたら俺今日も暇なんで開けますよ」

「いえ!お気遣いなくっ…!!」

息が整ったのか、右手をばっ、と前に出して俺の言葉をとめた。

その様子から察するに、店に用があるわけじゃなさそうだ。やっと体を起こした彼女に、俺は声をかけた。

「どうかしましたか?」

そう聞くと彼女は、はっ、となって肩から提げているカバンを漁り出した。資料ファイルやクリップで止められた紙束なんかが顔を出す中、一体何が出てくるのか、と不思議に思えてきて俺は異次元に繋がっている気までしてきた彼女の鞄の中を覗き込もうとそろーっと、バレないように背伸びした。

「えーっと…あ、あった!」

そんな俺には気づかずに眉間にだんだんと皺を寄せながらカバンを漁っていた彼女は、どうぞ!と、緑の小袋に赤い小さなリボンのついたそれを鞄の中から引っ張り出して俺に差し出した。

「あの、これ…?」

さすがに断ることもできないので、俺はその小袋を受け取りながらこれの中身が知りたくて、聞いたつもりだったんだけど、彼女は

「クリスマスプレゼントです」

ささやかですけど、と頬を掻きながら照れたように笑って言っただけだった。

クリスマスプレゼントをくれるのはとてもありがたいけれど、中身は一体なんなんだろう、それに、どうして俺にくれるんだろうか。

いろいろと聞きたいことはあったんだけれど、彼女は腕時計をみて明らかに動揺していた。

そして、それじゃ私まだ仕事があるので!と俺に背を向けて事務所のビルの方向へ踏み出そうとした。

その時、何かを思い出したのか、俺の方を慌てて振り向いて

「あっ!誤解しないでくださいね!」


ーーーーー驚かせたかったんです!


彼女はいたずらっぽい笑顔でそう大きな声で叫んでから、雪と共に、聖夜の暗闇と白銀の世界に消えていった。

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