薄れゆく期待

それから、彼女はたびたび顔を出してくれるようになった。

2日に1回、1日1回、1週間に1回、なんて、頻度はバラバラだったけれど、いつも仕事の昼休みに顔を出してくれていた。

彼女は近くのビルの事務所でマネージャーとして働いているみたいで、いつも忙しそうにしている。

たまにあるらしい休日に店に来た彼女には、いつも担当しているグループからの電話が1回はかかってくる。楽しそうに、そして度々母親のように諭しつつ、マネージャーとして道を進んでいた。

店に来るたびに服を買う訳じゃないけれど、お客さんがいなければわざわざレジで欠伸をしている俺に話しかけに来てくれる。

最近どうですか?とか、今日のコーディネートのテーマを教えてください!とか

この前それを狙って、焼肉定食って書かれたTシャツの上からシャツを羽織っていたら、肩を震わせて笑いを堪えられずに吹き出しながらテーマを聞いてきたから、今日の晩飯の気分と答えたら、いい答えですね、って謝りながら爆笑していた。つられて俺も笑ってたんだけど。

そうやって彼女と過ごす何気ない時間が増えていくうちに、俺は彼女はあの子だとは思えなくなっていった。

別に、理由なんてものは単純で

あの子は誰かに話しかけるなんていう行為は大の苦手で、コミュニケーションをとりたがらない子だったからだ。

人と面と向かって話すのは苦手で、いつもトークアプリを通じて話をしていた。

まあ、悪くいえば個人主義、良くいえば大人。

だからこそ、話題の絶えない話し上手で聞き上手な彼女をあの子と重ねることは次第になくなっていった。

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