第21話 ダンジョン攻略 前編
翌朝、気づくと雪奈が某幽霊映画のように俺を見下ろしていた。
「こえええよっ!それやめろ!寝覚めが悪すぎる!」
「ニャッ!」
「兄さんが大声出すからルナが起きちゃいましたよ?……もう機嫌直りましたか?」
雪奈が言ってることはわかる。今すぐは割り切れない、それだけ妹に依存してた証なんだろう……。だけどきちんと前を向いて歩けるように頑張るから、それまでは少し気まずいかもしれないが……。
それでも少し言ってしまう俺に自己嫌悪しそうになる。
「ルークとか言う奴と随分仲良くなったんだな?」
「ルーク?ああ、あの副団長さんですか。昨日の食事会で騎士団長さんについて来てたんですよ。その時に食事もご一緒しました」
それだけじゃないだろ!送ってもらって、それから……。キスまでしてたじゃないか。どうせ俺の死角で口説かれてたんだろ?見張ってはいたが、常に全部は見えなかったからな……。
ああ~やめだやめだ!心のリストカットをしてる気分だ。話題変えた方がいいな。
「そうか、ところでそろそろナーシャが来るだろうから、ステータスチェックするか」
「はい、わかりました」
(ん?兄さんまだ機嫌がよくない?何かあったのでしょうか……)
ナーシャが来るまでの間、ステータスを公開しあった。
園田 拓真 Level 19↑ ジョブ 印術師 印術スロット3
スキル
付与印術 触れた物体に属性を付与する (毒・地・水・火・風・光New)
補助印術 自身に
パッシブスキル
剣術 C 印術 A
園田 雪奈 Level 24↑ ジョブ 剣士
スキル
園田流一之型
園田流二之型 月 雪に繋がる二段目のスキル・満月を模した斬撃
園田流三之型 花 三段目のスキル・花弁と同じ枚数のほぼ同時斬撃(5)
縮地 特殊な歩法で短距離を一瞬で移動する技術 New
パッシブスキル
剣術〈異〉A 刀装備時攻撃力up
俺は光属性を付与できるようになって治癒が継続治癒になったな。
まぁ、光属性を試しに付与してみたが、機械剣がただ強く発光しただけだったな。継続治癒もおそらく本職に大きく劣るだろう……。
俺が遠い目をしてると雪奈が興奮したように叫んでいた。
「兄さん!縮地ですよ!ロマンスキルです!兄さんの本棚の2段目にあったラノベの主人公が使ってたんです!」
「わかった!わかったから落ち着け」
「とりあえず、俺は光を付与できるようになった。ナーシャが来るまでちょっと自作できるか練習してくる」
「はい……いってらっしゃい」
(やっぱり……ほんの少しだけ、普通の人なら気付かないレベルで私に素っ気ない気がします。いつもなら一緒にくるか聞いてくるのに……。)
「セツナさん~タクマさん~お待たせしました!」
「ああ、待ってたぞ」
「今から行くダンジョンってどんなところなんですか?」
「だいぶ開拓が進んでるダンジョンなのでそこまで難易度は高くありませんし、罠がたまにあるくらいですね」
まぁ、ダンジョンと言えば罠だろうな。
中の魔物には悪いが、憂さ晴らしをさせてもらう。
「ダンジョンにボスっているのか?」
「いますよ。今からいくところは『傍若無人』という名前のダンジョンで階層は10階層しかありません。ボスは金の体毛のオーガです。通常のオーガよりも数段パワーのある個体なので気を付けていきましょう!」
こうしてダンジョン攻略は始まった。ナーシャによると夕方には帰れる程度のダンジョンなのでレベリング気分でいいとのこと。
☆ ☆ ☆ ☆
3層までただのゴブリンしかいなかったので難なく突破し、4層中盤を攻略してるときだった。
「兄さん!オウルベアが3体正面から来ました!」
「ナーシャが左、俺が中央、雪奈が右で行くぞ」
ナーシャは”クロスラッシュ”でオウルベアの胴体に十字を刻み、のけ反らした。
そして俺は”自作スキル・ホバークラフト”の短距離連続版である”自作スキル・エリアルステップ”で大振りを避けながら順調に勝ちに向かっている。
雪奈を見ると、一瞬だった。新しく覚えた縮地で背後に回ってそのまま雪月花で瞬殺していた。
チート過ぎるだろ!エリアルステップはお前の縮地を模倣したんだぞ?
本家との差を痛感したが、さすがに何度もオウルベアと戦ってる俺は遅れて討伐完了した。
そしてナーシャが俺に遅れて討伐完了……ナーシャは俺たちに向かってVサインをしている。
その矢先、ナーシャの足元が突如として光始めた。
「ナーシャさん!!」
雪奈が縮地で駆け出し、ナーシャを突き飛ばして……転移した。
「セツナさん!?ああああ……ごめんなさい!ごめんなさい……ごめんなさい……」
「ナーシャ!落ち着け!」
多分俺の声が聞こえてないんだろう……俺だって雪奈がいなくなって叫びたい気分なのに……。
とりあえずナーシャを落ち着かせるために横に座って肩を抱く。そして”自作スキル・ヒーリングリリー”で暖める。
ヒーリングリリーは光とバフである継続治癒の合わせ技。今までは自分しか回復できなかったが、光で治癒を照射することで体の傷はゆっくりと治り、心も陽光を浴びるかのように癒される……今のこの状況でうってつけのスキルだった。
このダンジョンは基本的に地下、それゆえに鬱屈した気分が蔓延しがちだ。それなのに不足の事態に陥ればそこから精神を蝕んでいくケースも多いことだろう。
「ごめんなさい、タクマさん。私、今まで冒険者学校でもパーティ組んだことなくて……一緒に戦って勝つことに浮かれてました……」
「気にするなとは言わないが、あれは死ぬような罠じゃないだろう?だとしたら次あったとき、雪奈に謝ればいいんだ。俺もパーティ組めない気持ち、わかるから……」
「タクマさん……うわあああああん」
ナーシャは飛び付くように抱きついてひたすら泣き続けるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。