第14話 傭兵オズマ vs 印術師タクマ
声に振り返ると、身の丈程の大剣を背負った男が洞窟の入り口に立っていた。
「安心しろ、そこの女には用はねえよ。他の傭兵はお前が完全に撒いたからな、ここに辿り着いたのは俺だけだ。出てこいよ」
大剣使いが先に外に出て、俺はビスケットを食べてたルナと共に遅れて外に出た。
「俺は傭兵ランクCのオズマだ。仕事を台無しにされた鬱憤を晴らしに来た」
「鬱憤も何もブルックの因果応報だろうが。それにああいうのは長続きしないって知ってたか?俺じゃなくてもいずれは誰かが復讐してたはずだ。依頼主が死ねば余計な仕事はしないのが傭兵じゃないのか?」
俺は元の世界の洋画で聞いたことのある台詞を話しながら時間稼ぎをした。
「そういう奴も多いがな、よく考えろ。傭兵は冒険者と違って月収だぞ?次を探さないといけないから厳しいんだよッ!」
ビスケットを食べ終わったのを確認してルナを装備した。それを見た敵も構えた。
「お前冒険者ランクFなんだってな?俺に勝てると思ってるのか?」
「一応ランクCを倒したことはあるんだがな」
実際は相手が油断してスキルを使い始める前に決着を着けたんだが、こいつはそういう類いじゃないだろうな。こいつが知ってるということはブルック殺害の時にいた二人の傭兵は俺を軽んじていたんだろう。つまりスキルを使われてたら五分だったかもしれない。
「冒険者ランクCと傭兵ランクCを一緒にするんじゃねえ!徒党を組まねえと敵も倒せない奴等と、依頼主のためだけに戦う俺達は個人の力が全然違うんだよ!……そろそろお前も準備が終わったようだな……いくぞッ!」
オズマが突進してきた!俺は距離のあるうちに”炎弾” ”水刃” ”石壁”の順に魔術を放った。
「そんなもの足止めにすらならねえよッ!」
3つの魔術が三振りで薙ぎ払われた。大振りの大剣が目前に迫る。
”魔術障壁”
ルナに備蓄しておいた魔力を解放して大剣を防ぎ、俺は右手に火、左手に水を付与して両手を合わせた!
”自作スキル・レイジングミスト”
水蒸気が辺りを霧のように包み込む、そして俺は森の中に逃げ込んだ。森の中なら振り回しにくいだろう。
奴の大声が聞こえてくる。
「面白いことするじゃねえか!実はお前を殺す理由はもう1つあるんだよ!お前はまだ賞金を掛けられてない、つまりかけられるまでお前の死体を森に隠して、かけられたあとに持っていけば再雇用までは生活できるってもんだ!!」
オズマが森を薙ぎ倒して俺を捜してるようだ。傭兵じゃなくて木材屋にでもなればいんじゃないかと思う。
俺は短剣に風を付与して木を避けるようにオズマに向けて投げる。
「こんな物効かねえぞ!見つけた!”パワースマッシュ”」
オズマが俺のいる木もろともスキルで破砕した。ギリギリで木を飛び退いたが衝撃で吹き飛ばされた。
まずいな、あの大剣じゃ手榴弾も防がれそうだし……隙を作らせるために小技を使っても一振りで突破される。
……じゃあ、こういうのはどうだろうか。
”自作スキル・レイジングミスト”
”下級魔術・石壁”×4
”自作スキル・スワンプカーニバル”
森に再び霧が発生し、オズマが”パワースマッシュ”で霧を吹き飛ばしたところでオズマを囲うように石壁を展開、スキルで硬直しているうちに上から”手榴弾”を4つ放り込んで、さらに地面に手をついて右手に水、左手に土を付与して地面を
お前の力の源は”踏ん張り”だ。あれだけの大剣を素早く振り抜くには強靭な肉体による踏ん張りが不可欠だ。恐らくオズマは壁をスキル抜きの回転斬りで吹き飛ばすつもりなのだろうが踏ん張れなければ意味がないのさ。
俺は爆風に巻き込まれないように近くの木に飛び移る。
ドゴォンという爆発が連続で起きたところで石壁が爆散し、土煙が辺りを覆う。次第に視界が開けていく、見えてきたのは……。
倒れ伏したオズマの姿であった。
……勝った……。
雨が降ってきたので、オズマを両手両足を縛って洞窟に避難した。
さて、雪奈に薬を飲まさなくては。雪奈を起こすと、まだ媚薬が抜けてないのか両手を俺の首に回そうとするので仕方なく……口移しで薬を飲ませた。
薬の効果なのか雪奈に舌を入れられる前に眠りについてくれた。
これは……正気に戻ったら大変だな……。この話題には触れずに無かったことにしよう……それがいい。うん、そうしよう。
翌朝
グオォォォっという音に目が覚めた。音のした方向を見るとオズマが同じ音でイビキをかいていた。
こいつは得物と同じくらい何でも大きいな……。
「お、おはようございます……。この度は本当にすみませんでしたッ!!」
雪奈が外から戻ってくると同時に頭を下げてきた。
「ま、まぁそれもこれもブルックのせいだし、雪奈が無事で良かった」
「それだけじゃなくて……兄さん人を……。ごめ…な…さい……ぅ……」
俺はそっと雪奈を抱き締めて泣き止むまで抱擁した。
「それはいいけどよお。そろそろ俺の縄を解いてくれないか?この態勢結構きついんだよ」
「オズマだっけ?……お前そうしたら襲ってきそうだしな……」
「襲わねえよ!魔物と一緒にすんな!敗け敗けだからな、それにそっちのランクCの嬢ちゃんも相手にしたら勝ち目ないしな」
「は?雪奈ランクC?もうそんなに進んだのか?」
「先日Cになりました。抜け駆けする感じになってごめんなさい……で、でも兄さん強くなりましたし……かっこよくなったし、これから一緒にランク上げましょう?」
かっこよくは関係ないだろう……。それにしてもオズマどうしようか……実際、襲われそうな感じしないんだよな。甘いかもしれないけど解放するか。
「オズマ、解放してやる。あと、10万G渡すからこれでなんとか暮らせるだろう?」
「いいのか?俺が言うのもアレだけどかなり甘ちゃんだぜ?しかも10万って……」
「いいんだよ。別に殺人が趣味ってわけじゃないしな。ほら、これで自由だ。どこへなりとも行ってくれ」
オズマの縄を解いて念のため距離を取ってお金を渡した。
オズマは唖然としてたが、何かに納得したあと大剣の柄を前に突きだした。
「……俺の大剣持っていけ、身体強化できるなら振れるだろ?それと冒険者ギルドであまり説明されてない裏情報も教えてやる」
オズマの話によると、冒険者ギルドには暗殺依頼も同時に引き受けているそうだ。冒険者ギルド内で戦闘行為禁止の理由のひとつが、暗殺者の保護も兼ねているらしい。そしてギルドへの反逆行為を除いてあらゆる犯罪者もクエストを受けれる。ギルド内は領主ですら干渉できないので狙われることもないとのこと。
「一応ギルドの半径50mに入ったら暗殺依頼受け付けに転移できる転移石も渡しておくからよ」
俺はオズマから石を受け取って1つ思った。
「俺は暗殺者になるつもりはないぞ?」
「何言ってんだよ……戦い方がまんまそれじゃねえか。んじゃ!またな!」
こうしてオズマを帰したあと、俺と雪奈は久しぶりに現在のステータスを教えあった。
園田 拓真 Level 13↑ ジョブ 印術師 印術スロット3
スキル
付与印術 触れた物体に属性を付与する (毒・地New・水New・火・風)
補助印術 自身に
パッシブスキル
剣術 C↑ 印術 A↑
園田 雪奈 Level 23↑ ジョブ 剣士
スキル
園田流一之型
園田流二之型 月 雪に繋がる二段目のスキル・満月を模した斬撃
園田流三之型 花 三段目のスキル・花弁と同じ枚数のほぼ同時斬撃(5)New
パッシブスキル
剣術〈異〉A↑ 刀装備時攻撃力up
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※ 自作スキルはステータスで表記されません
※ スワンプカーニバル 地と水を闘気で混ぜて前方に流すことで地面を泥濘状態にする
※ レイジングミスト 火と水を合わせることによって水蒸気を発生させて視界を遮る
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