11. 拝殿にて

 拝殿の中は学校の教室の半分くらいの広さだった。

 板張りで、壁や祭壇ももちろん木の板で、自然の色合いという感じがする。

 そのところどころに金の装飾がついていて、ありがたいというか緊張するというか、やっぱり入ってよかったのかな、ってちょっと心配になる。


 拝殿の奥には仕切りがあって、その向こうには一段高くなったスペースがあった。


「そこが本殿、神さまがいらっしゃるところよ。そっちには入っちゃダメだからね」


 危ない。今、仕切りをまたいで見にいこうとしていたところだった。


「神さまはね、神社にいつもいるわけじゃないの。神世にいたり、他の神社にいたり、現世で氏子を見まわったりしてるわ。で、神さまが神社に立ちよれるように、本殿にはご神体が置いてある。それを依代として神さまは神社に降臨するわけ」


「ご神体ってあの剣のこと?」


 と、のどかが奥を見ながら質問する。


 本殿の奥には祭壇が置かれていて、その上に剣がかざられている。


「そう。あれが姫神さまのご神体よ。ただね、神さまの複雑なところなんだけど、本来姫神さまのご神体は琵琶湖そのものともされているの。でもやっぱり形あるものが神社にあったほうがわかりやすいでしょう?」


「たしかに」


 祭壇に何もなかったらやっぱりさみしいもんね。


「本殿とご神体についてはこのくらいにしましょうか。本題に入るわよ。しずか、拝殿の外に木箱を置いてあるから持ってきて」


「木箱?」


「そう。重くはないけど、落とさないよう気をつけてね」


 拝殿を出ると、階段の上に確かに木箱はあった。


「……何これ」


 木箱はごそごそと揺れている。犬や猫というわけでもないだろうし。何だろう、怪しすぎる。持ってみるとがたがた揺れてとっても持ちにくい!


「持ってきたけど、これ中身何なの!?」


「これはね」


 みちるさんが木箱から取り出したのは大きな日本人形だった。


「うへっ!?」


 思わずのどかに抱きついてしまった。


 それが動いてたの? 元気あふれすぎでしょ!


「ねえ、やっぱり勝手に髪が伸びたりするのかな?」


 のどか、あんたは何でちょっと楽しそうなの?


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