第54話 生きることが罪だと学ぶ
父親は、もうボケている。
自分の誕生日すら解らない。
それを認めるのが怖いから、聞くと話を逸らす。
ずっと、そうやって逃げ回ってきた男だ。
働いたことは無い。
見栄っ張りで、プライドが高い、何もできないクズだ。
もう1年ほど連絡をとってないが、友人にもそういう男がいた。
逃げ回るだけの人生の末路、きっと彼も、私の父親のようになるのだろうと思う。
この男を見ていると思うのだ。
生きるということが罪だと…長く生きれば生きるほどに…その罪は大きく重くなる。
裁く術すらない、生きるという罪。
殺してやりたい…口すら聞かないし、姿を見ることもほとんどない。
それでも、この男が貯めこむゴミ、家に連れ込む野良猫、生きているという痕跡を感じると殺意が沸く。
月に幾度、両親を殺す夢を視るのだろう…
夢の僕は、怒りに身を任せる僕は、咎を感じぬ自由さがある。
この男が汚したトイレを掃除する…本人はトイレに行ったことすら覚えてない。
殺しちゃダメだという理由が解らない。
客観的に、この男を1週間見て、それでも殺していいと誰か言えるのだろうか?
この男の過去を知って、まだ生かす意味はあるのだろうか?
殺すことは罪でしょうか?
殺すことは救いではないのでしょうか?
殺された方も、殺した方も幸せになれるなら…それは罪ですか?
それでも裁かれるんでしょうか?
何も知らない人に罪だと言う権利などあるのでしょうか?
生きているだけで…生きるって保証されるのでしょうか?
誰に?
心など持たない六法全書に人は生存を保証されているのでしょうか?
心あるからこそ、殺せるのではないでしょうか…
僕は殺したい。
この手で、他の何かに任せたくない。
この手で殺したい。
僕が生きる意味は…この男の後始末をするために?
家族にしか解らない殺意がある。
その殺意は罪だと僕は思わない。
殺したい。
殺したい。
殺したい。
殺したい。
それが出来ぬなら…死にたい。
僕の願いは、両親を、この手で殺すことです。
叶わぬなら…今すぐ死ぬことです。
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