第34話 執着

 好きだという想いは特別なのだろうか?

 彼女は言う。

 それは『執着』なのだと…。

 僕の想いは執着、僕は彼女をどう想っているのだろうか?

 愛している。

 抱きたい。

 風俗嬢なのだ、金さえ払えば叶う…だからこそ抱けなくなる。

 愛を金で買えない、その意味を正確に知る人は少ない。

 文字通りの意味ではないのだ。

 金では買いたくない愛があるということを知るということだ。


 経済力がある人に惹かれる、別に悪いことじゃない。

 むしろ当然のことだ。

 幸せは金で買えない?買えるよ。

 健康は金で買えない?金が無いと受けられない治療はあるよ。


 なぜ生きることに、しがみつくの?

 金があれば当然、理解できる。

 金が無いのに…理解できない。


 健康な貧乏より、病弱な金持ちのほうが幸せだと思う。


 例えば、明日、宝くじでも当たって、金が転がり込めば、彼女は、僕の隣にいてくれるだろう。

 でも…僕のほうが、彼女を拒むような気もする。

 それは金で得た彼女、時間無制限の風俗利用と変わらないような気がするからだ。


 金が無ければ逢えないし、金を得たとしても逢わないのだ。

 それでも僕は彼女を想うし、愛している。


 僕の愛は歪んでいる。

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