第30話 止められない

 台風の夜、避難勧告が出ている。

 こんな時にデリヘルというのは営業している。

 そして、こんな時にソレを利用する客というのもいるのだ。


 風俗サイトに台風の中ありがとう。

 そんな嬢のコメントが載っている。


 昨夜、彼女にメールを送った。

「明日、出勤するなら気を付けてね」

 彼女は出勤している。


 こんな日にノコノコ出勤するほうも普通じゃないし、デリヘルを利用するなんて奴は、もう倫理観が欠落している。


 事故を起こすのは勝手だと思う。

 だが、こういう日に自然災害の為に待機している人がいるのだ。

 ハッキリ言えば、風俗の客や嬢を助けるために待機しているのではない。


 なぜ家に居ろ、避難所へ行けと指示が繰り返されるのか?

 身の安全を確保というより、全域をカバーする余力など持ち合わせていないからだ。

 交通ですら制限されているなかで、ウロウロされたら緊急車両の妨げになるからだ。

 そんなことすら解らないのかと…呆れるのである。


 それは…そんなことを思う自分が悲しくなるのだ。


 所詮、風俗なんて身勝手な人間の集まりなのだろうか。

 こんな日に、デリヘルなど利用する客がマトモな人間ではない。

 それを目当てで出勤する嬢も、経営者も、やはりマトモな人種ではない。


 ソレを止める術を持たない僕は…やはりマトモではないのだろう。


 吹き荒れる風は強く、雨は激しく窓を叩く。


 それは僕を責めるように…嘲るように…

 バーカ…バーカと風は鳴く。

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