第19話 てんとう虫

先端へ…先端へ…。

指先へ向かうてんとう虫。


指を下ろせば、くるりと方向を変えて腕を登ってくる。


先端へ…先端へ…。


上ばかり見て疲れないかい?

必死に小さな足を動かして、立ち止まらない。


先端へ…先端へ…。


その先にはなにがあるんだい?


指先を天へかざす。

人差し指の先端から羽を広げて飛び立った。


広い空へ…そので輝く太陽を目指して…。


空へ…その先へ…。


なにがあるんだい?


僕にも教えてくれよ。

必死に足掻いて空へ飛びたてたんだ、それでいいじゃないか…。


地面に僕の涙が零れる…。

地面に滲みこみ、すぐ乾く…そう何もなかったように…。


家に帰ると、年老いた両親がいる。

僕は仕事も無く…生きることも諦めている現実がココにある。


夕暮れを空を眺める。

オレンジの夕立に染まる空…。


あのてんとう虫は、どうしただろう?


少し解った気がするよ…。

てんとう虫は、そこから逃げただけ…。

ココではないドコカへ逃げただけ…。


今を捨てて…現実を置き去りにして逃げただけ…。


今なら解るよ。

必死に足掻いたキミの気持ちが…。

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