第17話 愛したゆえに

愛したゆえに僕は苦しんだ。

 逢えない苦しみを知り

 逢える時間の限界を知る


 愛した人は『風俗嬢』

 僕の見知らぬ誰かに抱かれて金を得る。


 耐えられると思った…心さえ僕に向いていてくれるなら

 逢えない時間が僕を苦しめて…逢える時間でさえ僕は…


 1年…2年…時だけが過ぎて、僕は何も信じられなくなった。

 自分も金を払えば彼女を抱ける。

 だけど、それは出来なかった。

 愛した人を抱くのに金を払うことは出来なかった。


 彼女の気持ちを信じることは出来なくなったいた。

 客でもない

 恋人でもない


「なぜ、僕は彼女に食事を奢っているのだろう」

「なぜ、僕は彼女を事務所に送っているのだろう」


 なぜ…なぜ…

 僕は彼女の何なのだろう?


 何もかも解らなくなっていた。

「もう逢わない」


 幾度か、そんなメールを彼女に送った。

 そして今日も…


 僕は彼女から貰ったキーホルダーを彼女のアパートの郵便受けに落とした。

 僕が唯一彼女から貰ったもの…数百円のキーホルダーだけ…


 とても軽い自分の価値に僕は自らの存在を思い知った。


 愛さえなければ…きっと上手く付き合えただろう。


 愛した故に、僕は…


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