第16話 土竜

 地上で生きられないから…地下へ潜った。

 穴を掘って…掘って…下へ向かって、逃げて…逃げて…


 日の当たらぬ場所へ…その身を晒さぬように


 暗闇に、その身を溶かすように、誰からも、己が誰か解らぬように

 ただ黒く…ただ暗く…


 日から逃げた?

 それでも怖くて、下へ…下へ…

 この土に、その石に、その身を擦りつけて、爪は剥がれて、泥で、血で汚れて…その姿を恥じて、それが悔しくて…

 下へ…下へ…


 暗闇に、その身を溶かすように、誰からも、己が誰か解らぬように

 ただ黒く…ただ暗く…


 滅茶苦茶に掘って…掘って…

 此処が何処だか解らぬように、上も下も…解らぬ闇へ…ただ闇へ


 目から光は消え失せた…

 もとより光など見ることは叶わぬのだから、無くていい。


 暗闇に居れば、光は要らない。


 閉じているのか、開けているのか、自分でも解らなくなった…


 あの日見た光は、まぶたにおぼろに染みついて…


 探しているんだ…在るはずも無い下へ…

 逃げているんだ…逢うはずが無い下へ…


 下へ…下へ…在りし日の『彼女』を探して

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