第15話 いっそ…

「採用を見送ります」

 45歳を過ぎれば、簡単には正社員の職は見つからない。

 面接に行っても、あんな会社にいた人に、ウチのレベルじゃ仕事がないですよ。

 なまじ、社員の多い会社に勤めていたことが、田舎では足を引っ張る。

 当社の規模じゃ、浮いちゃうんですよ。


 田舎の正社員の給与では、生活が苦しい、そんなレベルまで自分を落としても、結局、給与面で行き詰る。


 所詮、サラリーマンなんて会社という柵を出たら、何にも残らないのかも知れない。

 年齢と経験は可能性を奪うだけ…。


 結局、派遣やパートを掛け持ちして、正社員以上の給与を得るしか道は無いのだ。

 不安定な日々…もう死んだ方が楽だと思える。


 自分で選んだんだろうか?


 こういう状況になるまで、気づかなかった。

 中途半端な自分のスペック。


 恨めしいと思う。

 何をやっても器用に熟せる、それは便利なだけ。

 結局、何にも出来ないのと変わらない。


 中途半端な才能なんて残酷なだけだ…。


 いっそ無い方がいい…自分に期待しないでいいのだから。

 いっそ無い方がいい…自分の存在など誰にも何処にも必要とされないのだから。


 いっそ…。

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