第13話 終章
風俗嬢と知り合って3年が過ぎた。
恋人にはなれず…ただ時が流れて…人生を踏み外した僕は、社会の底辺で生きている。
自分が時給で雇われるとは思ってもみなかった。
年収は1/4になり、中年フリーターとしてラブホの清掃員として深夜働く惨めな日々。
彼女を金で呼ぶ身から、食事に行く仲になり、金が尽きた今では抱くどころか、逢うことすら躊躇うところまで落ちぶれている。
「逢いたい」と誘われても、それすら拒まなければならないほどお金も時間もない。
心も擦り減る、何も考えずにただ、他人の情事の後始末をする日々。
億単位の金を扱っていた…あの日々に戻りたい?
今やソレすら解らなくなった。
僕がバイトを始めた頃、クビになったバイトがいた。
「あの人辞めたの?」
客として彼女を呼んだのだ。
少し前に彼女に言われた。
同じ好きになれなくてゴメンね。
振りかえれば居てくれる、そんな関係になりたいとも言っていた。
僕は…普通に彼女を愛していたかった。
他の男に抱かれていても、僕は彼女を愛していた。
僕は振れることすら…ただ逢うことすらできなくても。
彼女は、僕に聞いてくる。
「あの人、辞めたって言ってたよ」
それは、あの男に抱かれたよ、と言っている。
僕の気持ちを知っていて、平気で聞いてくる。
悪気なんて無い。
ただ興味があっただけだ。
好きの差がある。
そのメールが…とても僕には耐えられなかった。
自覚した。
僕は彼女をどうしようもないほどに愛している。
でも彼女を愛するには、足りないものが…欠けているモノが多すぎる。
自分の心に『愛』を自覚した日…僕は『恋』を失った。
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