第6話 咲かない華 綺

不恰好に伸びる……いや伸びてきた。

要領がいいとは思えない。

でも、その姿は美しいと思う。


桜は咲けば…皆が喜ぶ。

期待に応えるように咲き誇る桜には、文字通りの華がある。

人はそれに魅了され…ときに正気を失う。

魔力とも称される魅力がある。


薔薇は全ての視線を自らに向ける、それは魔性と呼べるほどの美しさ。

うかつに触らせぬようにトゲまでもつ、だがそれすらも美しい。

誤って指先に刺さっても、自らの血を与えているような錯覚に陥るほど。


コイツにはそんなものは無い。

でも気高く、その姿は僕の心に響く。


もしも…コイツが花を咲かせても、誰も気に留めない花だろう。

もしも…花に気づいても、笑われて馬鹿にされるだろう。


だけど…僕は、いつか花が咲くような気がしてる。

だから…僕は、いつか花が咲くよう願ってる。


でも…コイツは魅せるために咲かせるわけじゃない。

自分のために花を咲かせる。


魅せたいわけじゃないよな……。

ましてや見られたいわけでも……。


でも…僕は……僕だけは……。

ホントは隣になんか並べないほど、僕は弱い。

いつか花を魅せてほしいよ…。

誇り高き名も無い花を。

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