第2話 紅 幸子は恐怖する。
私はスマホを片手に家中をうろうろした。
ドアが開き夫である『紅真人』が帰ってきた。
「ただいま」
私は玄関まで出迎えにいった。
「響子は部屋にいるのか?」
真人は革靴を脱ぎリビングに歩きながら言った。
「それがまだ帰ってないんです」
「これは帰ってきたら怒らないとな。こんな遅くまで出歩いて」
私のスマホのバイブレーション機能が作動し、電話の着信を知らせた。
「誰からだ?」
「響子からです」
「噂をしてたら何とやらだな」
「そうですね」
スマホに表示されている緑色の受信マークをタップし、スマホを耳に当てた。
「もしもし響子。遅いよ。何してるの。早く帰ってきなさい」
『もしもし。紅響子さんのお母様ですか?』
声は響子よりも明らかに低く、ボイスチェンジャーを使っているようだ。
「そうですが…。そにらはどちら様ですか?」
『あ、名乗るのを忘れていました。私はあなたの娘さんを誘拐したものです』
「え、誘拐…」
『はい。今から要求を言いますのでメモの用意をお願いします』
「はい」
私は近くにあったメモ用紙とペンを用意した。
「準備できました」
『それじゃあいいますよ。明日の15時30分までに南公園近くの公衆電話の中にアルミのアタッシュケースに1億円をいれておいて置いてください。娘さんの解放はお金の確認後に連絡をします。すぐに決められないと思いますので明日の10時頃にまた連絡させていただきます。そして最後に嘘でないことの証明に娘さんの声を聞かせます』
そして、私の耳にはいつも聞きなれている響子の叫び声が聞こえた。
『お母さん助けて!お願い!早く!』
また低い声が聞こえた。
『それでは良い返答お待ちしてます』
プープーと切れる音がした。
私は言葉は理解できているのに、頭はまだ理解できていない。
「響子はなんて?」
「誘拐された」
「え、なんて?」
真人も理解できていないのだろう。
「響子が誘拐されたの」
「なんだって!早く警察に電話しなくては」
真人が警察に電話して、警察が来るまで私はその場に立ち竦んだ状態でいた。
刑事さんに手を招かれるようにされてソファーに座った。
「今日、娘さんはどこかに行くなど言っていましたか?」
私が座って開口一番、刑事さんが私たちに聞いた。
「今日は河原町の隠れ家喫茶店を友達に教えてもらうって言ってました」
「友達と言いますと?」
「詳しくはわかりません」
「なら、犯人はなにか要求しましたか?」
「1億円を明日の15時30分に南公園近くの公衆電話の中に入れろと言っていました。そして、明日の10時にまた電話するって言っていました」
「そうですか。先ほどから奥様しか話ていませんが、それはどうして?」
さっきから一言も話さなかった夫がついに口を開いた。
「それは電話が掛かってきて妻から『誘拐された』としか聞いていなくて、なにも分
からなかったんです」
「それはたいへん失礼しました。すこし疑問に思いましたから。よしお前ら聞いたな。逆探知機の用意をしろ。同時進行で紅響子さんの小中高の友人関係を洗え。
いいな!」
「「「「「「「「「はい」」」」」」」」
このことは『紅響子誘拐事件』として捜査が進められた。
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