第2話「Q:始まりの街って? A:ああ!(一回目)」

 ……と、いう訳で僕は今、異世界にいる。


 中世風の街。その大通り。石畳の道の真ん中で、尻餅をついて。


 え? フラグはどうした? 死地の真ん中にいるんじゃないの? 

 そんなものは元から無い。強いて言うならば、市街地(「し」がい「ち」)にいる。どうだ、完璧だろ。


 それよりも転生してないじゃないか、って?

 ステイステイ。待てよボーイ(ポプ〇ピピック)

 

 きっと、女神様がミスったんだ。あのおっぱいに免じて許してやろう。

……うん。次あったら揉みしだいてやる。


 だが、2話目を読んでいる時点でお気づきだろうか。

 貴様は既に罠にかかっているのだよ!(罠カード発動「狡猾な落とし穴」)

 この作品が真っ当に転生すると思っていたのか? 馬鹿め!(遊〇王伝統の顔芸を披露しながら)


 ――ってな感じで普通に転移して、ひょろひょろな身体と醜い顔を大衆に晒す。そんな拷問を受けている最中だった。


 道行く人々が僕を見るのが分かる。それもそのはず。異世界のど真ん中で、日本のくたびれた部屋着を着た青年を不思議に思わないはずがない。なにせ僕意外の人間の服装は、布を重ねたような服にベルトを巻いてブーツをはいた男性や、白い布で作ったワンピースのスカート長いやつ(語彙力)を纏った女性ばかりなのだ。


 ――っと、ここで恐ろしく速いテンプレ。俺でなきゃ見逃しちゃうね☆


 ・テンプレ;【取り敢えず中世】


 多分ここはア〇セルとかいう名前で、円形の街なのだろう。そういえば、ログ・ホ〇イズンにも似たような街があったような無かったような。

 きっと遠くに見えるお城に足を運ぶ羽目になるんだろうなぁ……(遠い目)

 などと余計なことを考え始めては霧がないので。


「えっと、ここが異世界ってことでいいのかな?」


 立ち上がりながら尻についた砂埃を払う。

 感想は「まるでゲームの世界だな」だ。


 石畳の道。煉瓦造りの建物。真っすぐに伸びる街道と、それに沿うように等間隔にならぶ街灯。遠くには真っ白なお城も見える。街道には商人たちの店が並び、大いに賑わっているようだった。極めつけは日本人じゃない西欧とかそこら辺の顔の人々。あっけにとられるのも無理は無く、平たい顔族が温泉に入ってなんか面白い顔してる。って罵られてもいいくらいには見蕩れる。


「わぁ、すごーい(フレンズ化に伴う語彙力の忘却)」


 あっ、馬鹿にはしてないからね? リスペクトだよ。漢字で書いたら「尊敬」。どぅーゆーあんだすたん?

 OK。

(私はきゅるるシファーさんには屈しない。ついでに制作陣にも)

 表現は自由である。でも、尊厳を殺すべきではない。


 というわけでこんな感じで進むこの作品を許してください! 

 ……さて、免罪符を得たところで僕は街の散策を始める。


「まずは何を……って」


 そこまで考えて、この作品の決定的欠点に気が付く。

【スローライフ路線が決定しました】

 と、頭の中の大賢者さんが言っている気がした。


「も、目的がない……」


 そう、目的がない。

 異世界召喚と言えば、巻き込まれて魔王を倒せ! だったり、勇者になったので世界を救ってください! だったりするのにも関わらず、僕は生憎の王城スタートではない。


「うぅ……、これじゃただのホームレスじゃん……」


 実際。傍から見ても、現実的にもそうなのだが。


 あのオ〇イーヌ、もとい女神さまに大量のお金とか言っとけばよかった。

 失敗した。大いに、盛大に、イデオンくらいに(伝わるとは思ってない)


「やらかしたー……」


 後悔は後にたたない。だが、問題はそこじゃなくて。

 男の子なら夢見るじゃん。異世界行ったら剣と魔法やん? ってか、身体強化も何もしてもらってないじゃん。まぢ一般人。まぢやばたにえん。


 有頂天、転じて絶望。

 この世界でも落ちこぼれなのか。

 ――嫌だ。手に入れた二度目のチャンスを、棒に振るわけにはいかない。


「これからどうすれば……」


 周りの街の人に聞く――これは難しい。

 理由その1、コミュ力の欠如。

 こちとら昨日までヒキニート。会話など画面上でしか行っていない。話しかける相手と言えば嫁【画面上】か、友人【同じく気持ち悪いデブのオタク】と「デュフフフ」とか言ってるだけだ。


 そんな奴はいないって?

 いるんだよ。それが。

 自分の声聞いたことあるか? キモイぞ。――まぁ、僕はイケボだけどね(CV:松〇禎丞)


 理由その2、言語が通じない。

 日本語は基本通じない。

 道行く人の声を聴けばわかるのだが、明らかに母音から違う。

 例えば、道行くちょび髭生やしたオジサンが、「おっぱいブルンブルン!」とか言ってたら面白いのだけれど、そんなことはなく。アラビア文字を詠唱されるくらいの感覚にしかならない。


「詰んだ。完璧に……」


 四面楚歌。しかり八方塞がり。

 異民族として言葉を覚えるルートもあるのだろうが、そんな時間はない。ヒキニートとしてのプライド(そんなもんはない)がそれを許しはしないし。

 何よりそんなことをするのだったら、


「ってなわけで」


 ここで登場。

 ちゃらららっちゃら~(ドラ〇もんの秘密道具のBGM風)


『現実改変能力~! (のぶ代Ver)』


【――説明しよう。現実改変能力とは、文字通り現実を捻じ曲げる能力である。チートの中でもチート。概念とか気持ちとか時空とか。めんどくさいから割愛! つまり、何でもできる。自らが神に慣れちゃう優れモノなのだ‼】(天の声。cv大〇芳忠)


 あっ、お疲れ様です。有名声優の皆さま。


「―― 翻訳トランスレイション!」


 パンッという破裂音と共に、薄い膜のような光が地を駆ける。次第に、ただの雑音だった喧騒がはっきりと聞こえてくるようになった。


「……おおー、すげー」


 これが現実改変能力。

 さっきまで分からなかった言語が丸わかりだ。


「ねぇねぇ、あの人ー」


 なんて、無邪気な幼女の声が聞こえ振り返る。僕を指す指は小さく、見た目まだ10歳にもならないくらいだろう。隣には母親らしき姿も見える。


「あの人ー、ブサイクー」


 なっ――。


「こら、人を指さしちゃいけません! ほら、あっちに行くよ!」


 ……何この理不尽。


 ただしイケメンに限るは、どこの世界線でも有効らしい。

 因みに、改変した内容は『僕が、この世界の言語を理解、使用できる』だ。これは大きな第一歩。そこを何ページかに渡って苦労せず。一行くらいで終わらせてしまうのがチート。何という罪か。


「ふっ、罪な男だ(逃避)」


 僕は青空を見上げ、幼女に傷つけられた悲しみを昇華していく。

 なんかもう、心が叫びたがってるんだ。

 そんな気がした。

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