「異世界転生」ってタイトルに書いとけば、どうせ見てくれるんでしょ?

felt031

第1話「Q:どうせ転生するんでしょう? A:そりゃあね(転生するとは言ってない)」

「はい。あなたは転生することになりました」


 よくあるシーン。

 何もない真っ白な世界。もしくは部屋。または雲の上。決して、ちゃぶ台とか家具とかはない。


 唯一救われているのは目の前にいるのが巨乳の女神様で、目の行き場には困らないくらい注視できることだ。


 え? 普通は逆? いやいや、見ろよ。もう死ぬし。

 喋っているのは僕。よくある心の中ってやつ。時折口には出すけれど、ガサツな声がほとんど。だってヒキニートだもん。人と話さないんだから、常識。常識。


「はぁ……そうですか……」


 何て言いつつ早速喋る。

 体はもやし、心はイケメン。その名は……なんて名乗れるほどカッコイイ名前は持ってない。ついでに言えばヒキニート。量産型のファッションが一周回って新鮮に見える服装に身を包んでいる。真相は想像にお任せする。そして多分、言わなくても伝わる。


 頷きながらも視線はおっぱいだったり、絶対領域だったりする。それはもう肌を出している女神様が悪いとしか言いようがない。ありがとうございます。


 本能に従順なのは主人公に足りないものだと本当に思う。男はみんなドスケベだ。死人に口なしというのなら。目くらいはフル稼働してもいいだろう。


 そんな倒錯にも気づかない柔和な女神様は、知らずのうちに二房の女の武器を寄せながら、頬に手を当てる。


[実はこちらの手違いがありまして……」


 ほう、それはでかい。じゃなくて、酷い。


 何なの? 手違いとか。管理雑だろ。それも死因がある程度決まってんの何?

 トラックとか、電車とか、トラクターとか。 


 僕が憤慨を起こしていると、女神はさらに追撃を加える。


「トラックに轢かれてあなたは死んだのです」


 あっ、例に漏れない僕凄い。

 むしろ何億分の一で奇跡。いや、これはテンプレか。


「なるほど……」


 などと落ち込んでみるも、驚いたほど納得した表情が顔に出る。


「それで……ついでといってはなんですが……あなたに望む能力を与えようかと思うのです」


 出ました常套句その三。おずおずと胸を寄せる女神以外ならぶん殴っているところだ。大きいは正義。再三ありがとうございます女神様。


 えっ? 一と二がないって? いやいや、上に二つあるだろ。

 僕の予想では、少なくとも十くらいまである。いつ出るかは知らないけれど。

 これは予言。というか一つは僕が言う。


「じゃあ、現実改変能力で」


 ハイ。これ常套句その四。いわゆるチート。

そして、自分で回収するスタイル。

 これは安全に異世界を過ごすという点から見れば仕方がないこと。


 ……というか、ちゃっかり異世界転生受け入れる僕も、もう色々毒されているのだが。


 まぁ、それも脳死が基本の異世界転生ものでは仕方ない。

 理解できないなら、女の子とイチャラブできるスキルでも手に入れて、テクノブレイクで死ね。そのほうが第二の人生は楽しめる。

 はたして、目の前の女神にも「どうせなら貰っちゃおう精神」が通じるのかは分からな……


「あっ、わかりました」


 いや通るんかい! 緩いな女神。というかそれだけ? って顔されると逆に不安になるから辞めて。


「じゃあ、今から転生させますからね?」


 確認を取る辺り、ここらで女神を連れていくのもアリなのかと思うが、流石にそれは身が持たない。どこぞのダ女神のようになられたら困るし。


「てやぁ!」


 やだ。何その可愛い生き物。あざとすぎません? 別に、清涼飲料水ちゃんのことじゃないよ。ごめんなさい。


 というか、捻くれた主人公みたいな文体でええんか? この小説。

 もう劣化じゃね? 

 いやもう割り切ってるんで、ええんです。これは作者の言葉。

 なんて思っていると、魔法陣のようなものが僕の身体を取り囲む。


「おー、すげー」


 素直に感心。魔法なんてあるんだなぁ。なんて綺麗な光に見とれてると、ふと違和感を覚えた。

 身体が光の粒に包まれて、次第に分解されいるのが分かる。例えるならトラ〇ザム。多分伝わらない。そして僕も正しくは知らない。

 

なら例えるな? 知ったことか。洋画見れないって言ってんのと同じだ。要は雰囲気。あーゆーあんだすたんど?


「それでは、行ってらっしゃい!」


 注意、アトラクションではありません。 

 まぁ、なんにせよ。ここからが始まり。


 ……どうか転移先が、死地でありませんように。


 願ってから気づく。


「あっ、これフラ――」


 言い終わる前に、すべてが一度暗転を迎えた。

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