ダーティーホワイトエルブズ ~現代に転移して魔物退治人となった魔力ゼロのエルフは誓う。クズ野郎で転生チートスキル【主人公属性】を持つ弟に死を、と~
第113話 「恋人たちへの距離(でぃすたんす)?」…えんじょい☆ざ『異世界日本』編
第113話 「恋人たちへの距離(でぃすたんす)?」…えんじょい☆ざ『異世界日本』編
※107話の続きになります。
*****
「クラムさん。クラムチャウダーさん。
「大丈夫ですよう。フェットチーネさん心配しすぎ」
「アイツの
「もう、本当に大丈夫やって。それじゃフェットチーネさん、学校行ってきますね〜」
あれからフェットチーネさんは毎日のように私達の部屋に来て、私のことを心配してくれます。
有り難いのは有り難いんだけど、ちょっと重いかなぁ〜……。
いやでも本当、ミトラさんがそうやとは思わへんかったなあ。まだ実感
フェットチーネさんの旦那の弟で、性格最低なDV男だなんて信じられへん。
というか、ブランちゃんも知らへんかったんやろか、ミトラさんのお兄さんがフェットチーネさんの旦那さんやったって。
「どうしたクラムチャウダー。俺の顔に何か付いてるのか?」
ついマジマジとミトラさんの顔を私は見てしまう。
そしてそんな私を
私は慌てて照れ隠しを
「え? ああいや何でも無いねん。相変わらずミトラさんはエエ男やなあって」
「フッ……。おだてたって何も出ねェぞ?」
「はいはい」
最近は住んでるアパートから少し離れた場所でミトラさんと落ち合っていたのは、ママからの依頼がバレないのには好都合だ。
そういえばもうすぐ期末テストやなあ。
昼と夜のダブルスクールやから大変や。
そうボンヤリと考えながら道を歩く。
ミトラさんは例の黒い剣を、私が作ったゴルフバッグに入れて肩に担いでいる。
一度、私が興味深げに観察しようと近づいたら、凄い
これは魔法の剣で危ないシロモノなんだーって。
「そういえばもうすぐクリスマスだな」
「へ? クリスマスって何でしたっけ?」
「……あー。何というかアレだ。クリスマスなんてのは正直どうでも良いんだ。まぁ深い意味は無いんだが、たまには食事でも一緒にどうかな、とな」
私は小首を傾げてしばし
そしてポン、と左の手の平を右のゲンコツで叩いた。
それから右の人差し指を立てて口元に持っていき、
「もしかして、デートのお誘いってヤツですかあ?」
ミトラさんは表情を出さずに、真剣な目つきでこちらを見つめた。
朝の光がキラキラと光って、雰囲気はそれなりに割り増しになっている。
「まあ、お前と会えたのも何か運命的なモノを感じるしな。それに学校の勉強も頑張ってる。だからたまには、だ。たまにはな。食事でも一緒にして
『運命』そうミトラさんに言われた時に、ゾクりと背中を走るものがあった。
そして胸に込み上げる何か。
「ふーん」
私は短くそう言うと、人差し指をそのまま
しばらくそうしながら歩いて、とりあえずは無難な返事。
「ん〜。学校とかブランちゃんの予定とかを確認してからやないとな〜。まぁでも、すぐには返事出来ひんけど、前向きに検討させて
*****
「『“彼”から、クリスマスデートのお誘いあり』、と」
専門学校の休憩時間に、そうSNSでメッセージを打つ。
すぐにブランちゃんから、返事が返ってきた。早っ!
──ヤバない?
フェットチーネさんもそうやけど、ブランちゃんも心配症やなぁ。
そう苦笑いしながら、こちらも返信。
『大丈夫だってば。あんなんに引っかかる女と違うよ、私』
──ホンマに気ぃつけや。
『了解』
最後にブランちゃんにそう返信を打って、私は次の専門学校の授業の準備を始めた。
今朝のミトラさんを思い出す。
背中に走るゾクゾクしたものと、胸に込み上げる何か。
私は思わずため息をついた。
いややわぁ。
*****
「あ〜しんどいわ〜〜〜〜」
今日も今日とて混み合った電車で帰るのツラたんよ。次に止まる駅で、座席が空かないかしら。
そう疲れた思考と共に、溜め息をつきながら独り言ちる。
隣を見ると、相変わらずムスっとした表情で吊革を持つミトラさん。
私はこっそりその横顔を
まぁ、人間基準ならかなりのイケメンではあるわよね。
実際、電車に乗ってる女の人は、大抵がミトラさんにチラチラと視線を送っている。
大体の女性が、口元を
私の様子に気が付いたミトラさんが、
「どうした、俺の顔をジロジロ見て」
「え? ああ、いやあ。やっぱりミトラさんってイケメンやなぁって」
「ふーん」
「エルフなんを差し引いても、かなりイケてる思いますよ。女の人に不自由した事無いんと違います?」
「さぁな。どうでも良いだろ、そんな事。
ゾクっ。
更に正面を向いて表情を抑える。
「そ……そそそそそそそう? 気のせいとちゃう?」
視線だけをもう一度ミトラさんに向ける。
ミトラさんはイヤらしい視線を向けながらニヤニヤと笑っている。
女の人を捕食する時の表情なんだと、頭の中の冷静な部分では理解出来る。
普通の男の人なら、女性に生理的嫌悪感を与える表情だ。
でもミトラさんならそんな表情さえも、人間の女性には魅力的なイケメンオーラを感じさせるものになるのだろう。
そして本人もそれを、自信たっぷり十二分に理解している顔だ。
それが証拠に、ミトラさんをチラチラ見てる女の人が私に向ける視線の
いややわぁ。
それから私達二人は、何も言わずに黙りこくったまま、電車に揺られ続けた。
*****
アパートの近く、朝に合流している地点まで来た。
今日ばかりはすぐに別れの
ミトラさんも黙って私を見つめている。
やがて私は意を決して話を切り出した。
なけなしの勇気を振り絞って。
「あー……えっと……その……。み……みみみみみみミトラさん、あのそのっ!」
ミトラさんは黙って私を見ている。
ニタニタとイヤらしいのに、魅力的に感じさせると自分で確信している、その笑顔で。
私の背筋にゾクゾクを与えて、胸に込み上げるものでドキドキさせる、その態度で。
「あ……朝のお誘いですけど、その……予定空いてるので、よろしくお願いしますっ!」
それを聞いたミトラさんが、勝利を確信した顔をした。
そして、今まで見た事無いほどの機嫌の良い笑顔を浮かべて言い放った。
「はははははは! 任しとけ! きっと忘れられない夜にしてやるぜ! 約束する!!」
私はすぐにミトラさんに背を向けて、自分のアパートに向かって駆け出した。
ゾクゾクとドキドキが止まらない。
最後のミトラさんの表情を思い出す。
私をモノに出来たとの確信に満ちた、自信に
私も、全てがガッチリと噛み合い組み込まれたような感覚を覚えながら、ドキドキしながら部屋に駆け込んだ。
いややわぁ。
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