第13話 襲撃と迎撃

 オレンジと、朱と、白と、淡い青とが混ざり合った、美しい朝焼けの中。

 巨大な黒い鳥にまたがった、銀色の戦士たちは、いっそ幻想的で、まるで神話の一ページのようでさえあった。


 まだ低い位置から照らし出す陽光が、彼らを正面から照らす。


 迎え撃つは、黒光りする鋼の兵器と、黒い戦闘服のエヴァナブルグ自衛軍。


 今まで訓練でしか行ったことのない、対大多数の戦闘。

 ましてや、対空戦だ。

 迎撃ミサイルの狙いを定める狙撃手も、手の震えを抑えられない。


 轟音と共に放たれた迎撃ミサイルは、クロガモの群れに向かってまっすぐに飛んでいく。

 しかし、クロガモたちは上下左右に、文字通り目にも留まらぬ速さで回避して前進してくる。


「撃てーーーー! ひるむなーーーーー!」


 将官が叫ぶ。


 ゴーグルで表情も伺えないエヴァナブルグの軍人たちの、手の震えは、武者震いか、恐怖か――その恐怖は、生命を奪われる恐怖か。それとも。


 生命を奪う恐怖か。



 ついに、クロガモたちがエヴァナブルグ上空に到達。

 行政区画に狙いを定め、次々に落下してくる。


 弾丸のごとき速さで、海岸線の対空ミサイルたちを、一際巨大なクロガモが、巨大なハンマーに変えた片羽根で横なぎに破壊していく。

 その背中の銀色の戦闘員は、容赦のない散弾銃の銃撃を放つ。

 銃撃に備えた装備のエヴァナブルグ自衛軍の軍人たちは、傷は負わずとも、その銃撃でよろめく。そこに、対空ミサイルごと巨大な棍棒になぎ払われる。


 虫けらのごとく蹴散らされていく海岸の防衛線に、次から次へと、低空飛行のクロガモの戦士たちが、背に背にシゼルカンドの戦士を乗せて上陸していく。



 資源管理局局長が、部下である班長に抱きかかえられながら立ち上がって、窓の外を見たときには、地獄絵図のような戦場が、眼前まで迫っていた。

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