第11話 順子の作戦

「これから、何する。新しいビデオでも借

りる」

「ちょっと暑いからシャワーでも浴びたい」

彼女の作戦に、はまってしまった。

家に戻ると真一が、順子に

「どうぞ、準備できたよ」

順子が部屋から、

「お先にどうぞ」

真一も汗をかいていたので、直ぐに服を脱ぎ

シャワーを浴び、浴槽にも入った。休みの昼

間の入浴は百万両と思っていたら、

「遅くなって、ごめんなさい」

やられたと真一は、思った。


シャワーを順子が浴びてるうちに、出てしま

おうとすると、後ろから抱きついてきた。

「順ちゃん、何度言ったら判るの」

「好きなんだもの、我慢できない」

「来月だから、もう少し我慢して」

お得意のイヤイヤ作戦だな。と思い、

彼女の胸に後ろから手を回して、触ってみた。

そしたら、彼女の腕の力が、弱くなったので

振りほどいて、出ていった。

「嫌いなの、私のこと」

「大大、大好きです。本当に」

「なぜ、抱いてくれないの」

「女房や娘との約束、一周忌までは、何もし

ない。との約束、貴方が嫌いじゃない。それ

なら、家にも入れない」

「寂しい」

「後で、抱きます」

「なんて言ってくれたの、もう一度言って」

「後で、抱きます」

「うれしい、本当にうれしい」


真一は、さっさっと体を拭いて、部屋に戻っ

てきた。三、四分してから、順子も部屋に戻

ってきた。

「さっきのこと、本当でしょうね」

「本当さ、後でね」

順子は、全身から、うれしさを表現していた。

「う・れ・し・い・」


「私もハッピーエンドになりたいわ」

「順ちゃんなら、幸せになるんじゃないの」

「他人事、真ちゃんとのこと」

「まだ、三,四年かかる、先のことだから判

らない」

「どうしたら、いいの」

「あせってもしょうがない。時間が解決する」

「信じていいの、本当。ずっと好きになって

くれるの」

「だから、何度でも言っていたでしょう。

感じが良くて大好きでした、って。まさか、

こんな展開になるとは、思わなかったけど」

「有難う」

「二人の子供の結婚が、片付き、仕事がう

まくゆき、甥っ子に仕事を任せて、そした

ら、我々も」

「本当」

また、体を摺り寄せ、手を回してきた。暫

く、そのままにさせていた。順子の額に軽

く真一がキスをした。

「こっちに来て」

順子が言うと、判ったと真一も横になり、

その脇に横になった。メガネをはずして、

彼女を軽くだきしめた。


彼女は、今まで以上に擦り寄り、接触を楽し

んでいた。真一は、娘や女房との約束もあり、

それ上のことは、しなかった。三、四十分後

真一から、

「お茶でも飲もう。」

「もう少し、このままにして。」

「判った。」

真一も無理強いはせず、好きなようにさせて

いた。クーラーも効いていたけど、二人の熱

で二人は、再び汗をかいてしまった。それで

も、二人は、抱き合ったまま、判らないうち

に二人とも眠ってしまった。気づいたとき

には、二時間くらい経ってしまった。

「お茶入れるよ」

順子も眠気と接触の両方の感覚を持ち、ゆっ

くり台所にきた。

開口一番、

「人生一番の快感」

「大げさだなー」

「本当なんだってばー」


「順ちゃんは、沢山もてたような気がするけ

ど」

「タイミングの問題です」

「お茶のんでから、ホームセンター覗いてみ

る」

「真ちゃん、急に悪いけど、日野に行って

きます」

「それは、構わないよ」

おちゃを入れて、順子にすすめた。

「今まで、自分の気持ちが、はっきりして

いなかったけれど、今日ではっきりしまし

た」

真一もゆっくり、お茶を飲み、さっきの行動

を確認していた。娘に後で、追及されるから

だ。順子は、お茶を飲むと直ぐに、荷物をま

とめにかかった。両親に報告したくなったの

だ。好きになった人ができたことを。

「準備できたよ、駅まで一緒に行って」

「判った」

「今月は、会がないみたいだから、来月また

きます」

「皆さん、元気ならいいけどね、やぶへびか」

自分の高齢さを棚に上げて、若い人達の心配を

している。

「それじゃ」

改札に順子が入ると、いつまでも、こちらを振り

向いているので、直ぐに胸に手を当ててカード入

っているのが、判ったので、改札口を通り彼女に

近づいた。上まで一緒に行った。総武線に乗るま

で、ホーム上に居てあげた。ドアが閉まり、閉じ

ても彼女は、じっとこっちを見ていた。こちらから、

ずっと手を振り続けて電車が発車しても、振り続け

ていた。その時、携帯の音が鳴った。祥子からの

電話だった

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