第9話 順子、真一の横に寝る。
「気持ちだけ、戴きます。お休み」
真一の腕をつねって、
「お仕置き」
「静かに、寝ようね」
「本当に、つまんないんだから」
「だから、若いのにしておけと言ったでしょ
う」
あわてて、順子が、
「バカな女の独り言」
「あっそうなの、お休み」
直ぐに、眠りに入った。
年とってくると、朝早く起きるというけど、
今は、五時半から六時くらいが、真一の
起きる時間だった。
いつもは、起き抜けに食べるのが、子供の
時からの習慣で、それで父に、よく怒られた。
「今日は、朝三人で食べよう」
と、紅茶に豆乳を入れて、クッキーを
二、三枚食べていた。ゆっくり新聞を読ん
だ。
「食事できたよ」
と二階に声をかけた。
二人とも、一緒にパジャマのままで降りてき
た。出来た食事見て、
「おいしそう、おいしそう」
と連呼していた。
「祥子は、友達と遊んで、泊まってくるのかな」
「そう、夜の食事もお願いね」
「気分が乗らないときは、外で食事するから
大丈夫」
「了解。」
順子が意地悪な言葉を祥子に
「ひげの生えた、お友達かな」
真一が、
「生えていても、いなくても、どちらでもいい」
祥子が、順子に
「きついパンチ食らったわ!!」
「調子に乗って言い過ぎた」
そこまでと言って、真一が順子に
「今日のリクエストは」
「特別ないです。真ちゃんといるだけで幸せです」
「ご馳走様、ハッピーね」
「祥ちゃん、悪いわね。お父さん戴くわ」
「のし付けて差し上げます」
「やめろ、二人とも、お菓子じゃないんだから」
「ごめん、ごめん」
と祥子が言うと、
「お菓子だから、ふたを開けて食べちゃう」
と順子が言うと、真一が、
「食べられちゃまずいので、他の家に回します」
「私の手でギュット抑えておきます」
祥子が、
「お熱いことで」
順子が、
「熱くて熱くて、ヤケドしそう」
「再び、ご馳走様」
祥子が、
「じゃあー、着替えて出かけてくる」
といって、祥子は、二階にあがった。
ちゃちゃっと、皿を洗って、真一は、順子に聞いた。
「何飲む、コーヒー、紅茶、日本茶で」
「それじゃ、コーヒーで」
二階の祥子にも声かけたけど、祥子は、飲ま
ないと言ってきた。
「はい、コーヒー」
真一は、ミルク、砂糖に、豆乳を出し、
「何入れる」
「ミルクだけもらうわ、真ちゃんは」
「豆乳を入れる、ミルクは合わなくて」
順子は、昨日の続きを言ってきた。
「もう一つのものは、何」
「それは、会社に来ていた営業の話。」
「どういうこと、もっと判るように」
「女性営業で新妻の人が、納品に来ていて、
兄嫁見て、ほくそ笑み、奥さんですか。の
顔をしたので、こわくなった」
「ダーリンまさか、ないでしょうね」
「あるわけないでしょう、仕事関係なんだか
ら、まさか」
それ以上の部分もあったが、また、順子がカ
ッカするので割愛した。
「留守にすると、油断もすきもありゃしない」
女房気取りでしゃべってくるので、真一は、噴
出すのを押さえるのに苦労した。
祥子は、支度して下に降りて、二人にあいさつ
して外に出て行った。
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