第16話
「遊びに行こうぜー、なァーいいだろ!」
「ああいいぞ、買いたいものもあったし」
俺はあの地獄みたいな木材加工の作業を終えボブのご飯を食べた後に体力に余裕が残っていたため暇つぶしにラミスの誘いに乗り遊びに行くことにした。
材木加工をラミスと俺で10日ぐらいしているがやはり時間が経てば体が適用してくるので最初は筋肉痛と魔力切れで動けなくなっていたが今ではそんなことなくっていた。
「おいおい、やっぱりドラン領の貿易都市はいつ見てもすげなー!」
「恥ずかしいから、そんなに興奮すんな」
ドラン領の中心にある学園を囲むように栄えている貿易都市を適当に俺たちはぐるぐると回っていた。
ところどころで「お待ちどうさま!」とか活気がある店を切り盛りしている人たちの声が聞こえてくる。
しかし興奮するのはわかるがラミスは声がでかいから一緒にいるとたまに恥ずかしいと思うときがあるんだよな。
「オイラさーこういう賑やかなところ好きだぜー」
「それは俺もそうだよ、・・・・・・・あれ泥棒じゃねーか!」
俺たちはキョロキョロといい店がないか見回しながら貿易都市の元気な雰囲気を堪能していた。
やはり泥棒は何処にもいるのか、なにか包帯で包まれた刀らしきものと模様ずけされた斧を抱えた二人がこちらに向かってきいる。後ろから年取った白ひげを生やした老人が頑張って追いかけようとしてしているが、足がうまく動かないのかその場で転んでしまっていた。
あまり動けない年をとったじいさんを狙うのって、すげー腹が立つんだよな。
「オイラこういうの許せねぇーんだよな」
「俺も同感だ、力試しに行きますか」
俺とラミス素早くが斧を抱えている男の前に立ち道を塞ぐ。それに対し二人の泥棒は「邪魔なんだよ」と抱え込んでいた武器で俺たちに攻撃してきた。
俺とラミスは軽々と泥棒たちの攻撃を避ける。隙ができたタイミング俺は鳩尾にラミスは顎にそれぞれ一発二人の泥棒に食らわせた。
「お見事じゃ、この若さで大人をたやすく仕留めるとは」
「ぱちぱち」と盗まれた被害者だと思われる白ひげを生やしたじいさんの発言の後にその場にいた人たちからたくさんの拍手が俺とラミスに送られる。
俺とラミスは内心照れながら白いひげを生やしたじいさんに話しかける。
「オイラそんなたいしたことをしてないぜー」
「当たり前のことをしただけだだよじいさん」
俺たちは泥棒たちから盗まれたものを回収してじいさんに渡そうとすると「それはお主たちの物じゃ」と返されてしまった。
ラミスは自分の右手に持っている斧をまじまじと見た後にじいさんに声をかける。
「オイラたちがこんな良い物貰っていいのかー」
「懐かしい光景を見れたしいいのじゃ」
「ありがたくいただかせてもらうよ、この武器大切にするぜー」
どうやら本当に俺たちにこの武器をくれるらしい。
出遅れた俺は「この武器ありがとう」とじいさんにお礼の言葉をかける。
「この武器はな・・・・・・・・・・・ある仲良し二人組のために作った物なんじゃ、じゃがあいつらはバカ者じゃから渡せなかったんじゃけどな」
白ひげを生やしたじいさんは「わしは帰るでな」と俺たちに背を向け去っていく。
後ろ姿は落ち葉が冬の冷たい風に吹かれているかのようで悲しそうに見えた俺の胸に切ない気持ちが湧いてきた。
懐かしいものとは俺たちが泥棒を成敗したところを見てだよな。じいさんが誰を連想したのかわからないがとても大事な人なのだろう。
「なんか悲しい気分だなー、帰ろうぜー」
「そうだな、帰るか」
じいさんから貰った武器を俺とラミスは強く握りこのまま楽しくぶらつく気持ちにどうしてもなれず俺とラミスはしょぼしょぼと帰路についた。
「おいお前らどこに行ってたんだ!」
俺とラミスが帰宅すると作業が終わったのかボブが話しかけてきた。
かなりそわそわしているが多分俺たちが声をかけず出かけていたので心配をかけてしまったのだろう。
「ワリーな、オイラが遊びに行こうぜって誘ったんだー」
「声をかけなかったのは悪かった」
二人して誤るとボブは「二人が無事ならよかった」と安堵の息を漏らす。
俺たちの声が聞こえたのかグレンとフリーがボブの後ろから歩いてきた。
グレンの表情が鬼みたいになっており、俺は内心めんどくさくなりそうだなと少し落ち込む。
「私たちに声をかけず何か嫌な出来事が起きてる中で出かけるなんてありえないです」
「何もなかったんだからいいじゃないか」
「「すいませんでした!」」
俺とラミスはグレンに向けて謝る。グレンはため息をつきながら「反省しなさい」と少し顔の表情を柔らかくする、今回は許してくれたみたいだと俺は少し安心する。多分俺のことがあるから余計なのかもしれない。
「お前ら武器を買いに行ったのか?」
「いやー偶然さー、泥棒をオイラとリオルトで成敗したら報酬でこんないい武器貰っちまったんだよなー」
「でもなんか武器をくれたじいさんは悲しそうだったけどな」
「どういう状況だよ、まぁいいか」
フリーは何かをまた考え始めた。俺とラミスもじいさんの後ろ姿を思いだし少し元気がなくなる。
「貴方たちに何かあったのか知りませんが移動しましょうか」
グレンの言った通り俺たちはリビングに移動して席に着きボブがご飯を作り終えるのを待っているぞ「帰ったぞ」とフリーの親父の声が聞こえてきた。
疲れているのか少し隈を作っているフリー親父は俺たちのところに来てたまたま隣に空いていた席に座った。
「父上がこんなに疲れているのは珍しですね」
「しょうがねーだろ、これから俺ら三カ国で会議が控えてるんだからな」
「なるほど、どおりで」
「やっぱり上の人は大変だなー」
「俺絶対上の人になりたくない」
フリーの親父の話を聞いて俺は上の人みたいな肩身が狭い仕事がしたくないと思い発言したがその内容が気に食わなかったのか「お説教が足りませんでしたかね」とグレンの声が聞こえて寒気を感じた。
いいじゃねーか、俺は英雄になりたいだけで上の人なんかならなくても。
三カ国とは今俺がいるドラン連合国と帝国や王国のことだろう。
「出来たぞー、今メイドたちが持ってくると思うから」
ボブが調理室から戻ってきた。その後ろを追うように使用人たちがボブが作った料理を運んでくる。部屋内に食欲をそそるようないい匂いが広がった。
「ボブ君は何でもできるから、貴族出身では珍しんじゃないか」
ボブは空いている席に座りながら「そうですか」と少し照れながら返事をする。
夜はフリーの親父が帰ってくるので一緒に食べている。
みんなが挨拶してご飯を食べ始めた時にフリーの親父は俺とラミスの足元にある武器に気づき「買ったのかい」とこちらに聞いてきた。
「泥棒を退治した報酬で貰ったんすよ」
「大切にしなさい、武器の入れ物を後で持ってくるよ」
この武器に掘られている模様を見て俺に話しかけたような気がしたが何か知っているのか?しかしフリーの親父が大切にしろよなんてよほど価値があるものなんだろう。
俺たちがご飯を食べ終えた後にフリーの親父が「このメンバーに聞いて欲しいことがあるんだ」と口を開く。
「俺はお前らが拠点を作り終えるであろう10日後に王国で会議に出なければいけな」
フリーの親父の話を聞いてラミスとボブはポカンとしたような顔になるがフリーとグレンは何かわかった仕草をしている。俺もなんとなくだが言いたいことが理解できた。
「理解してない奴がいるから説明するとな、俺がいない間に例の複数の貴族を襲撃した奴らが大規模で悪さをするかもしれないから気をつけとけってことだ」
ラミスとボブは理解できた瞬間から表情が厳しくなる。特にボブは身内であんなことがあったからかラミスの比じゃないほど顔に出ていた。
「もし自体が俺が言った通りになったら判断はお前らに任せる」
フリーの親父は伝えることをすべて話し終え忙しいのかそそくさとこの場を去った。
沈黙がこの場を支配していてなかなか会話が弾まなかった。
みんなはどうであろうと俺は災厄の事態になったらここにいる民を守らうと思う。
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