第12話

「お前たちも空いている席に座れ、今後の未来に関わるかもしれないから耳をカッポジって聞くんだぞ」

下を向いたままの彼の隣に俺たちが座ったことを確認して「話してくれ」とフリーの親父からの言葉を聞いた彼はトボトボと話し始めた。

聞かされた内容は無残な物だった。

彼は学園の帰り家に帰ると普段迎えてくれるはずの母や執事の存在はなく、武装した兵士たちとこちらをすごい形相でにらめつけてくる妹だったそうだ。

異常な雰囲気を感じ何かあったのか問うと、自分が学園にいた何日か前に黒のフード付きマントを身につけた集団に外で突然襲撃され妹を庇って戦った母が意識不明の重体だと話が切れる。その後重い空気が場を何分か支配してからいきなり妹の口から会話の続きが始まった。

「襲ってきた奴らに兄上の顔があったのよね・・・・・・・お前を殺せば母上は少しは報われるよね」

体にグサグサと嫌な音が鳴り自分の腹を確認すると赤い液体が流れていている。

彼は危険を感じながらもここで引いてはいけないと痛みと葛藤しながら誤解を解こうと説得を試みるも無視され妹が兵士に指示してこちら本当に殺そうとしてきたので命からがら逃げてきたようだ。

無殴そわりー、俺たちはあまりに重い話だったので、途中で辛くなり下を向いたり涙を流している奴もいた。

何か疑問に思ったのか、フリーは彼に質問する。

「聞きたいことがあるんだけど、ここまでどうやって来たんだ?」

「それが俺でもわからねーんだ、頭が真っ白になりながらひたすら走ってたら、いつの間にかドラン領の看板がある所にたどり着いて大きな城に向かってきたらここに着いたんだ」

「私から父上に話を通して確認をさせてもらいます」

「おいおいこんな辛い思いをしてるのにその態度はねーだろ」

グレンの彼を疑っているような発言に俺は反発した。

彼を見ていてとても嘘をついているようには思えないし、俺自体信じたいと思っている。

フリーの親父は溜息を吐きながらグレンに「確認する必要はねーよ」と口を開きその根拠を示した。

フリーの親父はポケットから王家の紋章がついた手紙出て読み上げた。

やはり彼の妹さんの発言と筋が通っている内容なので疑いようはないと思われるが、事件が起こった日が3日前と決闘をした日の昨日ということになるしその間彼は走り続けたのか、あの傷の中そんな体力が持つのは普通の人にはありえないぞ。

探偵が難解事件を解明したかのようなすっきりした顔で俺が考えていた疑問を解き明かし彼の身に起こっていることを話し始めた。

「俺の知識が正しければ、カスティーヨ家の初代当主の兄にあたる人物は魔力を外に放出できない代わりに自分の肉体を強化できたらしい」

俺たちは彼を見ながらさっきの現象に納得したと相槌をうつが「何でそんなに勉強好きなんだよ」と少し引いていた。

確かにフリーの知識量はこの年にしては異常だと俺も感じるところがある。

彼は「俺は落ちこぼれではなかったのか」とさっきの表情から一変して少し嬉しそうにするがまた表情が暗くなってしまう。

貴族の世界では魔法を唱えられないものを落ちこぼれと定義する事がほとんどだ。

「こんな仕打ちって流石にねーよな、実の兄なのによー」

彼の一番近くに座っているラミスが落ち込んでいる彼の背中を軽く叩き声を掛ける。ラミスは彼の境遇に同情してるしているようだ。

俺もラミスと一緒で彼に思うところがあるのは確かだし、気が合いそうな気がする。

「俺含めて3対1だけどお前たちはどうするんだ」

フリーの親父はグレンと自分の息子のフリーに視線を向けた。

グレンは少し納得していない雰囲気だが「ここは私が折れることにしましょう」と返答してくれた。

「俺は元から賛成なんだけど」と自分の親父を少し厳しい目線を送る。

「でだな、フリーからお前たちが自分の拠点が欲しいと聞いたんでな土地は用意しといた」

「よし、俺たちと彼含めて5人で特大の基地を作るぞ」

「俺も含まれてるのか」と彼はキョトンしているためラミスがさっきよりかなり強く背中を叩く。

「俺たちはもう仲間だろー、これから一緒にやっていくんだからよー」

だいぶ痛そうにしていたが、暗い雰囲気が少し和らぎ彼は俺たちに涙を流しながら「ありがとう」と人懐っこい笑顔を向けた。

本当はフレンドリーで優しい性格なんだろう。

土地の場所が書いてあるだろう紙を持ちフリーとグレンは同時くらいに席をたち部屋を出ようとする。

「おい、お前らどこに行くんだよ」

俺がグレンに声を掛けるとピタリと動きを止めた。

こちらに振り向き「私たちで秘密基地を作るのでしょ、もちろん彼含めた」とグレンなりの歓迎をする。さっきまであんな態度だったからな弁解したかったんだろうな。

「あいつらに続いて俺たちも行くぞ」

俺が2人を追いかけていくと、ラミスが彼の腕を引っ張り後に続く。












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