第9話
「どうせあんな庶民なんてすぐやられるさ」
「ランネス様が負けるわけないわー」
「少しでも長く戦ってくれよ、編入生」
決闘をするため学園内にある闘技場のステージで例の彼女を待っていると観客席から生徒からのふざけたやじが飛んできた。
彼女が来るのが遅いことに少しピリピリしていると、「ランネス様ー」と女性から黄色い声援が飛ぶ。
「いやー待たせたね、すぐに終わらせてあげるよ」
(遅れてきたのにその態度はないだろ)
赤いバラを口にくわえて優雅にこの場に現れた彼女は観客席に手を振り余裕な態度を見せる。
「それはこっちのセリフだ、勝つのは俺だからな」
「君は本当に自分の立場が分かっていないようだね」
俺たちがにらみ合っていると観客席から飛び降りてきた青髪の少年フリーが間に入った。
「君たち冷静になってくれ、一様俺が審判だから戦闘開始はこっちが出すまでやりあうな」
フリーの言葉を聞いて会場はざわめく、それもそのはずこの国のトップに立つ貴族で次期当主と期待されている人物が審判をすると発言していることが異例であるし、この試合に興味を持っている証拠になるのだ。
「フリーこの後親父と予定が入ってるんじゃねーのかよ?」
「面白そうなことをリオルトが俺を抜きにしてるからさ、父上に話通してきちゃた」
俺たちが仲良く話しているのを口を開けて驚いている彼女にフリーは少し面白そうに嘘の事情を説明しだした。
「実は昔からコイツと仲良くてね、俺がこの学園に入れるように手配したんだ」
またもや会場がざわつく、「まさか、ドラン様が騙されてるのでは?」と一部の生徒の声が聞こえてきた。
本当に失礼なやつらだな、俺がフリーを騙してるだって・・・・・・そんなに俺が悪人に見えるのか。
「貴族である僕の誘いには乗らなくて、こんな庶民と仲良くなるなんて!」
彼女はとても悔しそうに歯ぎしりしだした。
なんだ俺にヤキモチ妬いているだけなのか、確かにフリーから学園で友達が出来たなどと聞いたことなかったどころか愚痴だらけだったが。
フリーは面倒臭そうに「早く始めるぞ」と決闘を開始しようとしていた。
自分の都合が悪いからか話を終わらそうとする。
「両方位置についてくれ」とフリーに言われ俺と彼女はお互いに色が付いたラインが引かれている場所まで下がる。
それを確認したフリーは「始め!」と合図を出した。
それを聞いた彼女は魔法を詠唱し槍を具現化させこちらに迫ってくるが、俺も同じく剣を出し構えを取る。
俺が持っている剣はあまりリーチが長くないから彼女が自分から近くに来てくれる方が楽なんだよな、この距離なら十分か。
「僕の一突きを避けられるなんて」
危機を感じた彼女は俺との距離を離そうとする。
時はすでに遅し、俺は剣ではなく拳を彼女のみぞおちにくらわせた。
「お前少しは手加減しろよ、・・・・・・勝者リオルト」
「待ちたまえ、僕はまだ戦えるぞ・・・・オエエエェェ」
「何言ってんだ、そんなゲロゲロなってんのによ」
「なんか勝った気がしないんだけど」
彼女はクラスの女性たちに連れて行かれたがすごい睨まれた。
確かに女性である彼女に酷いことをしたがこれはあくまで決闘だから俺は何も悪くないセーフだ。
「ふざけんな、よくもランネス様を成敗してやる」
「庶民が調子乗るんじゃねー」
勝ったのに歓声は怒らずどころか武器を構えて数人がこちらに降りてこようとするがグレンが「邪魔です」と素早く片付ける。
「助かったぞグレン、俺たちも早く撤収しますか」
「そうだな、早く帰ろう」
これ以上ない批難の声の中俺たちはこの場を去った。
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