第8部 『覚悟』


 むかつくほどに暑い八月。ほぼ焦土となった極東に、ようやく終戦が訪れた。あれだけ待ち侘びた終戦に違和感があったのは、本土決戦を決行するだとかで竹槍訓練やら婦女子の射撃訓練だとか、もう哀れを通り越して滑稽としか言いようのない準備もしていたからだろう。一億総玉砕の覚悟で立ち向かおうとしていた国家がここで敗けを認めるなどとは、俄に信じ難かった。


 今は少し肌寒くなった十月で、終結を意味する玉音放送を聞いたのは二ヶ月近く前のことになる。そのときの様子は、朧気ながらに覚えている。地に伏し悔しさに泣き喚く者や放心している者、ただ耐え忍ぶ者たちを大勢見た。


 それでも自分自身が何も感じなかったのは、やはり非国民だからなのだろうか。ただそこにあったのは安堵の感情以外に何もない。もうこれ以上、人が死ぬのを見なくて済むのだ。


 いつも思う。なぜ、この降伏をもっと早くに決意しなかったのか。多くの民衆を肉塊に変えてまで美しく保たなければならない価値が、果たしてこの国にあったのだろうか。もっと早くに降伏していれば、積み上げられた死体だってこんなに多くはなかったはずだ。もっと早くに降伏していれば――榛名だって、死なずに済んだのだ。



「ああ……もう止めだ。こんなこと考えたって仕方ない……」



 イヅルは一人呟き、脳内にこびりついた思考を振り落とすかのように頭を左右に振った。もう、今は何も考えないようにしよう。積み重ねた紙の束を持ち上げ、焼け焦げた道を歩き始めた。



「なあイヅル……それ、本当に全部燃やしちまうのか? 苦労してやっと完成したものもあるってのに……酷ぇよ」


「仕方ないさ、支配者様側からのご命令だ。軍に関連する書物および書類、更には軍事教育に関するものは全て焼却せよ。俺は賛成だな、これには」



 後ろを付いて歩く銀には振り返らず、真直ぐ前を見たまま答えた。軍関連の資料を廃棄することで戦争がなくなるというのなら、俺は喜んで設計図を焼却し、兵器の設計をやめよう。イヅルはそう思っている。こうなってしまった経緯も思惑も知らないけれど、もうこんな、膨大な悲しみを産み落とす戦争は、人が人らしく居られない戦争は、二度と御免だ。


 鹿屋航空基地で生き残った戦闘機が格納庫諸共燃やされているのを背後に、イヅルは紙の束を火の中に放り込んだ。耳に入ってくるのはめらめら燃える火の音と、その中でぱちぱち弾ける可燃物の音。それに混じって、男の嗚咽まで聞こえてくる。これは愛機を燃やされ、別れを惜しむ隊員のものだ。それに背を向けたのは、「失う悲しみ」を直視したくないからだ。


 正直、まだ榛名の死を受け入れられていない節がある。声が聞こえるような気配がするような、とにかくすぐそこにいるような感じがして、ついつい名を呼んでしまうのだ。――俺は、こんなにも脆弱だったか。イヅルは自嘲気味に笑い、揺らめく炎を見た。


 けれど、悪いことばかりではないと思う。「彼女はもういない」という現実を突きつけられ、寂しさに泣きだしそうになることもある。その反面、誰に話しかけられようが触れられようが、取り乱すことは極端に少なくなったし、体調の良い日も増えた。銀曰く、あまり夜な夜な魘されなくなったのだとか。どれもこれも全て、きっと榛名がすぐ傍で守ってくれているからなのだろう。



「……一度、姉さんと呼んでみたかった」



 首に掛けた御守り袋の中には、榛名の遺髪が収められている。服の下に隠したそれを握り、イヅルはしみじみ呟いた。それを聞いた銀の微妙そうな顔に小首を傾げ、久々に空を見上げる。空はあの時と同じ澄み渡った青空。その眩しさに目を閉じながら、イヅルは榛名の平穏を祈った。そういえば、彼女は無事に天国へたどり着けたのだろうか。




           ※




 占領軍が上陸して久しい鹿屋の町を歩く。地は焼け焦げ、瓦礫は散乱したままだったけれど、以前にはなかった解放感がある。終戦前よりは幾らもましになったものだと島風煉は思った。


 しかしどうしたものか……終戦してからの二ヶ月、この敬愛する先輩、深田恭二から一切の覇気を感じなくなった。今見ている後ろ姿もそうだ、「片づけの手伝いをしてくれ」と頼まれたものだからこうしてついてきたわけだが、その寂れた背中に一層の不安感を煽られる。そこから滲み出るのは死の匂い。必死の任務から解放された彼らはまだ十分に若い、人生はまだまだこれからだろうに、生きる意欲を全く感じられなかった。


 少年たちの憧れの的だった特攻隊員も、戦後は扱いが一変した。カメリアの策略かどうかは知らないが、特攻での死は犬死とし、元特攻隊員は「特攻上がり」と侮蔑の意を込めて呼ばれるようになった。更に自分たちは和寧人。こちらもこちらで好き勝手する在東和寧人たちが現れたせいで、「在東」と、こちらでもまた侮蔑の意を込めて呼ばれるようになった。



(恭二さん、あんたまさか……)



 痛いくらいに、嫌な予感がした。これしきのことで打ちひしがれる弱い人ではないけれど、もしかすると……。早まる動悸を抑えながら、煉は大人しく恭二に付き従っていた。



 一方の恭二は、考えあぐねていた。


 結局は特攻で死ねなかった。それはつまり、民族の誇りを浄化することもできなかったということで、ここへ来た目的を何一つ達成できていないのだ。


 これは完全な生き地獄だった。生きる意欲なんか当然ない。それもそうだ、そこにはなんの意味もないのだ。


 穢した誇りをどう浄化してやろうか、どう俺自身の戦争を終わらせてやろうか、そればかりを考えていた今までの二ヶ月間は本当に辛かった。特攻上がりや在東などの侮蔑なんてどうでもいい、ただ戦争で死ねなかったことが辛かった。


 そんな中での良い出来事といえば可愛い弟分が――イヅルが、戦犯として裁かれるのを免れたことだ。A級戦犯だと一度は逮捕されたのだが、不起訴となって早々に釈放された。決め手は彼の出生と不遇、そして二年の間に増え続け、消えることのなかった体中の痣だったとか。それで『奴隷のように扱われていた可哀想な子』として、最終的には被害者の位置に落ち着いた。本当にこの子は、運がいいのか悪いのか。


 この結果が依怙贔屓とされ、結局「売国奴」の汚名は晴れなかったけれど、命があるに越したことはない。生きていれば、必ず何か良いことがあるものだ。まあ、俺にはその理屈は嵌らないが。


 意志は変わらず、のうのうと生きて行くつもりはない。いや、生きていてはいけないのだ。いつ思い出しても、あの行為は非常に浅はかで愚かで残酷だった。あの頃はただ、自由と夢に取り憑かれていて、それ以外が全く視えていなかった。


 「飛行機に乗りたい」と言うだけで多くの同胞を犠牲にするとは、あまりに凄惨なエゴイズムだ。極東に売った家族や友人たちは、恐らくとうに処刑されているだろう。何の罪もなく、誇りを守ろうとした末に売国奴に全てを奪われた。そんな彼らを思うと……ますます自分だけが生き延びる訳にはいかなかった。



「じゃ、俺はこの中片づけるから。お前は……」


「기다려라 、날순 (待て、日順)!」



 突然の母国語に思わず顔を上げた恭二の目に飛び込んできたのは、こちらを怪訝し、がっちりと肩を掴んだ煉の空色と淡褐色の目だ。それは滲んでぼやけていたのだけれど、目に溜まった自分の涙のせいだと気付くのには少し時間がかかった。



「역시당신은 ……(やっぱりあんた……)」


「……っ!」



ぐっと引き寄せようとした煉を無理やり振り払い、恭二は――朴日順イルスンは重い倉庫の扉を固く閉めた。完全に悟られた。何となく感づかれた節があったから、こうして共に行動して疑いを晴らしてやろうと思ったのに……どうやら逆効果だったようだ。


 強く扉を叩く音と煉の叫喚を無視して、地下へと続く短い階段を駆け降りる。こうして泣いたのはいつ振りだろう。恐らくあの日以来。静和と二人、売国奴に成り下がろうと決めた日以来だ。


 倉庫の奥で、日順は隠していた手榴弾を手に取った。煉が、秀英スヨンがここに来てしまう前に片をつけなければ。安全ピンを引き抜き、炸裂させるために手から滑り落とそうとした。


 その間、脳裏に浮かぶのはイヅルの姿。「カメリアの血によって不起訴となった、依怙贔屓の公平でない審議」だったと、今も一部で騒がれている。彼はこれからも「血」に付き纏われ、当分は平穏に生きることはできないだろう。そんな彼を兄として守ってやりたいと、無理に生きる理由を見出そうとする自分はきっとかなりの臆病者なのだろう。しかし残念なことに、もう彼に守りは必要ない。なにせ彼にはもう、空の上から見守ってくれる、何よりも心強い「お姉ちゃん」がいるのだ。



「くっそう……先越されたな……」



 榛名。俺は死んでも、お前と会うことはないだろう。何せ俺は、三年も前から地獄行きが決まっている。最後まで綺麗で果敢だったお前とは違い、俺は真っ黒に穢れきっているのだ。流れ続ける涙を拭おうともせず、日順は目を細めて暗い天井を見上げた。その時、ガタンと無理に扉を開く音がした。



「안되는 、스욘이 와 버린다 ……(駄目だ、秀英が来てしまう)」



 早く弾けろ。日順は焦り願い、手にしていた手榴弾を、思い切り床に叩きつけた。




           ※




 何があったのか、良くわからなかった……というのは全くの嘘で、本当は何があったか良くわかっている。ただ理解したくないだけだ。爆風に吹き飛ばされ、石垣に体を強く打ちつけた煉は、轟々と煙の立ち昇る倉庫を、仰向けに転がったまま見上げていた。


 戦後の鹿屋に久々の爆音が響きわたり、ぞろぞろと野次馬どもが集まってくる。駐在しているカメリア兵が何か話しかけてくるようだけど、煉はそれを聞かなかったことにした。生憎とカメリア語はあまり分からないし、何より今はそれどころではない。なぜこのようなことに至ったのか、煉はそればかりを考えていた。


 あの人のあの涙の訳は、一体なんだった?

 特攻で散れなかった情けなさ?

 特攻上がり、在東と罵られる悔しさ?


 それらに責められる日々に耐え切れず、こんな結末を選択したとでもいうのか。いや、そんなはずない。あの人は、こんなに脆弱な男ではないはずだ。



「바보…… 아직 이제부터인데도……(畜生……まだこれからだってのに……)」



 恭二はもう駄目だ、しっかりとこの目で見てしまった。弾体に詰められた爆薬が炸裂し、飛散った破片が彼の体を引き裂くのを。べったりと体に張り付いた血は、自分のものではなく彼のものだ。


 耳鳴りがする。叩きつけられた体も、少し灼かれた肌も痛む。けれどそれよりもずっと、ぎりぎりと締めあげられる胸が痛かった。本当に、まだまだこれからだった。若く、人望も才能も十分にあった。なんの制限もなく、好きなだけ飛行機の勉強だって出来たはずだ。



「It is ghostly... Did he die?(これは酷い……死んだのか)」


「No, he is still alive. Let's carry to the hospital.(いえ、まだ息があります。病院へ運びましょう)」



 人の焼けた臭いと、鉄の臭いがまじった嫌な臭いがした。倉庫から出てきた担架はすでに赤く、そこから所々焼け焦げ、複数の赤い筋を作った腕がダラリと垂れ下がっていた。指先からぽたり、ぽたりと血が滴り、行く先を示す赤い道標を作っている……。


 認めたくなかったけれど、これで朴日順の自爆行為が確定した。未だ転がったまま担架を見送り、無念に拳を強く握り締めた。他人事だけれど、あまりに無念で、周りも気にせず初めて人前で泣きじゃくった。煉の慟哭は、乾いた青空に虚しく響く。親東派の家庭に生まれ、戦前からの移民だった煉には、彼の気持ちが見えなかった。




           ※




 小波の音を聞きながら、絶壁の淵に立つ。そこから下を覗けば、錦江湾が見える。石田和樹――李静和ジョンファは、ここで全てを終わらせるつもりだった。敬見の呼出しには応じなかった。呼び出されたのは、きっと彼女の腹の中にいる子のことだろう。気付かなかった訳はないし、覚えだってある。けれどこれ以上、共に生きる訳にはいかなかった。


 目を閉じさえすれば、憎しみに染まった母の目の色も「裏切り者!」と叫ぶ声も、何時でも思い出せる。母だけではなくかつての友人や隣組の連中らが、憲兵に取り押さえられもがく姿を冷えた目で見下ろしていたのは紛れもなく俺と恭二だ。


 侵攻してきた極東によって家族や文化、誇りを奪われた彼らには、突然極東の肩を持ち始めたこちらの行動が、きっと理解できなかったのだろう。それと同じように、親族の反極東活動によって夢を奪われた俺たちの気持ちなど、きっと彼らは理解できなかっただろう。


 理由はどうあれ、家族を死に至らしめるという大罪を犯した。そんな男が父親になる資格などなく、同時に、その子の背負う荷の重さを考えると、非常に申し訳なく、怖かった。



(やはり俺は……あいつとは精神構造が違うのか……)



 幼馴染の恭二の姿を思い浮かべ、和樹は深く溜め息をついた。全てを捨て、束の間の夢を楽しみ、潔く散ってやろうと決めていた。恭二はひたすら操縦術の習得や航空学に打ち込んでいたけれど、俺はその他に、この地で新に大切なものを作ってしまった。にも関わらず、最後まで守ってやることもせずに今、死のうとしている。結局俺は、何もやり遂げることのできない半端者なのだ。



 極東へ来てすぐに横道に反れた自分を、恭二は決して責めなかった。穢れは自分一人で浄化すると、お前は心おきなく幸せになれと、心の底から思ってくれているのだって知っている。だからこそ和樹は心苦しかった。




『明日、俺たちの戦争は終わる』



 昨日、恭二からこう聞いた。覇気を失ったはずの彼の凛とした声は、なんだか凄く懐かしく思えた。二ヶ月間の濁りは消え失せ、晴々としていた。丁度あの日と、出撃の日と同じように。恐らく今日、どこかで彼は自決するのだろう。


 だとしたら、俺だって。


 自分の犯した罪を、他人に背負わせてまで生きていたくない。例え新しい家族を、遺して逝ってしまうことになっても。和樹はカメリア兵に見つからないように隠し持っていた陸式拳銃をベルトから引き抜き、右手に持ったまましばらく錦江湾を眺めた。


 ここから広がる海のどこかに、多くの同期たちが沈んでいる。ここで頭をぶち抜いて海に沈めば、波は遺体を皆の所に浚ってくれるだろうか? そんなことを考えながら和樹は右腕を持ち上げ、冷えた銃口を蟀谷へ――



「和樹さん……っ!」



 何度も聞いた愛しい声に反射的に振り返ると、そこにはいないはずの敬見がいた。

なぜだ。彼女には何も告げずにここに来たはずだ。それに、決して見つからないようにと、敢えて基地から離れたこの地を選んだというのに。和樹は右手の陸式を後ろ手に隠し、息を切らせた涙目の敬見を見た。



「敬見、お前……っ」



 そんなに走っては腹の子に障るだろう。そう言おうとして、止めた。一切の責任を放棄しようとしている自分に、そんなことを言う資格はない。ふわりと心地よい香りが鼻腔を掠め、体に暖かさが伝わってくる。敬見が自分に抱きついてきたのだと理解するには、聊か時間がかかってしまった。またしても反射的に抱きとめた彼女の体は震えていた。



「……どうしてこんな所に」



 和樹は困り果てていた。呼び出しに応じなかった俺に怒り、また深い悲しみを感じているのだろう。彼女にはいつまでも笑顔で、幸せでいて欲しい。この気持ちに偽りなど一切ないが、現に彼女を悲しませているのは紛れもなく自分自身だ。この局面にきてどうしていいか分からなくなり、もどかしさをどこにぶつけることもできず、ただ彼はやきもきしていた。



「初春くんから聞いたの……最近、和樹さんと深田さんの様子がおかしいって。それで……」



 場所を聞いたら錦江湾だって。少しでも早くあなたと話したくて、大急ぎでここまで来たの。和樹の胸に縋るように寄りかかる敬見を支えるように抱く。浅い息と震える体が、怖いくらいに痛々しかった。



「本当はね、今日あなたを呼んだのは、この子を産ませて下さいってお願いするつもりだった。でも、もういいの。それであなたをこんなに苦しめているのなら、私、墜ろすわ」



 墜ろす。彼女の口から発せられたその一言と、思うよりもずっとこちらを好いてくれていた敬見の気持ちに大きな衝撃を受け、和樹は胸をきつく締めあげられる気分になった。


 敬見が俺を苦しめた? 違う、俺が敬見を苦しめたのだ。「石田和樹」と名乗る男と出逢ったその日から、真直ぐだった彼女の道を大きく歪ませてしまった。そのことがただただ申し訳なくて、和樹は彼女を、強く抱きしめることしかできなかった。



「あなたが国に帰らなきゃならないのなら私、ついて行く。あなたとずっと一緒にいたい。離れたくない。だから……置いて行かないで……」


「……それはできない」



 名残惜しく思いながらも体を離し、和樹はやんわりと敬見を拒絶した。悲しみに満ち溢れ、涙を一杯に湛えた彼女の瞳をしっかりと見、艶やかな髪をそっと撫でた。



「いいか、良く聞け敬見。俺は、国に帰ることなどできん。ここに来る前に全て捨ててきた。……大罪を犯して」



 心が清らかな彼女に、できればこのことは話したくなかった。けれど、全て話してしまわなければ彼女はきっと引いてくれないだろう。それに、別にもういいのだ。嫌われようが罵られようが構わない。俺はもう、居なくなるのだから……


 身内を売った話も、多くの同胞を裏切り処刑したことも――その始まりが利己によるものだということも全て話した。それでも軽蔑する様子もなく、ただ真摯に受け止めてくれている彼女の姿は美しく、和樹は改めて思った。心の底から、この娘が愛おしいのだと。



「お前を共に連れて行くことはできない。花のように可憐なお前を、冥土に連れて行く愚かを犯すほど、俺も馬鹿じゃない」



 敬見の柔らかな唇に触れるように口付けた後、彼女の目に触れないよう隠していた陸式の銃口を、再び蟀谷に当てる。恐怖に息を呑んだ敬見は見なかったことにして、和樹は極力柔らかく微笑んだ。



「お前が身籠ったこと、俺は本当に嬉しかった。そいつは俺の形見だと思ってくれ。そして……何もしてやれない無責任な俺を、許してくれ」


「や……やだ……駄目、和樹さん、それを下して……!」



 ぼろぼろと大粒の涙を流し、いやだ、いやだと泣きじゃくる敬見を見て、和樹は苦笑した。最後の最後で泣かせてしまうとは、俺もつくづく駄目な男だ。



「忘れるな、敬見。石田和樹と――李静和という男がいたということを。そしてそいつが、誰よりもお前を愛していたということを……」


「やめてえ……っ!」



 敬見の訴えが通ることはなく、静かな海辺に銃声が響く。銃弾が和樹を抉る前に敬見に力いっぱい引き寄せられ、海に落ちることができなかった彼が岩場に倒れ込む。照準は頭から逸れ、代わりに頸部に風穴を開けることになった彼には、まだ微かに意識があった。


 霞み、ほぼ見えなくなったその目には、最愛の敬見が僅かに映っていた。和樹の血を全身に浴び、彼の名を呼びながら泣きじゃくっている。やはり、愛しいものを置いて逝くのはなかなかに惜しいものだ。榛名もきっと、こんな気持ちだったのだろう……。


 意識は徐々に、深い水底に沈んでいく。それに抗えなかった石田和樹――李静和は、完全な暗闇の中で一切の感覚を失った。




           ※




 岐山さん、岐山さん、岐山さん!


 銀と並び、立ち昇る煙をぼんやりと見ていると、こちらを呼ぶ聞きなれた声がした。たたたっ、と地を駆ける忙しない足音と、ずざあ、と盛大に転ぶ音のする方を見ると、そこには地に伏した初春涼平がいた。



「……大丈夫か、初春?」


「あ、はい、俺は全然……いやっ、それより大変なんです、深田少尉と煉が倉庫で、石田少尉が錦江湾で……あぁあああっ」



 酷く混乱して頭を掻き毟る涼平は傷だらけだった。きっとその大変な報せを受け、急いで情報を届けようとして何度も転んだのだろう。そんな彼を宥めていると、後ろからもう一つ足音が聞こえた。今度は慌てた様子のない、ゆったりとした足音だった。



「岐山、良くない報せがある。深田と石田が、ついさっき自決した。島風はそのとばっちりを受けて軽傷……体はな」



 今、何と言ったのですか。その問いは喉に詰まり、声にならなかった。あまりに突然のことで理解できず、俄に信じられなかった。けれど足元で啜り泣く涼平を見てしまえば、それを事実として受け入れる他なかった。「良くない報せ」を教えてくれたのは村上だった。彼に戦中の覇気は感じられず、周囲の人々同様に憔悴していた。



「……行くならまず、深田の方へ行け。あいつはまだ息がある、石田はもう……駄目だがな」



 結局一度も顔を上げなかった村上は見ず、イヅルは何も考えずに彼らの元へと走った。




           ※




 まだ生きている自分自身を、恭二は呪った。チクショウ、不良品を掴まされた。あまり破片が飛ばなかった。


 確かに手に握っていた、あの陶器製の手榴弾を思い浮かべては悔しい気持ちになる。ああ、許すまじ物資不足。


 熱に灼かれ爆風に煽られ破片に肉を抉られ。もう既に手足の感覚はなく、全身のだるさしか感じない。どんな状態になっているのかよくわからないけれど、ちらちら聞こえる周囲の会話から、いたるところが焼け焦げ、手足も千切れて無くなっているらしかった。なるほど、感覚がないわけだ。


 もう何も見えないし、声の出し方も身体の動かし方も忘れてしまった。じきに呼吸の仕方すら忘れてしまうのだろう。そうすれば全て終われるのだが、ただ一つ、気がかりなことがある。それは手榴弾が炸裂する直前、倉庫の扉を全開してしまった煉のことだ。わりと距離も近かったし、無傷では済まなかっただろう。



「……恭二さん」



 恭二の思案を中断させたのは、大切だった弟分の声だ。何だかとても懐かしく聞こえるその声は、どこか寂しそうだった。


 その弟分の岐山イヅルは、カメリア兵に案内され恭二がいるという部屋に辿り着いた。見渡すまでもない狭い部屋には寝台が一つ。そこで全身に包帯を巻かれて横たわっているのが恭二なのだろう。


 炭の臭いと、血とリンパ液の腥い臭い。先程から身じろぎ一つしない恭二は、つい最近まで道端で見られていた焼死体そのもので、脳はそれを彼と認識しようとしない。つい昨日見た健康な恭二の面影はそこになく、激しい違和感に苛まれた。



「島風……」



 少し視線をずらした所に、もう一つ人影がある。それは部屋の隅で、膝を抱えて座り込んでいる煉だった。彼もまた無反応で、身じろぎ一つしない。近づいて肩を叩くとようやく顔を上げたのだが、彼は憔悴しきり、目も虚ろだった。


――島風はとばっちりを受けて軽傷。体はな。


 イヅルは村上の言葉を思い出し、蹲った煉の全身を観察するように見た。所々に当てられたガーゼの下には、きっと火傷があるのだろう。そして憔悴しているのは、恭二がこうなる瞬間を目の当たりにしたからか。いつもの凛々しく、しゃっきりした彼の姿もまた、ここにはなかった。



「島風……一体何が、」


「岐山さん」



 イヅルの問いは、煉の声に遮られた。驚くほどに弱々しく掠れており、やっと聞き取れる程度のものだった。本当は彼にこの経緯を聞きたかったのだけれど、それはあまりに酷な気がして止めた。



「何だ?」


「……あの人は……一体何を抱えていた? 俺には何も分からない……分からないんだ……」



 玉音放送があった日から様子がおかしくて、こっそり監視してきたけど、遂には何も分からないまま恭二は自決した。彼が自決しなければならなかった理由も、あのとき見た涙の理由も分からない。何か知っているなら教えてくれ。


 そう懇願する煉を、イヅルはやんわりと拒絶した。イヅルもまた、何も知らなかった。というより、様子がおかしかったことにさえ気づかなかった。自分のことで精一杯で、周りなど殆ど見えていなかったのだ。



「恭二さん……」



 俺は、貴方達のお陰で強くなれた。この恩は決して忘れないし、これから僅かずつだが返していく予定だった。なのに……それは叶わないのか。イヅルの頬に、一筋の滴が伝う。静かに流れたそれは、約三ヶ月振りのイヅルの涙だった。



 二人の弟分の会話を、恭二は盗み聞いていた。まあ、自分の目の前で繰り広げられているのだから盗み聞きには該当しないのかもしれないけれど。聴力もすっかり衰えてしまい、途切れ途切れにしか聞こえないのが口惜しいが、どうやら自分のことで二人の気分は完全に落ちているらしかった。



『馬鹿だなあ、お前たち。俺のことなんか、そんな気にしなくてもいいのに』



 思い切り調子はずれな振る舞いで、この淀んだ空気を払拭したい。けれどやはり声は出ず、体も動かなかった。もうこれ以上、奴らの哀しい声は聞きたくない。それならさっさと死なせてくれ……と思うのだが、内心嬉しかったというのが本音だ。自分のことを思い一喜一憂してくれる、可愛いくて優しい、良い後輩を持ったもんだと

恭二は思った。


 彼らの嬉しそうな顔も、寂しそうな顔もはっきり覚えている。きっと今は、一度俺が出撃したときと同じ顔をしているのだろう。あの今にも泣き出しそうな顔は、迷子になった仔犬を連想させる。恭二は不謹慎だと思いながらも、彼らが愛おしくて堪らず心の中で笑った。


 感覚がなくなったはずの手に、刺すような痛みを感じた。かと思えばすぐに心地よい温かさに変わったそれが何なのか、恭二にはよく解らなかった。


 その正体はイヅルの手だった。しっかり形の残った左手を握ると、ぱりぱりと皮膜の割れる音と同時に、じっとりとした感触が手に伝わる。赤黒く変色した白いはずのシーツに、炭になった皮膚がぼろぼろと落ちていくのにぎょっとして肝を潰されたが、それ以上の死の恐怖がイヅルを襲う。あっという間に恭二の体液と炭で汚れた手を見て、イヅルは彼に残された時間の短さを知った。


 嫌だ、これ以上死なれるのは嫌だ。怖くて、哀しくて、認めたくなくて、だけど、受け入れなくてはならなくて。脳内で拒絶と了承がぶつかり会う感覚は久しぶりすぎて、割れるように頭が痛む。遂には立っていられなくなり、イヅルは頭を抱えて床に膝をついてしまった。


 側頭部をぎりぎりと万力で絞め上げられる感覚を味わいながら、イヅルは「このままではいけない」と自身を奮い立たせた。ここで脱落してしまっては、あの頃の自分に逆戻りだ。榛名のように強くなるのだと、恩を返していくのだと決めたばかりなのに。


 イヅルは胸の御守り袋を握り締めて立ち上がり、乱れた心を落ち着かせた。銀が心配そうに見守る中、イヅルは出来るだけ無理のないように抱き起こし、死臭が漂い始めた恭二を抱き締めた。



「恭二さん、俺は貴方に感謝しています。貴方のことは、何があっても忘れない」



 恭二は、不覚にも泣きそうになった。こいつらの前ではできるだけマイナスの感情は見せず、明るく前向きな兄ちゃんでいたい。けれど今、自決を後悔している自分がいる。少しも動こうとしない体を呪い、イヅルを抱き返してやることができないことを嘆いた。



――ごめん、ごめんな……おれはもう、これ以上いきていくわけにはいかない。さいごまでおまえたちを見届けてやることができないのはざんねんだ。ああ、しぬのがオシイ。


 先程から感じていた強烈な眠気を、イヅルの暖かさが助長させていく。嫌だ、まだ眠くなんかない。恭二は最期を拒み抵抗したが、迫り来るそれに遂には勝てなかった。彼は弟たちの愛を感じながら、底なしの深い眠りに落ちていった。




「島風、立てるか?」



 擦り寄ってきた銀を抱きしめ、部屋の隅で声を殺してしゃくり上げる煉に、イヅルは柔らかく問うた。彼は意識も気力もしっかりあるのだが、一度流れだした涙と横隔膜の痙攣はなかなか止まらないらしい。こちらに向ける空色と淡褐色の目に淀みはなく、以前同様、ぎらつくほどの強い光があった。


 つい先程、恭二の絶命を確認した。遺体を運び出したカメリア兵には「遺骨を引き取る」と伝えたけれど、果たして本当に伝わっているのだろうか。英語は今までと同じように音と形と雰囲気でどうにか覚えた。だけど完全に独学だから、伝わっているかの自信はない。



「俺はもう行くよ。島風はもう少し落ち着いてから行動した方がいいかもしれない」



 手にべったりとついた恭二の体液を軍袴で拭い、煉の黒い髪をぐしゃぐしゃ撫でまわしてみた。これは恭二の真似だ。前にしてもらったときのことを思い出して、イヅルも少し泣きそうになった。だけどここでへこたれている訳にも行かない。それを無理やり奥底へ押し込み、煉に背を向けた。



「行くって……どこへ」



 ようやく呼吸の整ったらしい煉は、はっきりとした声で問うた。イヅルの動きがぴたりと止まるのを見た煉の心臓は跳ねあがる。彼も恭二と同じ道を辿るのかという思考が脳内を過り、それを思うと堪らなく怖かった。


 言うべきか黙っておくべきか、イヅルは悩んでいた。彼はまだ、和樹までが死んだことを知らない。つい先程まで心が極限まで弱っていた彼だ、ここで追討ちをかけるのはあまりに酷な話だ。


 だが、本当にそれは正しい判断か? 衣摺れの音に煉が動く気配を感じながら、イヅルはあれこれ思案を巡らせた。もし、煉の立場に立ったなら? 今何も知らされず、ずっと後になって、敬愛する先輩の死を知らされたなら……それは絶対に嫌だ。


 イヅルが腹を括ったとき、後ろから強く腕を引かれた。その勢いでぐるりと後ろを向いた正面には、眼光鋭い双眸があった。今度こそは払われないようにと力強く掴まれた腕に、鈍い痛みが走る。



「どこへ、」


「……和樹さんが錦江湾で自決したそうだ。俺は今から、和樹さんの遺体に会ってくる」



 煉の方は見ず、恭二がいた寝台の周りを寂しそうにぐるぐる回る銀を見ながらイヅルは言う。ひゅ、と喉を鳴らして息を詰まらせ、途端に揺れた瞳に過去の自分を重ねた。


 あの頃の苦痛が蘇り、彼に倣って息を詰まらす。煉の肩越しに見えた銀の姿に安心感を覚えて呼吸はだいぶ楽になったけれど――それでもこの重さに耐え切れず、目の前で項垂れた煉の髪をもう一度乱雑に撫でながら、イヅルはゆっくりと瞼を閉じた。




           ※




 辺りが暗くなりはじめた黄昏時、銀と共に肝属の川沿いを歩く。煉は病院に置いてきた。火傷の他に強い光を直視したせいで目も痛めているらしく、少しの間の入院が必要なのだとか。「俺は大丈夫だから、気にせずあんたはあんたの仕事を片付けてくれ」なんて強がっているくせに目は泣き腫れていて、それがなんだか可笑しかった。その時の彼の造り笑顔を思い出して苦笑し、薄ら残った空のオレンジをぼんやり眺めながら、二人して黙っていた。


 結局、和樹には僅か数秒程度しか会えなかった。丁度火葬場に運ばれる直前で、「もう少し時間をくれ」と頼んだのだが、その希望は通らなかった。なんでも、「あのお嬢さんが眠っている間に済まさなければならない」のだとか。あのお嬢さんというのは今塚敬見で、頑として遺体の傍を離れようとしなかったらしい。睡眠薬で強制的に眠らせた今の内に火葬を終わらせるのだと、向こうは少しも譲歩してくれなかった。


 彼の死に顔は穏やかだった。目に光はなく冷え切っていたけれど、柔らかな微笑を浮かべているように見えた。頸部に穴があいている以外、生前と変わりない姿だからそう思うのか、それとも本当に幸せそうだったからか――恐らくはその後者だと決め、「幸せだったならいいか……」と一人呟き、微笑んでみた。




           ※




 あまりに静かすぎて、不安になる。銀は薄暗闇の中で懸命に目を凝らし、ぼやけて見えるイヅルの背を追った。最近になって、イヅルと会話が成立しなくなった。一方通行の会話が殆どで、意思の疎通も出来ないままに終わってしまうことが多くなった。


 このまま、一人きりになってしまうのかな。いつも遊んでくれていた榛名も、恭二も和樹も死んでしまった。それがどういうことなのか良くわからなかったけれど、今ではちゃんと分かる。死んだ人はもう二度と戻ってこなくて、この先再会することは絶対にない。知らない間に姿を消した、飴と同じように。


 涼平ももうじきここを離れるらしいし、煉だってずっと留まる訳ではないだろう。一人、また一人と消えていく。ずっと傍にいてくれたイヅルも、もしかしたら消えてしまうかもしれない。


 俺の声は、ちゃんと彼に届いているのだろうか。呼べばいつも通り、振り向いてくれるのだろうか。一度試してみたいのだが、もし振り向いてくれなかったらと思うと怖くてできない。降り積もる雪の中に、ひとり捨てられていた時の寒さと寂しさがフラッシュバックする。


 一気に全身が冷えきり震えている間にも、どんどんイヅルの背は遠ざかり薄暗闇に飲まれ見えなくなっていく。いやだいやだ、ひとりにしないで。寂しいのは嫌いなんだよ……



「イヅル……っ!」



 ぱっと照明を消したように暗くなり、何も見えなくなった。この恐怖に耐え切れず、銀はイヅルの名を叫びながら、彼に向って全力で駆けだした。



 

            ※




 必死にこちらを呼ぶ銀の声と同時に、もういつ聞いたかも分からないほど久々に聞いた、きゃんきゃん吠える犬の声が聞こえた。振り返ってもそこに銀の姿はなく、置いてきてしまったかとあたりを見回そうとしたところで、太腿あたりに強い衝撃を受ける。


 あまりの勢いに転倒し、体勢を立て直そうとすると、目の前に真っ白くもさもさした毛玉が迫ってきた。反射的に押し返したが毛玉はそれを許さず、どんどんこちらによじ登ってくる。


 反撃しようとしたところでべろべろと顔を舐められ、イヅルはようやく、それが本来の姿をした犬だと気付いた。甲高く鼻を鳴らして擦り寄り、少しも離れようとしない大型犬の目は赤い。


 白い毛並みに赤い瞳。まさかこいつは……銀なのか?


あの自分と同じくらいの背丈をした青年の姿は見当たらないし、人から伝え聞いた銀本来の容姿と適合している。そうか、こいつはこんな姿をしていたのか。絶えず頬摺りして甘えてくる銀を、目一杯撫でまわした。


 しかしなぜ、今になって区別がつくようになったのだろう。そしてなぜ、自分には動物が人間と同じように見えていたのだろう。それはいくら考えても分からないが、仮説は少し前に立っている。俺は寂しかったのだ、多分。


 あまり自分の感情について考えたことはなかったけれど、幼少期に山奥で一人は寂しかったのだろう。周りにいるのは当然動物ばかりだから、それを人に見立てて気を紛らわせていた記憶は微かにある。始まりはそこで、長い間そう思い込んでいたせいで人間に見えるようになったのだと思っている。飽くまでも仮説だけれど。


 今までは自分自身、感情が希薄でブレることもない人間だと思ってきたけれど、本当は大きくブレていたくせに気付かなかっただけらしい。戦乱の最中、そのことで周りに多大な迷惑をかけていたのかと思うと非常に申し訳ないが――それでも暖かく見守ってくれる人たちに出会えた自分は、途轍もない果報者だ。これまでに出会い触れ合った全ての人の恩恵に感謝しながら、この暖かく心地良い気持ちを逃さないようにと銀を抱きしめた。



「お前と話せなくなるのは寂しいなぁ……」



 最近会話が成立しないことが多かったことを思い出し、聊か寂しい気持ちになった。しかし、だからと言って銀がいなくなるわけではない。今までと同じように共存するまでだと決め込んだところで、またもべろりと顔を舐められた。


 何事かと思い先程からもぞもぞ動く銀を見やれば、耳を伏せて笑っているかのように口を開けていた。「構え」とでも言いたげなその間抜け面が何だか可笑しくて、イヅルは初めて声を上げて笑った。



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