第12話 緑埜航平「特警戦隊ボウエイジャー ヒーロー人気ランキング」
「どうだ? 昨日で、少しは、気分転換、できたか?」
青砥さんが苦しそうな声で訊いてきた。
トレーニングルームの鉄棒で、懸垂しながらや。
僕の右には青砥さんが、左には赤羽さんが、並んで懸垂してる。
かれこれ1時間ぐらいやってんのに、赤羽さんはなんで鼻歌うたえんねん。
きのこさんも一緒に始めたのに、開始20分くらいで落ちて、今もぜえぜえ言うてる。
たぶん、5人の中で一番腕力があるきのこさんも、あの重い体を支えるのは辛いんやろ。
胡桃沢は最初から参加せんと、アクロバット練習用マットに寝転がって、スマホをいじってる。
どうでもええけど、今日はパンダの着ぐるみや。
「お前ら、昨日どこか行ったのか?」
赤羽さんが鼻歌を中止して、興味を向けて来た。
「ああ、緑埜と2人で、飲みに」
「なんだよ。おれも誘えよな!」
誘ったけどな?
本気か? ボケか? わからへんから、僕も青砥さんもスルーした。
「じゃあ昨日は? いつもの女々しいチェックはしてねえのかよ」
「帰ってからしました」
赤羽さんが言うてる「女々しいチェック」っていうのは、『特警戦隊ボウエイジャー人気ランキング』のサイトのチェックのことや。
妖魔獣との戦闘があった日には、ランキングが動きやすい。
テレビであんな扱いされたから、見る意味ないとは思たけど、気になって見てしもた。
僕は、なんとか右手だけの片手懸垂で耐えながら、左手でスマホ画面を赤羽さんに見せた。
『特警戦隊ボウエイジャー ヒーロー人気ランキング(週間)』
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位 プテラプロス(妖魔獣) 18,743票
9位 緑の
10位 ヒポポン(妖魔獣) 9,821票
『ヒーロー人気ランキング』やのに、なんで僕の上に3人も【
だいたい、3位の「
過去のヒーローやんけ!
胡桃沢なんか、ボウエイジャーになってまだ半年ぐらいやのに、あっさり抜いて行きやがるし。
けど、
まあ、それと
スマホ画面を見た赤羽さんは、なんでかわからんけど舌打ちをした。
けど、すぐに笑顔になって、
「お! ベスト10入りしてんじゃねえか! すげえな!」
バカにしたように言うた。
「青砥さん! 頑張って赤羽さん抜いてくださいね!」
「何を、どう頑張れば……、票が、入るのか……、わかん、ない……」
青砥さんはそう言うた後、「もうダメだ!」って言うて、鉄棒から降りた。
「ひ弱くん! そんなんじゃ、おれを抜けねえぞ!」
「あ、そうだ! 青砥!」
「なんですか」
「
「ですね」
「しかも、高そうなスーツまで着て来たんだぜ」
赤羽さんは、なんか興奮しながら話して、青砥さんは肩で息をしながら相槌を打ってる。
「それが、どうかしたんですか?」
「わかんねえのかよ!」
「はい」
「そんなんじゃ、おれを抜けねえぞ! 女だよ! おんな!」
「「はい?」」
僕と青砥さんが、おんなじリアクションをした。
「女ができたんだよ! でないとこんな貧弱な髪型と、ダセえオシャレしねえよ!」
貧弱な髪型とダサいオシャレの意味がわからへん。
「え? 緑埜くん、思い人ができたの!?」
きのこさん、言い回しが古い!
「そんな人、いてませんよ!」
青砥さんが意味ありげな目でこっちを見て、片側の口角を上げた。
恋人なんかおらへん。まだ、おらへん。
ただ、今日の行動
そのために、赤羽さんが言うところの「ダセえオシャレ」をしてきたんや!
「今度、紹介しろよ!」
赤羽さんがそう言いながら、思いっきり背中を叩くから、流石に鉄棒から落ちた。
「ええぇっっ!」
マットに横になってた胡桃沢が、驚きの声を発した。
僕の恋人騒動を聞いて、それに反応したんかと思たら……、スマホ画面をこっちに向けて言うた。
「ミドくん! ベスト10入りしてんじゃん! ウケる!」
流行に鈍感なヤツや……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます