第1話②

七番隊の一行はビーストの討伐を終え、旧千葉県にあるレヴェルズの本部へと帰還した。


「おかえり、キョウヤ!随分無茶したみたいだね。」


5人を出迎えたのは白衣を着た小柄な女性…と呼べるか怪しい見た目女の子、神代メグだ。


「おう、ただいま。こいつらが来なかったら不味かったかもな。」


彼の後ろの新人3人を親指で指差し、それに3人は照れくさそうに頬を赤らめる。


「キョウヤ、後で七番にお邪魔するよ。ちょっと伝えたい事があってね。それまでにレクチャーをお願い。」


「…?分かった。」


神代と別れ七番隊は三笠に先導され、賑わうエントランスを抜けてエレベーターで2つ昇り、廊下を抜けて1つの部屋に案内された。


「ここは俺たちの執務室だ。デスクワークもまぁ多少だがあるんでな。まぁしょっちゅう使うことになるだろ。」


デスクワークと聞いて萎れる五十嵐をよそにそれぞれの机に案内された。

部屋そのものは大きくはなく、窓もひとつでコンクリートの打ちっぱなしの壁に囲まれているせいかやや窮屈な印象を受ける。窓に背を向ける形で三笠の机があり、他の6つの机は壁を背にそれぞれ向かい合わせている。

机の書類をどかして三笠は椅子に座り、それに続いて他の4人も席に着く。


「さて、全員揃って落ち着いたところで新入社員の諸君には俺たち『レヴェルズ』レクチャーをしよう。」

「創設は25年前。初めはただの民間警備会社だった。民間つってもお偉いさんのな。今でも第1部隊はそうだが。その超世界が現れて、一気にビーストの研究へと方針転換する事になった。それで出来たのが第2部隊、研究班だな。」


はっと自分の腰に下げられている結晶化されたリベレーターを見て、茜はどこでこの相棒が作られたのかを思い出す。


「俺たちの武器も第2が作ってるんですよね?確かビーストの一種の『butterfly』から…でしたっけ。」


ビーストにも種類があり、1番弱く小さな個体を『Larva』、硬さと大きさ、機動力の代わりに棘を伸ばした攻撃が特徴の『chrysalis』、そして高い機動力と羽根のように広がった棘での攻撃、更には光線を出す個体もいる最上位個体『butterfly』の3種類がいる。


「正しくはそのコアとなっている黒磁鉱からだな。だから俺たちの第3から第7までの総称を『胡蝶隊』なんて呼ばれ方をする。」


さらに言えば胡蝶隊の持つリベレーターにもそれぞれ蝶の名前がついている。

三笠なら「アゲハ」、桐原は「コリアスイレイト」、茜は「パルナシウス」、凪が「オオルリ」で五十嵐が「トリバネ」。それぞれ名前の由来になっている蝶の模様が刀身や銃身、刃先に付いている。


ふと、五十嵐が自分の手を見つめて三笠におずおずと疑問を投げた。


「あの、私ずっと思ってたんですけど、この部隊ができるまでにはもう既に5つ戦闘用の部隊があったんですよね?」

「そうだな。」


第1と第3から第6まで、部隊の数としては十分な程にある。それなのにどうしてこの部隊が新しく作られたのか、それが疑問だった。しかも他の部隊は何十人、果てには百を超える人数を抱える部隊もある。


「ではなぜこの部隊が?しかも調べてもほとんど情報は出てこないし、誰かに聞いても皆よく知らない、って言うんです。」

「それは…今日がこの第7番隊の結成日だからな。」


そう告げられ、3人は驚きを隠せない。


「ではなぜ僕達が選ばれたんでしょうか、普通ならほかの部隊から引き抜きますよね?」


1つ消えた疑問から新たに生まれた疑問を今度は凪が問う。


「実験の為だ。第2の、さっきも会っただろう、神代が上に言って作らせた。その代わり俺たちは第2の技術面でのサポートが他と比べて厚い。お前らのそのリベレーターも新型だそうだ。」

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