OverWorld

白鳥飴

第1話

 日本にゲートが現れて20年。

 そこをくぐると、この世界ではない世界、「超世界」があった。

 超世界の生命体、「ビースト」はこの世界に侵攻を始めた。

 門をくぐり抜けこちら側まで来る個体はかなり少ないが、侵攻当初はこちらにはビーストに対抗できる武器がなかった。

 しかしそれは過去の話。

 苦戦の末何とか1匹倒し、その体を構成する「黒磁鉱」と呼ばれる新たな物質を採取し、それを武器へと変えた。

 その武器は同じ黒磁鉱で出来たビーストには非常に有効だった。

 更に多くのビーストを狩り、より強い武器を目指して開発されたものが、対ビースト専用兵器「リベレーター」。

 そしてそれを操るものは「黒騎こっき」と呼ばれ、英雄と崇められた。


 これは、黒騎を束ねる組織、「レヴェルズ」の最前線で戦う者達の物語。



「レン!後どれくらいだ!?」


 槍を振るう黒髪の男は、後ろに立つ斧を担いだオレンジ色の髪の男に叫ぶ。


「うーん、あと9…いや、100ぐらいかな?キョウヤ、大丈夫?」


 小型のビーストの群れと対峙する2人は、背中合わせで蹴散らしていく。

 2人は殆ど一方的に敵を倒すが、その数が多すぎる。徐々に疲労が見え始め、それぞれの武器の精度は落ち、足取りも重くなる。

 着実に数は減っているが、それでもまだまだ途方もない。飛びかかってくるビーストを倒すことだけで精一杯な状況だ。


 その時だった。

 一縷の光がビーストの群れの中に飛び込んだ。

 その光は二つに分かれ、群れを崩しながら二人のもとへたどり着いた。


「隊長、遅れました。あかねユウマ、」

「そしてなぎトウヤ、到着しました。」


 赤毛混じりの黒髪の少年、茜ユウマと暗い青色の髪の背の高い少年、凪トウヤはニッコリとそれぞれのリベレーターを担いで2人に笑いかけた。


「お前ら…まぁいい、敵はまだまだ残ってる。さっさと片付けるぞ!」


 そう2人に檄を飛ばして4人それぞれ違う向きでそれぞれ背中を預けて敵に向き直る。


 それから数分で4人は見える範囲全てのビーストを討伐し、ホッと一息つく。


「ありがとな、助かったよ。」


 斧を地面に突き刺して、その柄に顎を乗せてキョウヤよりも少し背の高いオレンジ髪の男は2人に声をかける。


「改めまして、俺は桐原きりはらレン。この七番隊の副隊長だ。そんでこの隣の奴は…」


三笠みかさキョウヤだ。隊長をやってる。そういやもう1人いなかったけか…?」


 三笠はややダルそうに少しうねった黒髪を掻きながら2人に問う。

 そう言い終わるが早いか、三笠の髪の先をかすめて白い光を放つ何かが飛んでいった。

 飛んで行った先を見ると、恐らく他のビーストの死骸に紛れて不意打ちでもしようとしたビーストの胴体には穴が空いていた。

それを確認し、各々のリベレーターは握りこぶしほどの小さな結晶に姿を変える。


『通信越しで失礼します。五十嵐アミ、到着しました。危ないところでしたね。』


 丁寧な口調で透き通る様な女性の声が通信機に響いた。それから数分経って、1人が靴の音を軽快に鳴らしながら走ってきた。


「これで全員揃ったな。」


 金髪で背の低い少女はそのシルエットに似合わない、自分の背丈ほどもある大きな銃を地面に突き立てると、他と同じようにリベレーターを結晶化させ、息を切らしてパッと明るい笑顔で自己紹介をした。


「初めまして!五十嵐アミです。銃型リベレーター、レールガンを使ってます。狙撃の腕には自信があるので、よろしくお願いしますね!」


「もっかいやり直しか。俺は三笠キョウヤ。七番隊隊長で、リベレーターは槍型だ。さっきの狙撃、見事だった。」


 面倒臭そうに膝に手をついて立ち上がり、一通り自己紹介を済ませた後、五十嵐の方を見てニコリと微笑みかけた。

 そしてそれに続いて他の者もそれぞれ改めて名乗っていく。


「俺は桐原レン。副隊長で、斧型リベレーターを使ってる。分からないことがあったらなんでも聞いてね〜。」


「俺の名前は茜ユウマ。リベレーターはガンブレード型です。今日からよろしくお願いします。」


「僕は凪トウヤ。刀型リベレーターを使ってます。えーと、よろしくお願いします。」

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