第15話 幸運

あなたの話を聞きたいのに

わたしのこころの一部が邪魔をする

あなたの話に優しい言葉をかけたいのに

わたしのこころの一部がそれを許さない


身近な存在ほど 

優しくなれないのはなぜ

大切な人ほど

蔑ろにしてしまうのはどうして


愚かなわたしがいる


いつの間に 複雑な回路を 

組み立ててしまったのか


幼い頃の自己防衛本能が

過剰反応を起こしているのだろうか

喪失による逃避行動が

大切な人を寂しくさせているのだろうか

分かって欲しいという甘えが

あなたを悲しませているのだろうか


あなたの話を聞きたい

わたしに向けてくれる こころのこえ

あなたはわたしを傷つけたいわけではないのに

わたしの回路が 自傷行為に変換している


急激に溢れる 言葉にできない感情

いつものように 

濁流に流されそうになりながら

今日は 深呼吸をして

わたしのこころの声に耳を傾ける


知っている

悲しいことに 知っている

大切な人は

いつか 去ってしまう 

いつか 失なわれてしまう


だから

向かい合えるこのときに

ありがとうと 感謝を伝えて

寂しくしているあなたを 笑わせて

あなたの話を聞いて

あなたのこころを受けとめたい


わたしは そうありたい

幸せを 分かち合いたい


それに 気づくことができた 幸運

今日という日に 感謝を込めて

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る