第16話 涙

夜空を見上げると 星一つなく

灰色の雲で薄く覆われた 黒い空を眺め

何とはなしに 寂しい気持ち


満天星(ドウダンツツジ)を好んだ

亡き父を思い出し 

ほろり ほろり


庭に植えられた満天星

翌年の猛暑で 枯らしてしまった


何もしてあげられなかったなあ

ほろり ほろり


また 泣き虫に なってしまう


笑うのが好きだった父

ふたりで 意味のないおしゃべりをして

母に呆れられながら 笑っていたね


ようやく 3年経って

病院以外の父を 思い出せました


亡くなる前の その前の日

なぜか宇宙の話をしたね

毒にも薬にもならない話が

とても楽しかったね


面会時間もとうに過ぎ

家の母を心配して帰るとき

お父さん、寂しそうな顔をしてたね


ほろり ほろり


いつも不甲斐ない娘で ごめんなさい

人の気持ちが分からない娘で ごめんなさい


お父さんのこと 大好きでした

そして 今も変わらず 大好きです

そちらでは 兄と仲良くしていますか


見ておられると思いますが

こちらも 母とは仲良くしています


母はとてもがんばっています

ようやく今日 お父さんを思い出し

わたしもがんばれるような気がします


たくさん泣いて 落ち着きました

涙のあとには 笑い顔で


お父さんの娘で 良かったと思っています

今まで ありがとうございました


たくさんの感謝を込めて






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る